おっちょこちょいのかよちゃん
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101 蘇我氏の一族
前書き
《前回》
三河口は異世界の敵が来るような異常な気配を感知し、奏子に濃藤と北勢田を呼びに行かせ、自身はさくら姉妹を引き連れて敵の討伐に進む。一方、かよ子はイルカという善人面した男と出会い、彼を平和を正義とする世界の人間と思う。異世界の護符に関する情報を提供し、自身の持つ杖を見せる。だが、イルカに騙されてしまい、杖を奪われる。杖と護符の情報を手に入れてその場を去ろうとするイルカの前に現れたのは三河口とさくら姉妹だった!!
かよ子は羽根に乗って杖を奪った入鹿を捜す。
「なんであんなおっちょこちょいしちゃったんだろう・・・」
その時、同じく飛行している者がいた。
「あら、君は確か三河口君ちの隣の子・・・?」
「はい、確か、お姉さんは笹山さんちの近所の・・・」
「そうよ」
「あ、長山君ちの近所のお兄さんにすみ子ちゃんのお兄さん!」
「ああ、ミカワが敵が来たっていうから徳林さんのこの羽衣で飛んできたんだ」
「あの、実はね・・・、私、杖、盗られちゃったんだ・・・!!」
「ええ!?」
三人は驚いた。
「どんな奴だった!?」
濃藤が質問する。
「名前はイルカって言って、昔の人みたいな感じだったな・・・」
「兎に角探しに行きましょう」
「うん」
皆は杖の捜索を始めた。その時、何処からか叩きつけられるような音が聞こえた。
「何!?」
「あっちの方角だ!」
濃藤が指差した所はまた別の飛行物体がいた。
「あれは・・・、ミカワじゃねえか!?」
「三河口君!?」
(と、隣のお兄ちゃんが・・・!?)
かよ子は三河口も助けに来てくれたんだと思うと有り難く、また申し訳無いと思った。
三河口は怒りに燃える。その怒りは入鹿を怖じけ付けさせた。
(こいつ、威圧感を・・・!!)
そして三河口は入鹿の懐に飛び込む。そして首根っこを掴んで地へ投げ落とした。
「うわああ!!」
そして三河口も地に降り、入鹿から杖を奪う。
「まるちゃん、石の能力で火炎放射しろ!」
「え?う、うん!」
まる子は炎の石の能力を行使した。入鹿はその身体を焼き付くされる。
「あちー!あちちちちち!!!」
その場にかよ子達も駆け付けた。
「い、イルカが・・・。燃やされてる・・・!!」
身体を焼かれた入鹿は光となって消えた。まる子とその姉も地に降りた。
「かよちゃん・・・」
「隣のお兄ちゃん・・・」
「ほら、杖だよ・・・」
三河口は杖をかよ子を投げ返した。かよ子はそれを受け取ろうとして、取ったはものの、尻餅を突いてしまった。
「かよちゃん、大丈夫!?」
「まるちゃん、それにまるちゃんのお姉さんも・・・。ありがとう」
「うん、杖が戻ってきて、よかったね」
まる子の姉も一安心したと思った。皆も杖を奪還できてよかったと思い、ホッとする。だが、三河口だけはしかめっ面だった。
「かよちゃん・・・」
「え?」
「おっちょこちょいにも程があるぞ!あんなに容易く杖を盗られるなんて!!杖の所有者として情けないと思わないのか!!」
かよ子は初めて三河口から叱責を喰らった。周りの皆も驚いた。
「う、うん、私も、相手が優しく寄って来たから平和の世界の人間かと思ったんだ。ごめん・・・」
「ごめんどころじゃねえだろ!まだ、俺の胸騒ぎは収まっていねえ!まだ敵はいる!」
「そう言えば俺も、胸騒ぎがしている・・・!!」
北勢田も感じていた。
「そうだ・・・!!すみ子ちゃん達が・・・」
「ん、ウチの妹がどうかしたのか?」
「戦ってるんだ、別の敵と・・・!!」
「何!?現場へ行くぞ!」
「う、うん!!」
「皆、私の羽衣に掴まって!」
「まるちゃん、まるちゃんのお姉さん!この羽根に乗って!」
「うん!」
皆はすみ子達が戦っている現場へと向かった。
組織「義元」は蝦夷・馬子と対峙していた。
「お前ら、昇天させてやる。大伴、物部を失脚させた蘇我の力でな!南無阿弥陀仏、南無阿弥陀仏・・・」
馬子と蝦夷が経を唱える。
「させない・・・!!」
すみ子は銃を発砲した。四人の周りに膜が張られ、相手の攻撃を弾いた。
「お前ら、眠らせるでやんす!」
ヤス太郎はパチンコを発射した。
「南無阿弥陀仏・・・」
だが、蝦夷はその念仏でヤス太郎の攻撃を無効化した。
「効かないでやんす!」
「なら、俺達が!」
川村はバズーカを、山口は弓矢を使って攻撃した。だが、馬子と蝦夷は念仏を唱え続ける事で二人の攻撃は弾かれた。
「く・・・、あの念仏が癪に障るぜ!」
「あいつらの能力を使わせないようにしないと手も足も出ねえぜ!」
すみ子も銃を発砲して自分達を守り続ける。しかし、これを続けても相手の念仏攻撃を防ぐのみの為、相手を倒しきれない。こちら側の攻撃も、相手に防がれる。これでは長期戦は避けられない。
「くそ、キリがねえ!」
「いつまで念仏唱えてやがる!」
その時、かよ子達が戻って来た。
「すみ子ちゃん達!!」
「か、かよちゃん、お兄ちゃん達・・・!!」
「おめえら蘇我氏か・・・。入鹿は倒してもらったぞ!」
「む・・・、南無阿弥・・・」
だが、蝦夷も馬子も振るえている。
「くそ、ダメだ、この男の前ではなぜか立ちすくむ。蝦夷、撤退するぞ!」
「了解!」
馬子と蝦夷は空中へ逃走しようとする。
「させないわ!」
奏子は羽衣を投げつけた。その時、羽衣が蝦夷の口に猿轡された。
「今だ、蝦夷は念仏を唱えられん!かよちゃん、まるちゃん、二人でやれ!」
「うん!」
まる子が炎の石の能力を行使する。かよ子はまる子が出した炎に杖を向け、炎を操る能力を得た。猿轡で口を封じられた蝦夷は念仏を唱えられない為、自身の能力で保身する事もできなかった。蝦夷が焼かれ、光となって消えた。だが、奏子の羽衣は燃えずにそのまま奏子の元へと戻った。
「あとはお前だ!」
皆は馬子に矛先を向けようとした。
「な、南無阿弥陀仏、南無阿弥陀仏・・・」
しかし、馬子は去ってしまった。
「取り逃がしたか・・・」
濃藤は妹達を気にする。
「皆、よく頑張ったな」
「ああ、でも、結構手強かったぜ」
「文化祭の時に戦った奴より手強かったでやんす」
「文化祭の時・・・?」
かよ子は何の事か気になった。
「ああ、俺達が帰る途中、異世界の敵が来たんだ。石松やエレーヌって奴と一緒に倒したんだがな」
「そうだったんだ・・・」
「それにしてもあいつらは南無阿弥陀仏とか仏教にすがってるような感じだったな」
北勢田は回想する。
「奴等は生前、蘇我氏の一族として君臨していた者達だ」
「ソガシ・・・?」
かよ子は何それと思った。
「そう言えば私、社会の授業で聞いた事あるわ」
まる子の姉が思い出すように言った。三河口が説明する。
「ああ、1500年ほど前、大伴氏、物部氏と並ぶ三大勢力とされていた一族だ。蘇我稲目の頃に勢力を出し、大伴氏が勢力を失うと、物部氏と激しく争ったんだ。仏教の導入や次の天皇を決める、いわば皇位継承でね。稲目に変わって息子の馬子が物部氏を滅ぼし、蘇我氏の天下となるんだ。だが、馬子は自分への反逆を考えていた崇峻天皇を殺害し、推古天皇や聖徳太子が生きていた頃は暫くは慎んでいたが、聖徳太子が死ぬと、また横暴になり、馬子の子・蝦夷は自分が天皇以上に威張った振る舞いをし、蝦夷の子・入鹿は聖徳太子の子を殺害したりして蘇我氏は更に横暴になっていったんだ。だが、入鹿が中臣鎌足、中大兄皇子に殺害され、蝦夷が自害して蘇我氏の勢力は弱まったという訳だ」
「ふうん、蘇我氏って結構勝手な事してたのね。ウチのバカな妹みたいに・・・」
まる子の姉は妹を睨み付ける。
「う・・・。アタシはそんな事・・・」
「お姉ちゃんの宝石を欲しがったのはどこのどいつだったっけ?」
「う・・・」
「帰った後、また欲しがるなよ。でなきゃ、その炎の石も石松に没収されるからな」
「は、はい・・・」
まる子は何も言えなかった。
「ところで・・・」
三河口はかよ子の方を見る。
「かよちゃん、入鹿にまさか護符の場所を喋ったんじゃないだろうな・・・」
「う・・・、ごめん・・・。言っちゃった・・・」
「ごめんで済むか!!これじゃ赤軍が名古屋の従姉を狙いやすくなるだろうが!!」
「う、うう・・・!」
かよ子は涙目だった。
「ミカワ、よせよ!もう、仕方ないじゃねえか。かよちゃんだって騙されたんだから」
「そうよ、あんまり怒っちゃ可哀想よ」
北勢田と奏子はその場を取り繕おうとした。
「まあ、ここまでにするか。俺は帰ったら叔母さんや叔父さん、名古屋の従姉に連絡する。兎に角、皆も大変だったね。暗くなってきたから帰ろう」
「うん」
皆は帰った。
「お兄ちゃん・・・。ごめん、おっちょこちょいして・・・」
「まあ、どちらにしてもさりちゃんが心配だな・・・。まあ、大雨の時にあの護符を使いこなせてたんだから十分太刀打ちできると思うが・・・」
かよ子は気まずく思いながら、三河口と帰宅した。
何とか逃げおおせた馬子は己の父、稲目と対面した。
「父上、申し訳ございませぬ、蝦夷と入鹿はやられました・・・」
「勢力低下は仕方あるまい。護符の場所は分かったのか?」
「はい、入鹿が聞きだしました。『ナゴヤ』という所にあるそうです」
「そうか、報告しないとな」
「はい・・・」
稲目と馬子は清水の地から去った。
この日、日本各地で異世界の敵が現れた。
後書き
次回は・・・
「標的は名古屋」
三河口は名古屋にいるさりにかよ子が騙されて護符のある場所を異世界の敵に教えてしまった事を電話で報告する。三河口の叱責を喰らってから精神を病んだかよ子は合唱の練習に身が入らなくなり・・・。
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