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災害を乗り越えて

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第二章

 貼り紙もして必死に探した、だが一年経ってもだった。
 ミルは見付からない、友加里は常に探したがそれでもだった。
「ミル何処に行ったのかな」
「誰かに飼われてるかも知れないわね」
「そうだといいけれど」
 友加里は母に暗い顔に応えた。
「けれどね」
「無事じゃなかったらっていうのね」
「そう考えてしまうから」
 それでというのだ。
「凄く不安なの」
「気持ちはわかるけれどね」
「今も探しているから」
「絶対に見付かるって思って」
 そう考えてというのだ。
「いいわね」
「ええ、それじゃあ」
「待ちましょう」
「それしかないのね」
「獣医さんにもお話してるしね」 
 近所の獣医全てにだ。
「保健所にもだから」
「見付かったら」
「絶対に連絡が来るからね」
 だから待とうというのだ、こう話してだった。
 娘を落ち着かせた、友加里はずっと不安であったがミルを必死に探し続けた、そうしてまた三ヶ月程経った時に。
 学校から帰ると母に言われた。
「獣医さんから連絡があったわ」
「まさか」
「ええ、ミルが保健所で保護されてね」
「それでなの」
「かなり衰弱していたけれど治療してね」
 それでというのだ。
「無事らしいわ」
「ミル無事だったのね」
「ええ、すぐに獣医さんのところに行く?」
「行くわ、どの獣医さんなの?」
「それはね」
 その獣医が何処かも話した、そして。
 それでだ、友加里はすぐに母に言って車でだった。
 その動物病院に行った、するとそこにだった。
「ミル!!」
「ニャッ!?」
 かなり痩せていて毛もボロボロになっていた。だが。
 それは確かにミルだった、それで言った。
「よかった、見付かったのね」
「ニャ~~~」
 ミルは友加里そして母を見て信じられない顔だった、だが。
 二人をじっと見てようやく事態を受け入れて今度は嬉しそうに鳴いた。
「ニャア」
「本当に心配していたから、無事でよかったわ」
「災害でペットと離れ離れになることもありまして」
 獣医がここで言った。
「そのままということも多いですが」
「そうなんですか」
「お会い出来てよかったですね」
「はい」
 友加里は泣きながら言った。
「本当に」
「そうですね、ではこの子が元気になったら」
「退院してですね」
「お家で、ですね」
「また一緒に暮らします」
 友加里は獣医に答えた。
「そうします」
「そうですね、では」
「退院までお願いします」
「お任せ下さい」
 獣医も約束した、この日友加里も両親も心から喜んだ。そして。
 ミルが退院すると震災の後で新しく住む様になった家に迎え入れた、友加里はここでミルに満面の笑顔で言った。
「ミル、もう何があっても離れないわ」
「ニャンニャン」
 ミルは上機嫌で応えた、友加里はそのミルを抱き締めた。ふわふわとして暖かいとても心地よい抱き具合だった。


災害を乗り越えて   完


                   2020・11・19 
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