犬から見えた家族の未来

「あの、ワンちゃんは」
「子供が生まれただろ」
「近寄って舐めたり毛がお鼻に入ったらよくないからよ」
「噛むかも知れないしな」
「それに娘に吠えるし」
　それでというのだ。
「ケースに入れたのよ」
「うちの娘に悪いことしない様にな」
「いや、お二人の娘じゃないんですか？」
　洋介は二人が前に言ったことをそのまま聞いた。
「そうじゃないんですか？」
「そんな筈ないだろ」
「私達の娘はこの娘だけよ」　
　揺り篭の中の赤ん坊を見て言った。
「ふわりは犬よ」
「それだけだよ」
「最近吠えてばかりで」
「うちの娘にも吠えて」
「育児で忙しいのに」
「邪魔だよ」
「邪魔って」
　ここで洋介は父が言ったことを正しいと思った、見ればふわりはずっとケースにいる感じでブラッシングもされていなくて。
　ただご飯と水が入った食器だけが前にあって外に出たい感じだった。ずっと二人を慕っている目だったが二人はふわりを邪険に見るだけだった。
　洋介は家に帰って父に全て話すと父は怒った顔で言った。
「もうすぐ捨てるな」
「そうだろうな」
　息子もこう言った。
「いい娘なのにな、ふわり」
「いい娘かどうかはあの連中には関係ないんだ」
「自分の子供だけが大事なんだな」
「そうだ、その子供もな」
「邪険にするのかよ、自分達の血のつながった子なのに」
「それもわかる、捨てたら動くぞ」
　父は今はこう言ってだった、そして。
　二人がふわりを捨てた、保健所に送ってふわりを里親を探している保護犬にしたと聞いてすぐにだった。
　保健所に行ってふわりを引き取ってから家で洋介に言った。
「この娘はうちで飼うぞ」
「これからはそうするんだな」
「ああ、そうするつもりだった」
　こう息子に言った。
「だからお前もだ、母ちゃんもな」
「ふわりを大事にしろってんだな」
「あの連中みたいには絶対にするな」
「そうするな」
「あとあの連中二人目が出来たな」
　子供がとだ、父はふわりを見つつ言った。
「最初の娘もな」
「ふわりみたいになるんだな」
「お前ももうわかったな」
「わかったよ、可愛がっていた娘をあんな邪険にして捨てたんだ」
　洋介はふわりを見つつ言った、見ればふわりは家の中を見回してここは何処なのかという感じである。
「それじゃあな」
「自分の娘もだ」
「そうした連中なんだな」
「この娘薄暗くて冷たい場所で寂しそうにしていたぞ」
「一目惚れしたって娘によくそんなこと出来るな」
「世の中そんな奴もいるんだ」
「屑だな、俺もワルだけれどな」
　外見通り不良だがというのだ。
「そんなことするか」
「俺はお前が人を簡単に見捨てる奴に育てた覚えはねえぞ」
「ワルでの人の道は守れだな」
「人も犬も一旦絆が出来たら見捨てるな」
「いつもそう言ってるな」
「だからだ」　
　それでというのだ。
「この娘もな」
「大事にするか」
「ああ、そうするぞ」
「わかったぜ、じゃあふわりこれからも宜しくな」
「キャン・・・・・・」
　捨てられたことを自覚しているのかふわりは悲しい感じだった、洋介は彼女が自分達も自分を捨てるのではと思っていることを察した。それで。
　ふわりを大事にした、それは父だけでなく母も同じだった。そして。