おっちょこちょいのかよちゃん
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114 独りぼっちの女の子
前書き
《前回》
かよ子は藤木の失踪の因果を考える。笹山はある手紙を受け取る。そして二人の警察官に異世界からの道具をフローレンスおよびイマヌエルから授かり、今後の戦力として期待されていた・・・。
杉山の家にも藤木が行方不明という電話が来ていた。
(藤木の奴が行方不明だなんて・・・)
杉山は急に家を出た。そして向かうはあのおっちょこちょいの女子の家だった。
「こんにちは」
「あら、杉山君、かよ子に用?」
「はい」
「今、呼ぶわね」
かよ子の母は娘を呼んだ。
「す、杉山君・・・!!どうしたの!?」
「お前の家にも藤木がいなくなったって電話が来たのか気になってな。俺にも来たんだよ」
「うん、でも赤軍や異世界の敵なのか、単なる家出かまだわからないよ」
「ああ、でも、もし敵達だったら、かなりやべえ事になるかもって思うんだ」
「うん、私も杖は渡さない、渡せないよ!」
「ああ、俺も石松から貰ったこの石でぶっ倒してやるよ」
「うん!」
「じゃあな、いい年をな・・・」
「うん、よいお年を・・・」
杉山は帰って行った。
神奈川県横浜市。そこに一人の女の子がいた。女の子は鳥橋のり子という。のり子は独りぼっちだった。弟が生まれても、その弟を邪魔のように思っていた。邪険に扱えば自分が親に怒られる。学校にも居場所がない。友達ができてもその子は他の友達と遊んでしまう。のり子はその友達の輪に入ろうとはせず、誘われても断った。そしてその友達を恨んで急に吹き飛ばして怪我をさせた事があった。その為どこでも孤立を続けていた。
(あのももこちゃんとは、もう会えないのかな・・・)
のり子は幼稚園児の頃、母の出産の関係で静岡県の清水市にあった小鳥屋を営む祖母の家に預けられた事がある。そしてその小鳥屋に遊びに来ていたももこという女の子と友達になれた。にもかかわらず父親によってまた横浜に戻された。あれ以来、祖母は暫くして小鳥屋を廃業して横浜に来た為、あれ以来一度も清水には行っていない。
(私は一人なんだ・・・。もう、友達なんて要らない・・・)
のり子はいつしか孤独を望んでいた。そして清水のももこから貰った人形だけが話し相手だった。
(私が信じられるのはこの子だけ・・・)
のり子はその人形に清水で友達になった女の子の名前を付けた。
そんなある時、弟が自分の人形を勝手に見ている様を見て怒った。
「私のももこに何してるの!」
のり子は弟に詰め寄った。そして平手打ちで弟を壁に頭をぶつけさせて泣かした。
「のり子、やりすぎよ!暴力ふるうなんて!」
のり子は母に叱られた。
「私、何も悪くないもん!私のももこにいたずらしようとしてたのが悪いんだもん!」
「手を出したのはのり子でしょ!謝りなさい!」
「嫌だ!のり子は悪くないもん!!」
のり子はその場から逃げ出した。
(ママも、パパも、あんな弟も、皆、嫌い・・・!!)
のり子はそう思い、泣いた。
小学三年生になったある時、下校中に地震のような衝撃が起きた。あのももこは無事なのか。家に着いた。ももこと名付けられた人形は無事だった。
(よかった・・・)
数日後、のり子の前に一人の男が現れた。外国人のような男性。
「アナタ、異能ノ能力ヲ持ッテイマスネ?」
「は、だ、誰!?」
「失礼シマシタ。私ハ、マシュー、ト申シマス。コノ前ノ、地震ノユレノヨウナ現象、覚エテイマスネ?」
「う、うん・・・」
「ソノセイデ今、コノ世界ノ日常ガ壊レヨウトシテイルノダ。ソレヲ食イ止メル為ニ君ニモ協力シテ頂キタイ」
「でも、私に何ができるの?」
「コノ人形ヲアゲマショウ。貴方ノ身ニ何カ危険ナ目ガアッタラソノ人形ハ助ケテクレマス。タダシ、コレハ絶対ニ無闇ニ使ッテハイケマセンヨ。異世界ノ敵ガ攻メテ来タ時ニ使ウノデス」
マシューがのり子に差し出した。その人形は金髪で目が青く、青いワンピースに白いエプロンドレスを着ていた。
「う、うん・・・」
のり子にはその人形は怪しく見えた。
「私、キャロライン、宜しくね」
人形が喋り出した。
「きゃあ!」
「ソノ人形ハ君ノ話シ相手ニナッテクレマスヨ。私ハ暫ク上ノ命令デコノ横浜ニ暫クタイザイシテイマス。何カアッタラ私モ助ケニイキマス。デハ」
マシューは去った。
「のり子ちゃん、今、この日本は危ない目に遭ってるの。一緒に戦ってくれる?」
「う、うん」
のり子は喋る人形に気味悪がった。でも、家に持ち帰った。
「私を呪ったりしない?」
「私、呪いの人形じゃないわよ。この国の各地でもマシューが今いる世界の人間達がここに来て色んな人達にこの国を守り、戦う為の道具を渡しているの。私もその道具の一つなのよ」
キャロラインは説明した。人形とは思えない表情豊かだ。
「うん・・・」
こうしてのり子はキャロラインとの生活が始まった。のり子はキャロラインにももこという人形を紹介した。昔、清水という所に住む女の子から貰ったという事ものり子はキャロラインに説明した。
「そうだ、のりちゃんがそのももこちゃんと仲良くなれるようにしてあげる」
キャロラインは指を人形に向けた。
「のりちゃん・・・」
「も、ももこが喋った!」
「これで賑やかになるわね」
「ありがとう、キャロライン・・・」
そしてのり子は二人に確認する。
「二人共、他の友達と遊んだりしない?」
「絶対に遊ばない!」
「ありがとう、私、二人が頼りだわ!」
のり子は孤独と感じる事はなかった。弟が入って来た。
「それ、新しい人形?」
「あんたには関係ないわ!」
「見せてよ」
その時、キャロラインが喋り出す。
「いいわよ」
「あ、キャロライン!」
のり子はキャロラインがいきなり約束を破るのかと思った。しかし・・・。
「これが私よ」
なんと弟はその場で気を失って寝てしまった。
「大丈夫よ。暫く起きないわ。三人で楽しみましょ」
「うん、ありがとう」
のり子はキャロラインが邪魔の排除をしてくれた事に感謝した。
数日後、ある時、近所で爆音が聞こえた。
「キャー!」
「ワー!」
のり子には何だか分からなかった。
「な、何?」
「のりちゃん、敵が来たわよ!私を連れて外を出て!」
「う、うん!」
のり子は家を出た。街の中を走る。そこに一人の外国人のような男性が無限にナイフを飛ばしている。多くの通行人が無差別に刺されていく。
「鳥橋のり子」
マシューが現れた。
「マシューさん、あれは何?」
「アレハ、ムハメド、トイウ男ダ。私ガイル世界ト敵対スル者。私ガ授ケタキャロライントイウ人形ヤ私ト共に戦ッテクレルカイ?」
「のりちゃん、私も力になる!だから、あの敵を倒そう!」
「キャロライン・・・。うん・・・!」
のり子は腹を決めた。その時、キャロラインが巨大化した。
「えい!」
キャロラインの手から光線が放たれる。光線はナイフを破壊し、男の腕に命中させた。
「うおおお!!誰だ!?」
男は方向を向いた。
「貴様コソ、ナニヲシテイル!?」
「黙れ、俺はこの国が腐っていると聞いてこの地に戦の素晴らしさを教えているのだ!」
「何て、めちゃくちゃな事を言ってるの!」
「めちゃくちゃじゃねえさ!お前、平和の世界の人間だな?」
マシューは気付かれた。
「ダカラ、何ダトイウ?」
「てめも、纏めて消してやる!このヨコハマとかいう人間ども、このムハメド様から戦の素晴らしさを教わりな!!」
「やめて!」
のり子も怒った。
「ええい!」
キャロラインが手をムハメドに向けた。念力を掛けたのか、ムハメドが動かなくなった。
「この、こざかしい真似を!」
ムハメドは体が動かない状態でナイフをキャロラインの方へ向けた。
「キャロライン!」
その時、キャロラインは元の人形の大きさに戻って、ナイフを回避した。
「のりちゃん、私と合体して!」
「合体!?できるの?」
「うん!」
キャロラインはのり子に飛び込んだ。そしてのり子は自分の体の中にキャロラインが入っていた。
「のりちゃん、これで列車のように速く走ったり、相手に光線を放ったりできるよ!それから、のりちゃんは、攻撃を行う能力を持ってるから私と合体するともっと強くなれるの!」
「そ、そうなの!?」
「二人共、説明シテイル暇ハナイ、アイツヲ倒スノダ!」
「俺は体が動かなくてもナイフは飛ばせるんだぜ!」
ナイフが来る。
「のりちゃん!」
「うん!」
のり子は走り出す。列車のような速さだった。それでナイフを避ける。
「私モ戦ウヨ!」
マシューは手から砲弾を発射した。ムハメドに当たる。
「コレデ奴ハ能力ヲ使エナイ!今ダ!」
「うん!」
のり子は自分の手から光線が出た。合体の影響でキャロラインの能力がのり子にも使える為である。光線はムハメドに命中、先程よりも更に強い威力で。
「あ、あああ!!てめえ、よくも・・・!!」
ムハメドは光となって消滅した。同時にキャロラインがのり子の体外へ出た。
「鳥橋のり子、君トソノ、キャロラインノこんびねーしょん、最高ダ。私ハ君ヲ選ンデヨカッタ」
「でも、どうして私を選んだの?」
「ソレハ、君ニハ攻撃ニ特化した武装ノ能力ヲ持ッテイルカラダヨ」
「ブソーのチカラ?」
「つまり、何もしなくても攻撃を与えるという事よ」
キャロラインが説明した。それでのり子は振り返る。弟に暴力を振ったら予想以上のダメージを与えたり、他の友達と遊ぶようになった友達を何もせずに吹き飛ばしたりしたのはその武装の能力が原因だと。
「うん・・・。私、キャロラインと頑張る」
「ソウダネ、コレカラコノ横浜ヲ守ッテイコウ。ソレデハ」
マシューは立ち去った。のり子は人形・キャロラインと共にこれからの戦いに身を投じて行く。
後書き
次回は・・・
「千葉に来たハーフ少女」
千葉県に住む一人の女子高生がいた。その女子はイギリス出身で小学生の頃に来日した女子。その女子も四月の時に地震のような現象の際、異世界の敵と遭遇していた・・・。
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