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戦国異伝供書

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第百十七話 政宗の決意その三

「別に」
「よいのか」
「はい」 
 こう言うのだった。
「別に」
「そうか、しかしな」
「それは、ですか」
「遠慮することはない」
 政宗は酒を飲みつつ妻に微笑んで話した。
「折角手に入ったからな」
「だからですか」
「そうじゃ、遠慮なくじゃ」
 そうしてというのだ。
「受け取ってもらう」
「そうしてですか」
「その茶器で茶を飲み」
「着物を着ることですか」
「そうせよ」
 こう言うのだった。
「よいな」
「それでは」
「そしてじゃ」
 政宗はさらに話した。
「お主はこれからじゃ」
「これからといいますと」
「わしは居城を米沢から会津に移すつもりじゃ」
「会津にですか」
「黒川の城にな」
 そこにというのだ。
「そうするが」
「私もですか」
「ついて来てもらう」
「そうですか、居城を移されて」
「これからは会津でな」
 その地でというのだ。
「全体の政を治める」
「そうですか、それでは」
「その時は頼むぞ」
「わかりました」
 愛姫は政宗の言葉に笑顔で頷いた、そしてだった。
 政宗はその笑顔も見て酒を飲んだ、そしてまた言った。
「ではな」
「その時はですね」
「共に移ろう」
「会津まで」
「そして会津からな」
「さらにですか」
「東国全体を手中に収めるとな」 
 この時はというのだ。
「鎌倉に入るか」
「あの地ですか」
「うむ、そしてな」
 そのうえでというのだ。
「東国全体をな」
「治められますか」
「うむ」
 その様にするというのだ。
「そこからはな」
「そうされますか」
「そしてな」
 それでというのだ。
「東国全体を治める」
「鎌倉ですか」
「当家は鎌倉様にこの地に封じて頂いたが」
 しかしというのだ。
「その鎌倉に入ってな」
「そうしてですか」
「治める」
「そうされますか」
「やがてな、そこから東国を治め」
 そしてというのだ。
「東国もな」
「鎌倉からですか」
「治めたい」
「そこまでお考えですか」
「鎌倉こそはじゃ」
 政宗はさらに話した。 
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