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戦国異伝供書

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第百二十一話 耳川の戦いその十

「だからな」
「それをご当主自身が乱されては」
「本末転倒ですな」
「実に」
「我等に攻めてくるかも知れぬにしても」
「そうしてはな」
 実にというのだ。
「よくはない」
「左様ですな」
「では当家としてはですな」
「その様なことはしませぬな」
「今言った通りにな、織田殿もな」
 信長、彼もというのだ。
「耶蘇教は認めておられるが」
「神社仏閣は壊させず」
「他の教えと親しくせよ」
「そう言われているのですな」
「その様じゃ、しかしそうしたことが続けば」
 耶蘇教が他の教えを認めないならというのだ。
「やがてな」
「禁じられる」
「本朝から追い出される」
「そうなりますな」
「そうなるやもな、そして他におかしなことがあれば」
 耶蘇教のそうした日本では受け入れられないものが見付かればというのだ。
「よりな」
「そうなりますな」
「禁じられる」
「それもありますか」
「あまりにもだとな」
 そうなると、というのだ。
「やはりな」
「禁じられますか」
「国の為に」
「そして民の為に」
「そうじゃ」
 まさにというのだ。
「そうするぞ」
「わかりました」
「ではその時はですな」
「殿も動かれますか」
「領内の耶蘇教の動きが酷くなると」
「わしもな、それは最後の手にしても」
 それでもというのだ。
「わしは動く、しかしザビエル殿はそれ程な」
「悪い方ではなかったですな」
「どうも」
「確かに意固地でしたが」
「それでも」
「本朝を認めていてな」
 そしてというのだ。
「民達のこともな」
「褒めていましたな」
「素晴らしいと」
「その様に」
「そして今上方におられるというフロイス殿もな」
 彼もというのだ。
「悪い御仁ではないというが」
「耶蘇教の僧も様々」
「悪い者もいる」
「そういうことですか」
「その様であるな」
 義久は家臣達に述べた。
「大友殿のところの耶蘇教の者は」
「随分とですな」
「偏狭な御仁で」
「それで、ですな」
「神社仏閣を壊させていますな」
「そうじゃな、何があってもその様なことは当家の領地ではさせぬ」
 島津家のそこではというのだ。
「わしはな」
「左様ですな」
「そうしてですな」
「そのうえで、ですな」
「どうしてもというのなら禁じる、しかしそう考えているのはわしだけではない」
 義久はこうも言った。
「おそらく織田殿もな」
「天下人になられたあの方も」
「そうお考えですか」
「殿の様に」
「耶蘇教の動きがあまりにもならば」
「そうお考えであろう、教えは国にも民にも必要でも」
 それでもというのだ。
「国を乱すならばな」
「なりませぬな」
「その動きを許せぬ」
「織田殿はそうお考えですか」
「その様に」
「そうじゃ、だからな」
 眉を顰めさせてだ、義久は言った。
 
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