戦国異伝供書
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第百十八話 水色から橙へその十一
「そこは見極めよ」
「相手も見極める」
「その強さを」
「それも大事ですからな」
「家を保つには」
「そういうことじゃ」
今度は穏やかな声で述べた。
「では今後な」
「我等にですか」
「全て任せる」
こう言って貴久は家督を義久に譲って自身は隠居した、そうして実際にもう何も言うことはしなかった。
義久は普段は領地の政に励みかつ侍達には鍛錬に励ませ鉄砲も造らせていった。そのうえで弟達に言った。
「このままじゃ」
「はい、また時が来ればですな」
「その時にですな」
「戦をしますな」
「そうする、まだ蒲生家があり」
そしてというのだ。
「相良家、菱刈家が大口におる」
「それに東郷家と入来院家もありますな」
義弘がこの二つの家の名前を出した。
「この家全てを降すと」
「うむ、そしてな」
「薩摩と大隅を、ですな」
「そうする、その為にな」
まさにというのだ。
「兵と鉄砲を整える」
「そうしますな」
「迂闊には攻めぬが」
それでもというのだ。
「戦の用意はな」
「常に進めますな」
「薩摩隼人は強い」
義久は自分達の兵達のことを話した、その強さについては絶対の自信がある。
「それこそ武田家や上杉家の兵よりもな」
「はい、当家の兵の強さは天下一です」
義弘も言ってきた。
「まさに一騎当千の強者達です」
「そうであるな」
「そしてその隼人達をですな」
「さらに鍛えてじゃ」
「より強くしますな」
「そして戦の場で働いてもらう」
これが義久の考えだった。
「その為のことじゃ」
「兵達を鍛えに鍛えているのは」
「そして鉄砲もな」
これもというのだ。
「用意するぞ、その使い方もな」
「考えていきますな、それですが」
家久が言ってきた、兄弟の中で一番年少でかつ小柄であるが最も意気盛んな感じで目の光もかなり強い。
「実は駆けながらです」
「敵に向かってか」
「撃つやり方を考えています」
「それはよいのう」
義久は末弟の言葉に口元を緩ませて応えた。
「伊達家は鉄砲騎馬隊といってな」
「馬に乗って鉄砲を撃ちますな」
「そうしてかなりの強さだというが」
「当家はですな」
「馬は多くないからな」
島津家自体がだ、伊達家や武田家と違って名馬の産地は持っていないのだ。
「だからな」
「それで、ですな」
「どうしても足軽達が多くなるが」
「その足軽達に鉄砲を持たせ」
「敵に向かって駆けながらじゃ」
そのうえでというのだ。
「撃つとするか」
「そしてですな」
「撃った後はな」
「さらに駆けてですな」
「刀を抜いてじゃ」
そうしてというのだ。
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