練習用小説供養処
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夢の国の少年
こんな夢を見た、とパソコンに打ち込む夢を見た。
夢の中の僕は、どうやら小説を書いているらしい。
その出だしは某文豪のパクリのように思えたけれど、とうに著作権は失効しているはずなのでまあ良いのかもしれない。
とにかく、今日の僕は夢を見たという内容の小説を書く夢を見たのだ。
夢の中の僕はカタカタとパソコンのキーボードをタイプする。
少年は白うさぎを追いかけて穴の中へ飛び込んだ。
長い長い間穴の中を落ちていくと、いつしか一番下にたどり着いたらしい。
たくさんの扉が並ぶ空間だ。
一番小さな扉の向こうにうさぎが消えていくのが見えた。
待て待て待て。それは少年を主人公にしても良いのか?
著作権が失効しているのは出だしの小説とも同じだが、さすがにそのまんますぎやしないだろうか。
夢を見ながら今の僕は思う。
少年は扉に向けて怒鳴った。
「待って、うさぎさん! 僕に小説の上達法を教えてよ!」
うさぎはこちらを振り向いて怒鳴り返した。
「君は駄目だ! 甘えたがりの君なんか、私のスパルタ指導についてこられやしないよ!」
「ついていけるさ! 優しくしてくれれば!」
「それが駄目だと言っているんだ!!」
少年はべそをかきながら扉から離れる。
「うさぎさんの馬鹿ぁ……ん?」
少年は扉の近くにある箱を見つけた。
"やわらかい小説上達法"と箱についたタグに書かれている。
蓋を開けるとそこには、"EAT ME"と彫りこまれたキノコが入っていた。
少年がそれを食べたかどうかは定かではない。
だってそこで私は目を覚ましてしまったのだから。
……駄目だこりゃ。
こんなにつまらない夢しか見られないのなら、今回も僕の小説は一次選考で落選するだろう。
何せ僕は小説の上達法を夢の中のうさぎに聞くくらいしか、できることがないのだから。
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