| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

ハッピードッグハッピーライフ

しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

第二章

「それで種類は雑種だな」
「そうでしたか」
「何か随分な」
 ジョッシュはジョンを見つつ記者に話した。
「前の飼い主に酷い扱いを受けていたらしいんだよ」
「虐待ですか」
「みたいだな、随分殴られて蹴られて」
「そんなことする人は何処でもいますね」
「そうだよな、本当に」
 ジョッシュはおのことは苦い顔で話した。
「俺は喧嘩はしたけれどな」
「そうしたことはですか」
「誰にもしたことはないからな」
「余計にですか」
「そう思ったさ、確かに喧嘩もかっぱらいもドラッグもしたけれどな」
 それでもというのだ。
「そうしたことはしなかったからな」
「酷いことをすると思われて」
「それでだよ」 
「引き取られて」
「シェルターで仲間になった連中から紹介されてな、それでシェルターの援助も受けてな」
 そうしてというのだ。
「俺とこいつは一緒に暮らしはじめて」
「そうしてですか」
「こいつ見てるとふとな」
 感じるところがあった、それでというのだ。
「絵を描きはじめたんだよ」
「そうされたんですね」
「ああ、ただ何かな」
「描きたくなってですか」
「描いたんだよ、それでロンドンの街もな」
「描かれて」
「本当にただそれだけで」
 描きたくなって描いてというのだ。
「別にどうこうするつもりなかったんだよ」
「絵を売るとか」
「全然な、けれど画商の人に言われて」
 そしてというのだ。
「売ったりしてな、自然と絵が売れていって」
「画廊にもですね」
「飾ってもらってな」
「絵がどんどん売れて」
「ラジオでも紹介されて出させてもらって」
 ラジオ番組の出演もあってというのだ。
「それでこれまでのことも本に書かせてもらって」
「出版もされましたね」
「ああ、全部こいつに会ってだよ」
 ジョッシュはジョンを見つつ記者に話した。
「本当にな」
「そうでしたか」
「こいつに会わなかったら」
 温かい目で話した。
「今も俺はどうなっていたか」
「わからないですか」
「そうだろうな」
「では彼はオーセンさんにとって幸せを運んでくれた犬ですね」
「そうだよ、人生ってのはちょっとしたことで変わるんだな」
 今度は暖かい顔であった、目だけでなく。
「そのことがわかったよ」
「彼と出会ってから」
「本当にな、それでこれからもな」
「描かれますか」
「ああ、絵をな」
 そうするというのだ。
「これからも」
「そうされますか」
「ずっとな、人生捨てたものじゃないよな」
 ジョッシュはこうも言った。 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

全て感想を見る:感想一覧