拾った犬は
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第四章
「そのことはわかっておいてね」
「そういうことね」
「ええ、ただね」
「ただ?」
「これからもああした子はうちに連れて来なさい」
「野良犬とかはいいの」
「野良猫もね、そのままだと駄目でしょ」
「保健所に連れて行かれるわね」
「それかすぐに病気や事故で死ぬから」
それでというのだ。
「そうした子はね」
「うちに連れて来るのね」
「暫くうちに置いて」
そうしてというのだ。
「飼い主を探すわよ」
「元の飼い主も新しい飼い主も」
「ええ、そうしてね」
そのうえでというのだ。
「幸せになってもらうわ」
「命は大事にね」
「そうよ、そのことはあんた達も守りなさい」
娘に強い声で言った。
「いいわね」
「そうね、どの命も大切だし」
「そう、うちでは飼わないけれど」
ペットはというのだ。
「命は助けていかないとね」
「飼えなくても助けるのね」
「そうよ、お母さんもうペットは飼いたくないのよ」
娘に眉を顰めさせて答えた。
「そのことは知ってるでしょ」
「先に死なれるから」
「そう、悲しいからね」
だからだというのだ。
「もうどうしてもね」
「飼えないのね」
「それでも飼える人はいるけれど」
それでもというのだ。
「お母さんは無理だから」
「それでなのね」
「悲しいから。けれどね」
「助けることはするのね」
「そう、だからいいわね」
「これからも犬や猫を拾ったら」
「助けるわよ、自分第一で」
それでというのだ。
「他の人はどうでもいいとか皆大嫌いとか」
「そんな人もいるわね」
「自分以外の生きもの皆大嫌いな人もいるのよ」
「そうよね」
「そんな人を見たらどう?」
「最低って思うわ」
娘は母に眉を曇らせて答えた。
「そうした人は」
「そうでしょ、そんな人になりたくないでしょ」
「絶対にね」
「そう思うならね」
それならとだ、母は娘に話した。
「いいわね」
「命は助けていくことね」
「助けられる命があればね」
それならというのだ。
「いいわね」
「そうしていくわね」
「利久にもそう言っておくわね」
そして命を助けていくというのだ、飼えなくても。娘は母のその言葉を聞いてそうした考えもある、それはそれでいい考えだと納得して頷いた。
拾った犬は 完
2020・11・24
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