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おっちょこちょいのかよちゃん

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98 護符の在処

 
前書き
《前回》
 かよ子は笹山の家で笹山、藤木と合唱の練習をする予定だったが、藤木が風邪を引いてしまい、かよ子と笹山の二人で練習する事に。笹山は藤木の見舞いとして練習後に手作りのクッキーを藤木の家へ届けに行くのだった!! 

 
 赤軍はレバノンへの本部完全移転を成功させた。
「さて、本部の移転は終わった。次は護符を探し出すのよ!」
「はい!」
 房子は狙う。杖を、杯を、そして行方不明の護符を。そして今保持している剣とその三つを合わせれば自分達は無限の能力(ちから)を得られる。そして大日本帝国は復活するのだ。
(天の先、地の果て、どこまででも手にするわよ・・・)

 笹山の家で歌の練習を終えて翌日、藤木はこの日も欠席していた。
(藤木君、風邪が長引いているんだね・・・)
 かよ子も風邪を引かないようにと気を付けた。後、もう一つ心配な事がある。それは、自分の好きな男子、杉山が運動会以来、未だに大野と喋る事を避け続けている。これからの「戦い」でこの仲違いをいつまでも続けていればこちらが不利になる。だが、仲直りの糸口は未だに見つからなかった。

 放課後はいつものように合唱コンクールに向けた練習だった。
(よし・・・!)
 かよ子は昨日の笹山家のピアノで音を取って練習した成果を見せようと意気込んだ。この日の独唱部分も上手くいったと実感する事ができた。
「スバリ、お時間が来たでしょう!お疲れ様でした!」
 練習の終わり、かよ子は杉山に呼ばれる。
「おう、山田あ・・・」
「す、杉山君・・・!!」
 かよ子は急に顔を赤くする。
「ど、どうしたの・・・?」
「お前、独唱の部分、すげえ上手かったぜ。頑張れよな」
「う、うん、ありがとう・・・!実はね、昨日、笹山さんちのピアノで音取りしながら練習したんだ」
「ピアノでか、そりゃいい練習だな。俺も頑張んないとな・・・」
 杉山はピアノと聞いてふと夏休みにあった東京の少女の事を思い出す。
「杉山君、どうかしたの?」
「え?あ、ああ、ピアノの事考えたら東京にいる『あいつ』の事を急に思い出しちまったんだ」
「もしかしてりえちゃんの事?」
 かよ子はふと杉山がりえに何らかの想いがあるのではないかと夏休みの時に察した事を思い出した。杉山はりえにどんな想いを持っているのか・・・。
「ああ、あいつの身に何かあったかどうか気になったんだ」
「りえちゃんなら、9月のピアノコンクールで優勝して今度は関東のコンクールに参加する予定だって言ってたよ。私、りえちゃんと時々文通してるんだ・・・」
「そうか・・・。お前も仲良くなったもんな・・・」
「でも、この前、襲われかけたんだって」
「マジで!?まさか赤軍か!?」
「うん、それから東京のビルを爆破してるグループが赤軍と協力してりえちゃんの杯を狙ったんだ・・・!!」
「マジかよ!?大丈夫だったのか?!」
「うん、隣のお兄ちゃんの従姉の人が助けに来て追い払えたって・・・」
「なら、俺も安心したぜ。夏休みにはあいつと喧嘩もしたけど俺、りえのピアノ、応援してんだ・・・」
「う、うん、私もだよ・・・」
「じゃあ、俺達もコンクール頑張ろうな!じゃあな!」
「バイバイ・・・!!」
(杉山君、やっぱり、りえちゃんが好きなのかな・・・?)
 かよ子は杉山を疑った。でも、こんな時に好きな男子を疑うのは良くないのかなとも思うのであった。

「只今」
 かよ子は帰宅した。
「お帰り、かよ子。りえちゃんが手紙が来たわよ」
「え?ありがとう」
 かよ子は早速自分の部屋に行く。机の上に杯の所有者からの手紙があった。

 かよちゃんへ

 お元気ですか。私、先週、埼玉で行われた関東のピアノのコンクールでも見事に優勝しました。今度は関東代表として全国のピアノコンクールに出場することになったの。寒くなったけど風邪を引かないようにお気をつけてください。

 りえより

(りえちゃん、関東のピアノコンクールでも優勝したんだ・・・。凄いな・・・)
 かよ子もりえに負けていられないと思った。自分も今後の合唱コンクールの為にも。そしてりえを恋のライバルとして意識しながらも・・・。かよ子は早速返事を書く事にした。

 りえちゃんへ

 手紙ありがとう。こっちは学校で行われるクリスマス合唱コンクールの練習をしています。おっちょこちょいしないように歌を頑張っています。こっちの友達もみんな元気だよ。またいつか会おうね。じゃあね。

 かよ子より

 かよ子は返事を書き終えた。

 そんな中、東京都の多摩地区にて異世界の敵が暴れていた。

 翌日、かよ子達はテレビにて朝のニュースを見ていた。
『昨日、東京都の多摩地区にて異世界の敵と名乗る人物が暴れる事件が発生しました。この影響で多くの建物や乗用車が破壊され、大量の重軽傷者を出したとの事です。犯人はそのまま去りました』
「異世界の敵・・・!?また暴れ出したの・・・!?」
 かよ子は驚いて牛乳をこぼしてしまった。
「あ・・・」
 かよ子はいつものおっちょこちょいをやってしまった。ふきんでテーブルを拭いた。
「そうね、もしかしたら、名古屋にいるさりちゃんの護符を探しているかもしれないわね・・・」
「そんな・・・。それで赤軍は異世界の敵を使って護符を探しに日本中のあちこちを狙うっていうの・・・?」
「そうかもしれないね」
 かよ子はぞっとした。

 隣の羽柴家でもその異世界の敵の暴動事件のニュースを耳にしていた。
「叔母さん、叔父さん、これって・・・」
「ああ、間違いないね。おそらくさりが持ってる護符を探してるんだろ」
「そうなると、いつバレるか、時間の問題ですね」
「それに見つかるまで絶対にやめないと思うから、あちこちで被害は起きると思うよ」
 三河口はそう思うと落ち着かなくなった。

 かよ子は学校に着くと、その場には藤木がいた。友人の永沢と話している。
「藤木君、風邪、治ったんだ」
「うん、熱も昨日でやっと下がったよ」
「君、まさか歌うのが嫌でズル休みしたんじゃないだろうね?」
 永沢は変な勘繰りをする。
「そ、そんな訳ないじゃないか!」
「そうよ、藤木君がそんな事する訳ないじゃない!」
 笹山が近づいて藤木を庇った。
「藤木君はこの前の日曜、私や山田さんと歌の練習する約束してたのよ。でも、その時から藤木君が風邪引いてたって電話があったのよ」
「そうかい?君、卑怯者の上に嘘つきだからね」
「本当は笹山さんと練習したかったんだよ!熱が出て、それでも行きたかったんだけど母さんにも止められて、行けなかったんだよ!」
「そうよ、永沢君、酷いわ!」
「ふん、笹山がそう言うなら信じてやるよ」
 永沢はこれ以上は何も言わなかった。
「笹山さん、ごめんよ、練習行けなくて・・・。クッキーもありがとう。美味しかったよ」
「私も藤木君が元気になってくれて良かったわ。また、頑張ろうね」
「うん!」
 藤木が笹山に元気づけられる様子を見て遠目から見ていたかよ子も何故か安堵するのであった。

 休み時間、かよ子はまる子にたまえと話をする。話題は勿論東京にいる杯の所有者の事だった。
「昨日、りえちゃんから手紙が届いたんだ。そしたら関東のピアノコンクールでも優勝して今度は全国ピアノコンクールに出場するって書いてあったよ」
「りえちゃんが?凄いねえ〜」
「うん、凄いピアノ上手だもんね」
「お、懐かしい話してんな」
 大野が話に入ってきた。
「あ、大野君・・・」
「大野君、夏休みに会ったりえちゃんって覚えてる〜?」
「ああ、ピアノがすげえ上手い子だろ?あん時は杉山の奴が喧嘩しちまってよ」
「うん、そのりえちゃんがピアノコンクールの関東の代表になったんだって」
「おお、すげえな。あいつは将来ピアニストになりたいって言ってたもんな」
「また会えるかな〜?」
「きっと会えるよ・・・」
「うん、そうだよね!」

 そんなかよ子達の会話を杉山は遠くから聞く。大野が会話に入って来て、あの強気な東京の少女の話をしていたのが聞こえた。
(あいつ、頑張ってんだな・・・。喘息とかを気にしないで・・・)

 そして放課後はいつものように合唱の練習だった。その間、異世界の人間が埼玉県、千葉県、神奈川県の各地で暴動を起こした。 
 

 
後書き
次回は・・・
「暴れ出す敵達」
 護符の持ち主を突き止めに多くの異世界の人間が送り込まれる。そんな時、東京の拘置所に捉えられた赤軍のメンバーに東アジア反日武装戦線の元に赤軍の長が赴き・・・。 
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