オズの木挽きの馬
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第九幕その四
「誰もね」
「そうなのね」
「けれど随分奇麗だったし」
「今も奇麗ね」
「普段は誰かいるのかな」
こう恵梨香に言いました。
「やっぱり」
「お手入れしていないと奇麗にならないし」
「そう考えるとね」
「あの茶室もね」
「誰かがいるのかな」
「そうじゃないかしら」
「誰か出て来たわ」
グリンダは茶室を観て皆に言いました。
「お坊さんね」
「あのお坊さんは」
恵梨香はそのお坊さんを観ました、日本の僧兵さんの服を着ていて随分と身体の大きなお坊さんでした。
そのお坊さんを観てです、恵梨香は皆に言いました。
「三好清海入道さんかしら」
「あの十勇士の一人の」
「佐助さんや小助さんと同じく」
「その人なんだ」
「あの人が」
「ええ、お坊さんであれだけ大きいとなると」
そうした人はというのです。
「その人しか思わないわ」
「そう言われるとそうだね」
「弁慶さんも僧兵だけれどあの人は頭巾被ってるし」
「あの人は頭巾被ってないし」
「弁慶さんの薙刀も持っていないし」
「その代わりに金棒持ってるから」
物凄く大きな鬼が持つみたいな鉄の金棒を持っています。
「多分ね」
「ははは、如何にも」
そのお坊さんも大きな声で笑って言ってきました。
「わしは三好清海入道だ」
「やっぱりそうですか」
「今はここで修業しておってな」
それでというのです。
「おる訳だ」
「そうなんですね」
「うむ、今はわしと佐助と小助が修行に出ていて」
清海さんは恵梨香に応えてお話しました。
「残る七人は殿と共に屋敷におられる」
「大助さんもですね」
「大助様は旅に出ておられる」
「そうなんですか」
「見分を広められる為にな」
「オズの国中をですか」
「そうされておられる」
こう恵梨香達にお話するのでした。
「あの方も立派な方であられてな」
「清海さん達にとっては若殿ですね」
「左様、そうお呼びすることもある」
若殿と、いうのです。
「我等はな」
「そうですか」
「いや、修行はいいものじゃ」
清海さんは明るい笑顔でこうも言いました。
「実にな」
「お好きなんですね、修行が」
「修行すればするだけ強くなるからな」
「だからですね」
「身体だけでなく心もな」
その両方がというのです。
「好きでじゃ」
「それで、ですね」
「殿のお傍におる時もな」
「修行をされていますか」
「うむ」
そうだというのです。
「わし等はな」
「ううん、何かね」
木挽きの馬は清海さんのお言葉を聞いて恵梨香に言いました。
「皆明るくて気さくで器が大きくて」
「いい人達よね」
「優しくてね」
「だってこの人達はヒーローだから」
「日本の」
「だからね」
そうした人達だからだというのです。
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