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戦国異伝供書

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第百十九話 悪人達の絵その八

「そしてです」
「そのうえでか」
「はい、伊東家の大軍を襲い」
「勝つか」
「そうしましょうぞ」
「まともに戦って勝てぬのではな」
「はい、それならばです」
 そうであるならというのだ。
「策を用いてです」
「勝つのは道理じゃな」
「はい、では」
「これよりであるな」
「お話しましょう」
「頼むぞ」
 義久も言ってだった。
 歳久に話をさせた、その話を聞くと義久は確かな声で言った。
「よし、お主の策でいく」
「それでは」
「そしてじゃ」
 そのうえでというのだ。
「先陣はじゃ」
「それがしですな」
 義弘が言ってきた。
「左様ですな」
「出陣前に告げた通りにな」
「それでは」
「お主は三百の兵を率いてな」96
 そしてというのだ。
「そのうえでな」
「城を出てですな」
「戦ってもらう、そしてじゃ」
 義久は他の諸将にも話した。
「お主達もじゃ」
「それぞれですな」
「又六郎様の言われた通りにですな」
「それぞれですな」
「出陣してな」
 そしてというのだ。
「言われた場所に入るのじゃ」
「わかり申した」
「それではです」
「その様に」
「ではわしもな」
 義久もというのだ。
「出陣する、しかしな」
「しかし?」
「しかしといいますと」
「何かありますか」
「伊東家は加久藤城に攻めてきたが」 
 この城にというのだ。
「また随分と間が抜けておったな」
「あの城にはそれがしの奥がその時にはいましたが」
 義弘が言ってきた。
「ですが」
「無事だとじゃな」
「思っていました」
「それは何故じゃ」
「はい、奥ならばいざとなっても」
 危うくなってもというのだ。
「切り抜けると」
「わかっておったか」
「ですから」 
 その為にというのだ。
「落ち着いていました、ですが伊東家はです」
「あの城を攻めたがな」
「周りの家に火を点け城にも入りましたが」
「攻めきれずな」
「今は木崎原に集まっております」
「そうであるな」
「そのことを見ますと」
 どうかとだ、義弘は兄に話した。
「伊東家の軍勢はこの辺りの地に暗いです」
「だからしくじったな」
「ですがこの辺りは我等の領地」
「よく知っておるわ」
「しかもです」
 義弘はさらに言った。 
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