もう一つの"木ノ葉崩し"
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第二話―立ち込める暗雲
木ノ葉病院・第一集中治療室――
ベッドに横たわる柱間……体のあちこちに,術式が刻まれた包帯が巻かれている。その周りには,白衣を着た何人もの医療忍者の姿。柱間は依然,意識不明の状態が続いていた。
一人の医療忍者が治療室の中に入ると,入れ代わりで別の医療忍者が治療室を出る。交代の時間のようだ。治療室のすぐ外には,赤い髪の女性が座っていた。
「柱間の容態は……?」
治療室から出てきた医療忍者に,その女性が尋ねる。うずまきミト――初代火影・千手柱間の妻にして,その高い生命力と封印術の腕前から,木ノ葉隠れの里で初めて九尾の人柱力となった人物である。九尾のチャクラをコントロールでき,他のいかなる感知タイプの忍とも異なる,"敵意"を感知する特殊な力を持つ。
「未だに意識不明の重体です。やれるだけの事はやりました。肉体の大きな損傷はほぼ完治しています。しかし……,逆に言えば医療忍術ではそれが限界です。」
「というと?」
「医療忍術は細胞を活性化し,新陳代謝を強制的に早めることで傷を治すもの。火影様の細胞が元来有する高い回復力ゆえ,そもそも我々が施せる処置などたかが知れているのです。むしろ逆に,回復力があまりにも高すぎるため細胞レベルで疲労が蓄積しており,生命力が著しく低下している状態です。これはもはや,医療忍術の範囲を超えた治療が必要になります。」
医療忍者は,ミトに説明する。
「それは一体,どのような?」
「……それは,我々も詳しくは存じ上げません。噂程度に聞いた話では,どこかの国には生命そのものを吹き込む医術が存在するとか……もちろん,真偽は定かではございませんし,そのような術で本当に火影様を治せるのかも……。不甲斐ない話ではございますが,正直今は我々医療忍者も,火影様自身の生命力を信じるほかない状態でございます……。」
「…………。分かりました。ありがとうございます。」
ミトは辛うじて,気丈にそう答えた。彼らを責めるわけにはいかない。やりきれない気持ちは彼らも同じなのだ。何も出来ないでいる自分自身に,ただ苛立ちを覚えた。
少し風に当ろうと思い立ち,ミトは病院の外に出る。空は曇っていた。病院の近くに立つ大木へ目をやると,日光を浴びることのできない無数の木の葉がその鮮やかな緑色とは裏腹にむなしく揺れた。
「うっ……!」
突然,ミトはクラりとよろめく。ここ数日,十分な睡眠が取れていなかった。きっと疲れがたまっているのだろう。しかし,何となくそれだけではない気もした。
(……?……何かしら,この妙な胸騒ぎ……。私の中の九尾がいつも以上にうずく……この札をはがせと,この檻を開けろと激しく騒ぎ立てる……。私に似た存在が近づいてくる感覚……。一体,何が起ころうとしているの……?)
~~~~~
木から木へと飛び移りながら,林の中を移動する一人の忍。額当てには滝隠れのマーク。向かう先は木ノ葉である。いかに角都と言えど,今回のターゲットは決して甘い相手ではない。柱間本人もさることながら,木ノ葉の厳重な警戒網を潜り抜けるのは至難の業だ。里に入る前に,まずは火の国で情報を集めるか……,そう思った時である。
(……?)
気配を感じた。角都は足を止め身を潜める。木の枝に立って見下ろした所を数十人の忍が駆け抜けて行く。方向は角都と同じのようだ。
(あれは……。)
彼らの額当てに,雲隠れのマークが刻まれていることを確認する角都。さらにその先頭を走るのは,凶暴で知られる雲隠れの暴れん坊だ。
(雲隠れの"金角部隊"……!?)
「何を見てやがる?」
「!!」
突如背後から声がしたかと思うと,角都の側頭部目掛けて手刀打ちが繰り出される。
ガッ!
しかし,角都はそれを咄嗟に腕でガードする。
「チッ……!」(なんだ……?コイツの硬さ……?雷影のヤローとも違え……。)
「土遁・土矛。貴様こそ,何のつもりだ……。雲隠れの銀角だな?」
角都は攻撃を防いだまま,背後にいる銀角を睨みつける。
「フン……。」
銀角は一先ず下がって距離を取る。
ザッザッザッザッ!
通り過ぎて行ったかと思われた先ほどの数十人の忍たちが,角都の周囲を取り囲んだ。その中にはやはり,金角もいる。
「てめえその額当て,滝隠れのヤローだな?ちょうど良い,コイツでウォーミングアップでもして行くか。」
「雲隠れの金銀兄弟……十億の前に,良い臨時収入だ。」
滝の暗殺者と雲の凶弾,互いに身を構え一触即発の状態になる。
「お待ちください,金角様,銀角様。」
しかし,金角の部下の一人が彼らを諫める。
「これから任務へ向かうところ,このような場所で派手に暴れると敵に勘付かれます。もう木ノ葉隠れの里はすぐそこです。ここはどうぞ穏便に。」
「アァ!?ウォーミングアップっつったろ!こんなザコ一人片付けるのに,全力出す必要もねえ!」
金角は,部下の言葉に聞く耳を持たない。しかし,角都はその単語をしかと聞いた。
「木ノ葉……?やはりその方角だったか……。貴様ら,木ノ葉に何の用だ?」
「あ?これから一暴れしてやろうってんだよ!文句あるかぁ!?」
「ふん……面白い。」
彼らの目的を理解した角都は,ニヤリと笑った。
後書き
お読みいただきありがとうございます!
千手柱間,うずまきミトはいずれも50代後半ぐらいをイメージしてます。
恐ろしき刺客たちがまさかの結託……!?木ノ葉隠れの運命やいかに……。
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