大阪の朧車
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第二章
「この目で確かめるな」
「ひょっとして妖怪って思ってる?」
「ああ」
実際にという返事だった。
「うちの学校多いからな」
「そうよね、高等部でもね」
「八条学園っていうとな」
「もう幽霊とか妖怪のお話ばかりで」
「だからな」
それでというのだ。
「今度のこともな」
「妖怪っていうのね」
「ああ、だからな」
それでというのだ。
「行ってこの目でな」
「確かめるのね」
「そうしような」
「じゃあ三人で」
「行こうな」
こうして二人も兄も一緒に行くことになった、そしてだった。
三人で夜に地下鉄の阿波座の駅の方に行くことにした、弟はその時間は十時位塾から帰った帰りだと答えた。
それで十時に音が聞こえた方に行くとだった。
確かに音がした、その音は。
木製の重い車がゆっくりと進んでいる音だった、映二郎はその音を聞いて兄と姉に言った。
「この音だよ」
「ああ、聞こえてるさ」
「お姉ちゃんにもね」
二人は弟にすぐに答えた。
「ちゃんと聞こえてるわ」
「かなり大きな音だな」
「何この音」
「確かにリアカーじゃないな」
「一体何の音かしら」
「あっちから聞こえるな」
映一郎は今は車が一台も走っていない道を見た、そこから大阪の中でも一番賑やかな北区や中央区に迎える。
「梅田とかに行ける方か」
「難波とかね」
彩香も言った。
「あそこに行けば」
「ああ、音の主がいるかもな」
こう話してだった。
三人でそちらの道に行ってみた、すると。
そこには一台の大きな木製の車があった、車と台の上に四角い部屋がありそれだけで動いている。その車を見て三人は言った。
「あれは牛車だな」
「そうよね」
「確か平安時代の車だったね」
三人でその車を見て話した。
「牛が曳く車だったね」
「けれどあの車自分だけで動いてるわね」
「そうだな、あれはな」
映一郎は妹と弟に言った。
「ちょっと前に言って確かめるか」
「車の?」
「車の前になんだ」
「ああ、そうするか」
こう言ってだ、映一郎は二人を連れて牛車の前に進んだ。若し何かあれば自分の空手で二人を守るつもりだった。
そうして車の前に行くとだった。
車の前に顔があった、その顔は神を振り乱した中年女のもので霧の様に白く朧であった。顔は三人を見ると言った。
「ちょっとどいてくれるかしら」
「あんた妖怪だな」
「そうよ」
顔は映一郎の問いに答えた。
「朧車よ」
「そうだったんだな、一目見て妖怪と思ったがな」
「その通りよ、毎晩ここに出て動くのが私の日課でね」
「それで俺も音を聞いたんだ」
映二郎は朧車の話を聞いて納得した。
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