歪んだ世界の中で
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第三話 小さな決意と大きな一歩その十一
「とりあえずね」
「勝手にしなさい」
母の言葉はここでも冷たい。
「好きな様にね。怪我しても知らないからね」
「怪我しても大丈夫だから」
今度はだ。千春がくれたあの薬のことを思い出しながら言う彼だった。
「だからね」
「言ってることがわからないけれど」
「とにかく走って来るからね」
「シャワーはその後ね」
「うん、まず走って来るから」
やはりだ。母の言葉ではなく千春の言葉を思い出しながら応える彼だった。
「そうしてくるよ」
「じゃあいいわ。お母さんとお父さん先に入るからね」
「そうしてくれていいから」
「どういう思いつきか知らないけれど」
息子を見ずにだ。どうでもいいといった口調でだ。
母は言いだ。見送りもしなかった。だが今の希望にはそれはどうでもいいことだった。
「行って来るよ」
「好きにしなさい」
こうしてだ。彼はランニングをはじめた。それを一時間程度してからだ。
家に帰りシャワーを浴びてだ。今度はだ。
机に向かい勉強をはじめた。それは普段と違いだ。
妙にやる気が出て進んだ。それで夏休みの宿題もした。
勉強はこれまでなかった様に順調に進み覚えられた。彼自身驚くまでにだ。
そしてこのことをだ。次の日真人に話した。彼にそのやった宿題を見せながらだ。
そこでだ。こう言うのだった。
「何か今までなかったみたいだよ」
「そうですね。かなり正解してますよ」
病院のベッドの中でその宿題を見ながらだ。真人も希望に答える。
「凄いですよ」
「何でかな、今も気分いいし」
「ランニングのせいではないですか?」
「走ったから?」
「だからではないですか?」
こう希望に言ったのである。
「そのお陰ではないですか?」
「走ったから勉強もできて気分もいいって」
「スポーツをするとです」
それをすればだというのだ。
「その分ストレスも解消されますから」
「ストレスがなんだ」
「だから気分がよくてです」
「あっ、それで勉強も」
「はい、ストレスがなくなったので」
かえってだ。はかどるというのだ。
「そういうことではないですか?」
「成程ね。ストレスがだね」
「ストレスがあるとどうしてもです」
どうなるかとだ。真人は希望にベッドから話していく。
「何かをするにしても思うようにいかなくなりますから」
「そういうものなんだ」
「僕もストレスをいつも解消する様にしていますし」
「あっ、そうだったんだ」
「僕は写真部ですよね」
自分の所属する部活からだ。真人は述べてきた。
「ですからいつも写真を撮ってです」
「そうだね。そして写真も見てだね」
「そうしてストレスを解消していますので」
こうだ。笑顔で希望に話すのだった。
「勉強もやっていけてます」
「ストレスってのは知ってたけれど」
「それがあらゆることに関わってくるとは思ってませんでしたか」
「うん、ちょっとね」
今はじめて気付いたのだった。そのことにだ。
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