恋姫伝説 MARK OF THE FLOWERS
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第九十五話 陸遜、ふと見つけるのことその十
「夏も殷も同じでしたよね」
「経緯は違えど女によって惑わされ」
「はい、滅んでいます」
これが中国の歴史だった。
「そうなっていますよね」
「周もまたですね」
「ですよね。三つの王朝が女によって滅んでいます」
「奇妙な一致です」
「それでふと気付いたのですけれど」
ここで陸遜はまた言った。
「その周を滅ぼした笑わない王妃ですけれど」
「何かあったのですか?」
「その容姿について書かれていました」
そのだ。陸遜が借りた書にだ。書かれていたというのだ。
その容姿について呂蒙と話す。さらにだった。
呂蒙にもう二冊の書を出す。それは。
「これは夏の書と殷の書です」
「それぞれですね」
「はい、それぞれの国を滅ぼした女のことが書かれている書です」
「その書を持っておられたのですか」
「そうなんです。それで」
「それで?」
「書かれていることですけれど」
それはだ。どうかというのだ。
「その容姿なんですけれど」
「それが一体」
「同じなんです」
「同じ!?」
「はい、同じです」
そうだというのだ。その三人の女の容姿、書に書かれているものがだ。全て同じだというのだ。考えてみれば奇妙なことにだ。
「全部同じなんです」
「おかしな話ですね、それは」
「そう思われますよね」
「普通そんなことはありません」
呂蒙もこのことを言うのだった。
「有り得ないことですよね」
「そしてその容姿が」
その三人の女の容姿がだ。どうかというと。
「司馬尉さんと同じなんですけれど」
「司馬尉さんと!?」
「はい、同じです」
そうだというのだ。
「そしてさらに言うと」
「さらに?」
「殷代にはあの王后の妹が二人出ていますが」
「ああ、あの」
「そうです。あの二人です」
呂蒙の言葉に応える。二人が共に知っている名前だった。
「あの二人の容姿も」
「それもまたですか」
「司馬師さん、司馬昭さんの容姿と同じなんです」
「まさか。それでは」
「あっ、同一人物ではないと思います」
それはないとだ。陸遜は予想して述べた。
「流石にそうしたことはです」
「仙人でもない限りはですね」
「あの方々には仙骨やそういった特徴は見られませんから」
「それはないですか」
「ですが。おかしな話ですよね」
「はい、本当に」
呂蒙もだ。驚きを隠せない顔で返す。
「こんなことがあるんですか」
「本当に奇妙なことにです」
「しかし。不吉ですね」
呂蒙はあらためてこう言った。
「国を滅ぼした女と。司馬尉さんの容姿が同じとは」
「あの女達は狐だったとも言われていますね」
「九尾のあのですね」
「そうです。あの魔物です」
中国では九尾の狐は最悪の魔物の一つと呼ばれているのだ。その存在のことを脳裏に浮かべてだ。二人はさらに話すのだった。
「あの狐ですが」
「その魔物が化けた姿と同じ」
「ううん、何か余計にですね」
「はい、不吉なものを感じますね」
「全くですよね」
二人は書からこのことを知ったのだった。しかしこの時はそれまでだった。そしてこのことを孔明達に話してだ。今はそれで終わりだった。
第九十五話 完
2011・7・14
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