醜い犬の子

　　　　　　　　　　　　　　　醜い犬の子
　そのペットショップの話を聞いて足立康代、主婦で保護犬や保護猫のボランティアをしている彼女は言った。
「それはね」
「無責任ですよね」
「ええ」
　垂れ目で唇は笑っている感じだ、黒髪を後ろで束ねている。三十代前半でスタイルはかなりいい。服は動きやすいものだ。ジーンズがよく似合っている。
「ペットショップを開いたらね」
「最後までですよね」
「動物の面倒を見ないと」
「ですが店員さんが辞めていって」
「店長さんは失踪して」
「閉店しまして」
　そしてというのだ。
「ペットショップの子達はです」
「ご飯もないままなのね」
「置いていかれました」
「本当に酷いお話ね」
　康代は暗い顔で言った。
「それはまた」
「幸い閉店してすぐにお店の中から犬や猫の鳴き声がして」
「皆保護出来たのね」
「はい、それで今皆の里親を探しています」　
　ペットショップにいた彼等のというのだ。
「それをはじめました」
「それでうちでもなのね」
「はじめています」
「それじゃあ」
　ここまで聞いてだ、康代は自分と一緒にボランティアをしている大学生の彼女に話した。名前を金井美冬という。小柄で茶色の髪をショートにしている童顔の女性だ。背は一五〇程でミニスカートが似合っている。
「私もね」
「一緒にやっていきましょう」
「それじゃあね」
　康代は美冬に頷いてだった。
　すぐにどういった子が保護されたのか見た、その中で。
　まるで毛玉みたいな、小型犬の大きさの子を見た。康代はその子を見て美冬に問うた。
「この子何？」
「はい、ワンちゃんみたいですが」
　美冬は康代に答えた、毛はごわごわしていて身体全体を覆っている。目は完全に毛に覆われていて見えそうにない。足もまともに見えずしかも毛はかなり汚い。
「どうもです」
「わからないわね」
「キャンキャン」
「鳴き声を聞くとね」　
　康代はその声を聞いて言った。
「ワンちゃんみたいね」
「ペットショップの裏にいました」
「中にいなかったの」
「多分この毛で売りものにならないと思われて」
　それでというのだ。
「ほったらかしにされたみたいです」
「そうなのね」
「段ボールの中にいました」
「そうだったの」
「はい、それでペットサロンの人にお願いして」
　そうしてというのだ。
「毛を切ってもらいます」
「これじゃあ目も見えないしね」
「動くことも十分でない位ですし」
「汚いしね」
「ですから」
「毛を切ってそして」
「身体も奇麗にします」
　そうするというのだ、こう話してだった。
　実際にペットサロンの人がこれまたボランティアで来てだった。
　その毛玉の様な毛を切ってシャンプーで身体を奇麗にした、すると。
　黒に近いダークブラウンの毛に黒い奇麗な目をしたプードルだった、性別は雄で。
　顔立ちはかなり整っていた、康代はその子を見て美冬に言った。
「プードルだったのね」
「そうですね」
「しかも顔立ち整っていて」
「目も見えるみたいですね」
　見れば周りを見回して目をぱちくりさせている。