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レーヴァティン

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第百八十二話 民の心その三

「処刑するさ、けれどな」
「家族や一族はですね」
「関係ないだろ」
 その犯人、処刑すべき者にというのだ。
「そうだろ」
「はい、確かに」
 源三もその通りだと答えた。
「だからな」
「それじゃあな」
「家族も一族もですね」
「そうしたことはしないさ」
「罪には問わないですね」
「一切な」 
 まさにというのだ。
「そうした考えだしな」
「実際にそうしていますね」
「帝国の法でも定めているな」
「だからな」
 それでというのだ。
「絶対にな」
「それはしないですね」
「ああ」86 
「だからこと」
「その家族や一族から選ぶか」
「ことが済めば」
「そうするな」
 その時はというのだ。
「領主をどうにかしてからな」
「それまではなのね」
「ああ、何も言わないな」
「考えるだけね」
「ああ」
 そうするというのだ。
「若し言ったらな」
「その時はね」
「領主がその家族や一族の人を殺すからな」
「身内にも容赦ない人だからね」
「またいらない血が流れてな」
「折角の優れた人材もいなくなるから」
「言わないな」 
 今はというのだ。
「そうするな」
「そういうことね」
「それとな」
 久志はさらに言った。
「本当に今回は色々考えさせられる戦だな」
「戦以外のことでね」 
 剛が言ってきうた。
「どうしてもね」
「そうだよな」
「相手が相手だから」
「ああ、無茶苦茶な奴だからな」
「殺人狂ってのは何処でもいるからね」
 それが僅かな数でもだ。
「どの世界でもね」
「そうだよな」
「何時の時代でもね」
「呂后みたいな奴はな、いや」
 ここで久志は己の言葉を訂正した、そうしてこう言った。
「呂后は人豚はしたけれどな」
「あの話だけだね」
「憎い敵だけでな」
「そうしたことはしたかどうかも言われているし」
 人豚の話が事実かどうかだ。
「確かに残酷な人だったけれど」
「それでも統治自体はな」
「残酷じゃなかったよ」
 それはあくまで宮中のことでその外、天下万民に対しては残酷な統治を行っていなかったのだ。このことは史記でも書かれている。
「そちらはね」
「あの領主と違ってな」
「そうだったからね」
「遥かにましだな」
「下手な戦争は避けていたし」
「匈奴にも一歩退いてな」
「そうだったからね」
 匈奴の単于に手紙を送られても退いた返事を書いた程だ。 
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