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八条学園騒動記

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第五百九十一話 巨匠の嫉妬その四

「そんな状況でも思えたからね」
「嫉妬していたんだ」
「うん、僕も滅茶苦茶忙しくても嫉妬するだけの気力のスペースがあったとか」
 ジミーはここ信じられないといった顔で言った。
「信じられないよ」
「そうだよね」
「普通はないよ」
 それこそというのだ。
「普通の人はね」
「物凄く忙しいと」
「周りもね」
 少なくとも手塚治虫は終生極めて多忙であった、ずっと複数の連載が途絶えたことがなかったのだ。週刊連載も最晩年まで持っていた。
「見えなくなるよ」
「そうなるよね」
「普通の人はね」
「そうだよね」
「けれどね」
 それがだったのだ。
「あの人はね」
「周りを見て」
「それで凄いと思った作品は認めて」
 漫画だけでなくアニメの仕事もしていたがだ。
「嫉妬してね」
「自分はもっと凄い作品をだね」
「思っていたから」
「何か物凄い人だね」
「モーツァルトは他の人の音楽を聴いてもね」
「嫉妬したりしなかったね」
「僕の知る限りね」
 ジミーはジョルジュに答えた。
「あの人はもう自分の音楽をね」
「ただ作曲していたね」
「うん、周りを見ないでね」
 他者の音楽を聴いてもだ。
「それでね」
「作曲を続けていたね」
「何でも目の前に音符があるから」
 これはモーツァルト自身が言っていたことだ。
「それを書く」
「それがモーツァルトだったね」
「そうした人でね」
「もう他人にどう思うとか」
「それがなくて」
 そしてというのだ。
「これといってね」
「他の人に嫉妬せずに作曲を続けていたね」
「どうも心のマイナス面の少なかった人みたいだし」
「無邪気だったそうだね」
 このことはジョルジュも知っていた。
「どうも」
「うん、下品なジョークが好きだったらしいけれど」
 このことは手紙にも残っている。
「それでもね」
「子供のままの人で」
「それ有名だね」
 ジョルジュも言った。
「子供みたいだったっていうのは」
「童心があったっていうのか」
「それか子供のままだった」
「悪く言えばそうなるね」
「兎に角子供みたいな人で」
「無邪気で」
 それでというのだ。
「嫉妬とかはね」
「なかったんだね」
「もうひたすらね」
 ジミーは話した。
「作曲していた」
「そうした人だったんだね」
「自分の作品をね、そしてね」
「あれだけの作品を残したんだね」
「子供の頃から作曲して」 
 それこそ字を覚えるかどうかという年齢からだ。 
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