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歪んだ世界の中で

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第二話 二人のはじまりその三

「だって。僕は」
「希望は?」
「何もできない、何の取り柄のない人間だから」
「千春が一緒にいたらなの」
「千春ちゃんみたいに奇麗な娘が僕なんかといたら」
 ちらりとだ。千春を見ての話だった。
「迷惑がかかるから」
「自信ないのならね」
「自信ないのなら?」
「そこを努力すればいいだけだから」
 千春はあくまで暗い希望にだ。彼とはまさに対象的にだ。
 にこりと笑ってだ。そして言った言葉だった。
「大したことないよ」
「大したことないって」
「それだけだから」
 だからだ。何の問題もないと話す千春だった。
 彼女は希望にだ。さらにこうしたことも言ったのだった。
「希望は希望だから」
「僕は僕って・・・・・・」
「希望であることは絶対に変わらないから」
 千春が大切にしているのはこのことだった。希望そのものを見てそうして。
 彼をわかっていて、まさにそれによりなのだった。
 優しく明るい声でだ。希望に言うのだった。
「だから千春一緒にいるよ」
「本当にいいんだね?」
「うん、いいよ」
 また言う千春だった。
「それじゃあね」
「一緒にいてくれるんだ、僕と」
「不釣合いなんかじゃないから」
 このことも否定する千春だった。
「だからそれじゃあね」
「一緒にいうてくれるんだ」
「ずっと一緒だよ」
 にこりと笑って。そして希望にまた言ったのである。
「希望と千春はね」
「有り難う。それにしても」
「それにしても?」
「太っていれば痩せればいいだけなんだね」
「希望がそうしたいならね」
 本当にそれだけだった。千春にとっては。
 だがそのことは希望にとっては重要でだ。彼はあらためて言うのだった。
「それに勉強が出来ないことも」
「勉強すればいいだけ」
「そうだね。それだけだね」
 まだ俯いているがそれでもだった。希望は。
 徐々に確かな声になってきてだ。そのうえで言うのだった。
「本当にね」
「そう思うの、千春は」
「そうだね、わかったよ」
 まだ笑みではない。しかし確かに言った希望だった。
 それでだ。少しだけ顔をあげて言ったのだった。
「僕、ちょっとやってみるから」
「やってみるって?」
「痩せてみる。それにね」
 さらにだ。ダイエットに加えてだった。
「勉強もしてみるよ」
「何でも努力するのはいいことだよ」
「努力するよ」
 少しだけでもだ。顔はあげられていた。
 そしてその顔でだ。彼は今言うのだった。
「何とかね」
「千春応援するよ」
 満面の、明るさそのものの笑みを希望に向けてだった。千春は彼に告げた。
「希望が頑張るのなら」
「有り難う、それじゃあね」
「諦めなかったら絶対に出来ることだから」
「ダイエットも勉強も?」
「他のことも」
 その二つに留まらないというのだ。それは。 
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