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歪んだ世界の中で

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第一話 底のない絶望その十一

「本当にすいません」
「いいよ」
 希望は何時の間にかだ。真人の枕元に座っていた。そこでだ。
 彼はだ。真人に対して述べたのである。
「そんなことはね」
「そう言ってくれるんですね」
「だって。友井君はそんな怪我をしてるじゃない」
 ギプスに覆われただ。彼を見ての言葉だった。その頭にも包帯がある。
「それでも僕に謝る様な人だよ。どうしてそれで」
「だからなんですか」
「いいよ」
 こう真人に言うのだった。
「そのことはね」
「そうですか」
「だからね」
 それでだとだ。まただった。
 希望は真人に対して言ったのだった。
「気にしなくていいから」
「すいません」
「御見舞い、来ていいかな」
「有り難うございます」
 許可ではなかった。感謝の言葉だった。
「楽しみにしていますね」
「毎日来るからね」
 自分のことを置いておいて。そのうえで真人に告げた言葉だった。
「だから。待っていてね」
「はい、それでは」
 こう話してだった。希望はだ。
 真人の部屋を後にした。しかしだった。
 一人になった彼はだ。さらに孤立した。それはだ。
 家でもだった。だからだ。
 彼は家にも殆ど寄り付かずだ。何処かを彷徨うだけだった。
 そして真人の部屋に行く。夏の間そう過ごしていた。
 その彼にだ。真人は問うのだった。
「寂しいでしょうか」
「少しね」
 かなり抑えて言う彼だった。真人の枕元で。
「家にいても仕方ないですし」
「そうですか」
「言われることは同じだし」
 勉強や留年のこと、そうしたことばかりだというのだ。
 このことを言ってだ。そしてだった。
 彼はだ。辛い顔になって真人に言うのだった。
「辛いんだ、とてもね」
「家にいてもなんですか」
「本当にさ。死にたいって何度も思うよ」
 その辛さのままだ。彼はまた述べる。
「家もそうだし。学校がはじまったら」
「学校ですか」
「皆大嫌いだよ」
 血を吐く、そうした言葉だった。
「僕を切り捨てて馬鹿にして。そんな奴等ばかりだから」
「あの人達は誤解していますね」
 決してだ。真人は彼等を擁護しようとしなかった。あくまで希望の側に立っていた。
「理はありません」
「それはないんだ」
「こうした時最も卑怯なのは」
 真人は希望に顔を向けて。確かな声で彼に話した。
「どっちつかずの態度を取ることです。それにです」
「それに?」
「ことの善悪ははっきりしないといけません」
 それは絶対にだというのだ。そのことを言ってからだ。
 真人はだ。希望にまた言ったのである。
「そして僕は今の彼等は間違っていると思います」
「だからなんだね」
「遠井君と共にいます」
 くれぐれもだ。そうだというのだ。
 このことを話してだ。そしてだった。 
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