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真実を知った孫

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第一章

                真実を知った孫
 会社員をしている山村義人は自分が所属している保護犬や保護猫の新しい飼い主を探すボランティア団体の中で四匹の子犬達に乳を与えているゴールデンレッドリバーを見ながら一緒に活動をしている人達に話した。
「いつものことですが」
「酷いですよね」
「ええ、子犬を産んだから邪魔とか言って保健所に送るとか」
「それも子犬達ごとですからね」
「冷酷非情と言うか」
 山村はこれ以上はない嫌悪を込めて言った。
「人間の心がないですね」
「家族は皆流石に反対したそうですが」
「家のお祖母さんがですか」
「もう保健所に送れといつも喚き散らしたそうで」
「それで、ですか」
「家族も仕方なく。家のお孫さんには内緒にして」
 それでというのだ。
「保健所に送ったそうです」
「そのお祖母さんのせいですか」
「どうも凄い人で。実は知り合いにその人の親戚の人がいるのですが」
 山村にこう話した。
「そのお祖母さんが」
「どんな人ですか?」
「家事は碌にしないで遊んでばかりで」
 そしてというのだ。
「気に入らないことがあるとヒステリーを起こして喚き散らしてものを外に投げて」
「本当に凄い人ですね」
「しかも家のお金で遊んで、で偉そうにしていて執念深くて自分のしたいことばかりして」
 そのうえでというのだ。
「もうやりたい放題で自分以外の生きものは皆大嫌いで」
「だから母犬も子犬もですか」
「そうみたいですね」
「そこまで酷い人も珍しいですね」
 山村が見てもだった。
「それはまた」
「世の中信じられない人もいますが」
 それでもというのだ。
「ここまでの人はです」
「そうはいないですね」
「ええ、あと何でも強欲で図々しいそです」
「人間としての美点が全くないですね」
「それで家族でその人だけがです」
「犬を保健所にですか」
「不妊手術とか子犬の里親とか言わずに」
 そうしてというのだ。
「ヒステリー起こしたらしくて」
「そんな人こそいなくなって欲しいですね」
 山村は本音も出した。
「本当に」
「全くですね、罪のない犬や猫よりも」
「ええ、けれどこの子達も」
「里親見付けましょう」
「そうしましょう」
 こうした話をしてだった。
 山村は自分と同じ団体の人達と一緒にだった。
 母犬と子犬達の新しい飼い主を探した、そのうえで。
 何と母犬だけでなく子犬も全て引き取ってくれる人が見付かった、その人は山村が活動をしている市の隣の市の郊外で大きな田畑を持っている人で。
 犬達を引き取ってこう言った。
「不妊とか去勢はこっちでして」
「そしてですか」
「はい、皆面倒を見ます」
 上田さんといった、面長で長い鼻の下に濃い剃り跡がある小さな目の人だった。
「そうします」
「では宜しくお願いします」
「母犬はミリーといいましたね」
「はい、それで子供達はです」
 山村は彼等の話もした。
「白犬は雄でイチロー、背が茶で腹が白も雄でジロー」
「それで、ですか」
「茶色が雌でエミー、頭だけ茶色い子も雌でサリーといいます」
「わかりました」
 上田さんはメモを取って答えた。 
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