ハイスクールD×D イッセーと小猫のグルメサバイバル
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。
ページ下へ移動
第70話 甦れイッセー!小猫の決意と旅の終わり!
「帰ってきました!」
小猫達は塔中華島で海鮮の実と伝説の四季の食材を見事ゲットした。急いでフロルの風を使いライフへと戻ってきた小猫達を見て、偶然側にいた祐斗と朱乃が驚きながらも笑みを浮かべて小猫達に駆け寄ってきた。
「小猫ちゃん!皆!」
「良かった……無事に海鮮の実をゲットできたのですわね……」
「朱乃、イッセーの様子は?」
祐斗は全員が無事に帰ってきたことに笑みを浮かべ小猫達を迎えいれる。朱乃も涙を流して安堵したがリアスはイッセーの様子を彼女に確認した。
「とても危険な状態らしいですわ……わたくしも側にいたかったのですが邪魔になってしまうので部屋の外で待機しておくことしかできませんの……」
「ッ!イッセー先輩!!」
「小猫ちゃん!?」
イッセーが危険な状態と聞いた小猫は祐斗が止める間もなく部屋に駆け込んだ。
「何だ!今こっちは忙しい……って小猫か!ということは海鮮の実と四季の食材をゲットできたんだな!」
急に入ってきた人物に与作が怒鳴ろうとするが小猫だと気が付くと良いタイミングと言わんばかりの笑みを浮かべた。
「イッセー先輩の容体は?」
「アーシアの嬢ちゃんも頑張っているが後30分が限界だろう」
「じゃあ急いで調理しないと!黒歌さん、お願い!」
「了解にゃ!白音、貴方も手伝って!」
「はい!」
小猫の問いに与作は後30分が限界だと話した、外は明るくなり太陽も出てきていた、完全に空に上がるまで恐らく後30分なのだろう。
それを聞いたイリナは黒歌に調理をお願いすると黒歌は任せろと頷き小猫に手伝うように話す、それを見た小猫は当然と強く頷いた。
調理場は与作の診療所にはないのでライフのホテルに向かった。鉄平によって予め話を聞いていたホテルの支配人は快く調理場を貸してくれた。そして小猫と黒歌は協力して調理を行っていった。
そして25分ほどで調理を終えた二人は急いでイッセーの元に料理を運んだ。この時点で3分使ったのでタイムリミットは後2分だ。
「イッセー先輩……」
イッセーの体は赤くなっておりまるでマグマのように熱くなっていた。ルフェイのかけたフバーハやアーシアの回復で何とか死ぬのを抑えているがもう持たないだろう。
「イッセー先輩、海鮮の実を持ってきました!」
小猫は料理をスプーンですくいイッセーの口に運ぶが彼は反応しなかった。
「イッセー君がご飯を食べないなんて……!?」
「恐らくそれだけマズイ状態なんだろう。だがもう時間がないよ、何とかして食べさせないと……」
イッセーが美味しい食事を前にしても反応しないことに祐斗が驚く。ココは流石のイッセーも食事がとれないほど危ない状態だと話し急いで海鮮の実を食べさせるように言った。
「じゃあミキサーで液状化させて流し込めば……」
「でも後1分くらいしか時間がない!診療所にはそんな物ないし今からホテルに戻っても間に合わない!」
ゼノヴィアはミキサーで液状化させて流し込むことを提案したがココの言う通り時間がない。
「イッセー先輩は死なせません!あむッ!」
小猫は海鮮の実を口に含むと素早く噛んでイッセーにキスをした。だがイッセーの体は高温になっており容赦なく小猫の唇を焼いていった。
「小猫!?」
リアスは悲鳴を上げたが小猫は一斉逃げることなく口に入れていた海鮮の実をイッセーの口内に流し込んだ。そして手でイッセーの顔を動かしてそれを飲み込ませる。当然イッセーの顔に触れた小猫の手も焼けていくが彼女は構うことなく手を動かした。
イッセーが海鮮の実を飲み込んだのを確認した後、小猫はゆっくりと離れた。
「小猫ちゃん!今回復しますね!」
「私の事は後で良いです……それよりもイッセー先輩は?」
アーシアは小猫に駆け寄り回復しようとするが、小猫はイッセーの方はどうなったと聞いた。全員がイッセーの方に視線を向けると彼は苦しそうに声を上げていた。
「うっ……ううっ……!」
「イッセー君!大丈夫かい!?」
「まさか間に合わなかったんじゃ……!」
イッセーの様子を見て祐斗は狼狽えリアスは間に合わなかったんじゃないのかと最悪の想像をするが……
「イッセー先輩!死んじゃ嫌です!まだ貴方と一緒にいたいんです!だから……だから戻ってきてください……お願いですから……私を置いていかないで……」
小猫はイッセーの手を握って戻ってきてほしいと悲願する。だがこの時さっきまで焼けるように熱かった彼の手がもう熱くないと思ったその時……
「うっめえぇええぇぇぇええええっ!!」
大きな声で叫んだイッセーは起き上がると小猫が持っていた海鮮の実が入った皿を取ってガツガツと食べ始めた。
「エビやアワビ、ウニにマグロ!様々な海の幸が次々と口の中に浮かんでくる!更にそれをマンゴーの甘みや豆板醬の辛み、香辛料のようなスパイスに熟成されたコクが絡み合ってより深い味わいになってやがる!美味すぎて手が止まらねぇ!」
あっという間に皿を空っぽにしてしまったイッセー、だが自分がいま置かれている状況にやっと気が付いて辺りをキョロキョロと見渡す。
「あれ?俺は確か指を再生させようと治療を受けていて……」
「……先輩」
「えっ……?」
「先輩っ!!」
イッセーの様子を最初は固まってみていた小猫だったが彼が無事だったことをゆっくりと理解していった。そして意識が完全に回復すると彼女はイッセーに勢いを付けて飛びついた。
「イッセー!良かった!」
「イッセー君!君が無事で僕も嬉しいよ!」
「イッセー君!ああ……本当に……本当に無事で良かった……」
「イッセーさん!うわーん!イッセーさんが無事で良かったですぅ!」
「師匠!心配かけすぎです!バツとしてナデナデを要求します!」
「イッセー君!もう熱くないんだね!だったらいっぱいぎゅーってしちゃうんだから!」
「流石イッセーだな!私の友がそんなに簡単に死ぬとは思っていなかったぞ!」
「うおぉおっ!?」
小猫に続きリアス、祐斗、朱乃、アーシア、ルフェイ、イリナ、ゼノヴィアもイッセーに飛びついた。全員を支えるイッセーも状況を理解して全員の頭を撫でる。
「そうか、皆のお蔭で俺はこうして生きていられるんだな……ごめんな、迷惑をかけて」
「違いますよ、イッセー先輩。こういう時は……」
「……ああ、そうだな。ごめんじゃなくてありがとうだな。皆、本当にありがとう。そして……ただいま!」
『お帰りなさい!』
イッセーは小猫達に謝罪をしようとするが小猫がそうじゃないと話す、それを聞いたイッセーは自分の間違いに気が付いて謝罪ではなく礼を言う。そして最後にただいまと言うと小猫達は満面の笑みでおかえりと答えた。
―――――――――
――――――
―――
「そうか、ゾンゲやティナも協力してくれたんだな。ありがとう」
「がっはっは!まあお前はダチだからな!このくらいはいいってことよ!」
「アンタは意地汚さが偶然役立っただけでしょうが。まああたしも人の事は言えないけど……」
ゾンゲは高らかに笑うがそんな彼をティナが突っ込んだ。まあ実際にゾンゲの機転が無ければマンゴーカリンの花が咲くことはなかったのでティナは内心よくやったとゾンゲを褒めていた。
「ココ兄とサニ―兄、リン姉にも迷惑かけたな。皆を助けてくれてありがとう」
「いや、僕達もリアス君達に助けられたよ。少なくとも僕とサニーだけじゃ君を助けられなかったと思う」
「まさにお前とリーア達の友情が生んだ奇跡だし!マジ美しい友情に感謝しろよ、イッセー!」
「うんうん、リアスちゃん達も強くなったよね。もう美食屋として働いてもいいかもだし」
イッセーはココ達にもお礼を言うがココ、サニー、リンはリアス達に対するそれぞれの評価を話した。イリナとゼノヴィアはこのメンバーに入ったばかりなのでまだ不安はあるが初期からいる小猫、リアス、祐斗、朱乃はもう一人で活動させても問題ないのではないかという程だ。
「イッセー、お前自分の手がどうなったか確認したか?」
「おっ、そう言えば俺の手は……」
与作の指摘にイッセーは生き残れた喜びで若干忘れていた己の手を確認する。するとそこにはトミーロッドとの戦いで失われたはずの指が元通りになっていた手があった。
「な、治ってるな!俺の指が元通りに!」
「やったー!」
「おめでとう!イッセー君!」
指が元通りになったことに喜ぶイッセーとオカルト研究部達、漸く全員が無事に回復をすることが出来た事にイッセー達は大いに喜んだ。
「イッセー先輩の手……やっぱり暖かくて優しい手です」
小猫は治ったイッセーの手を両手で包み込むように握る。そして幸せそうに頬ずりをした。
「あーっ!小猫ちゃんだけズルイよ!」
「私もイッセーさんの手を握りたいですー!」
「わたくしにも譲ってくださいまし!ずっと触れ合えなかったのですから!」
「駄目です!今は私がイッセー先輩の手を堪能するんです!」
「いたた!?引っ張らないでくれ!」
イリナ、アーシア、朱乃のイッセーラヴァーズも負けじとイッセーの手に触れようとするが小猫が必至でガードする。だが腕を引っ張られるイッセーは病み上がりな事もあって流石に痛いと言うがヒートアップした4人には聞こえないようだ。
「にゃん♪」
だがそこに黒歌がスルリと音もなく乱入してイッセーの手を小猫から離した。そしてイッセーの頭を自身の豊満な胸に埋めると庇うように小猫達に立ちふさがった。
「こーら。イッセーは病み上がりなんだよ?嬉しいのは分かるけど暴走したら駄目にゃん。皆が落ち着くまで私がイッセーを守ってあげるね」
「うぐぐ……」
「あーっ!ズルイです!姉さま!」
「ふふんっ♪」
それを見た小猫とイリナはうがーっと怒りアーシアは涙目に、朱乃はあらあらと笑みを浮かべているが巨乳、黒髪、お姉さん属性と自分と被りまくっている黒歌に脅威を感じていた。
「……何だかあの光景を見ていると戻ってきたって感じがするわね」
「そうですね」
「でもそろそろ止めないとね……貴方たち、いい加減にしなさい!」
ギャーギャーと騒がしくなる診療所、だがそんな光景を見たリアスは日常に帰ってこれたと言い祐斗も同意する。だが眷属の王としてこれ以上騒がしくされると与作に迷惑なのでいつものように小猫達を止めに向かった。
―――――――――
――――――
―――
「あ~、良い気持ちだ……」
その後イッセー達は与作の提案で風呂に向かう事になった。何せイッセーは血まみれ、リアス達もボロボロで汚れていたからだ。彼らは再生屋専用の温泉鮫で疲れを癒していた。かなりの大型なので全員で入っても余裕がある、まあ全員と言ってもゾンゲ達はいない、彼らは食事をしに向かったからだ。
「何だか傷の治りが早くなった気がするよ」
「うむ、更に疲労も取れていくな」
「この温泉鮫の湯は傷の回復を早めてくれるらしいぞ。更に湯の中にいるドクターフィッシュは疲れや疲労を食う希少種だ。そのダブル効果でそうなってるんだろうな」
「はうぅ……たまにはこうやって回復してもらうのもいいです……」
祐斗とゼノヴィアは体の傷や疲れが取れていく事に疑問を感じていたがイッセーが説明をする。イッセーのそばにいたアーシアは普段は自分が回復する側だが今は存分に癒してもらっているようだ。
本来ならアーシアが皆の傷を回復するのだが今回はイッセーの延命治療の為フルで神器の力を使ったので流石にリアス達まで回復するのは無理だった。その為ここの温泉鮫を紹介してもらったのだ。
「でもここって再生屋専用なのね。一般公開されたら更に人が増えると思うけど……」
「しょうがないさ、この温泉鮫も中にいるドクターフィッシュもここにいるモノしか見つかっていないからな。もっと数が見つかればイケると思うが現状じゃ無理だな」
ティナはこの温泉鮫は一般公開されていたらもっと人が来るんじゃないのかと言うがイッセーはこの温泉鮫とドクターフィッシュは希少な為今は無理だと話した。
「でも再生屋専用って事はここは再生屋に頻繁に使われているの?」
「ああ、再生屋は食材の再生を目的としているが食材を乱獲する犯罪者とも戦ったりするし、絶滅しかけている猛獣を保護するために危険区域に向かう事も多い。ある意味美食屋よりも忙しいんじゃないのか?」
「再生屋も大変ね……」
イッセーの話を聞いたリアスは再生屋の苦労を垣間見た気がした。
生物を保護するために殺さないように手加減したり犯罪者たちと戦ったりと再生屋は忙しいモノだ、何せ過酷な割には収入に見合っていないこともあるし唯稼ぐだけならまだ美食屋の方が楽というのも人が少ない要因だろう。
与作や鉄平のような実力があればまだいいかもしれないが再生屋として半人前の者は怪我もするし自分で治せないこともある。食材を守るというある意味では美食屋以上の価値を秘めた再生屋、そんな彼らが長生きできるようにライフは優先してこの温泉を使ってもらっているのだ。
「そんな温泉を使ってもいいと言ってくれた与作さんや使わせてくれた再生屋の方々は良い人ですね」
「そうだな、彼らに感謝しながら傷を癒すとしよう」
ルフェイの言葉にイッセーも頷き全員で再生屋に感謝した。
「さてと、そろそろ上がるかな」
「あら、もう少し温泉を堪能していきませんこと?」
「いやぁ、少し腹減っちゃって……」
「もう少しだけいいじゃありませんか、わたくしはイッセー君とそんなにイチャイチャしていませんのよ?」
「あ、朱乃さん!?」
温泉鮫から出ようとしたイッセーを朱乃が引き留めた。湯着を着ているとはいえ朱乃の豊満な胸は凄まじいモノでイッセーの右腕を包み込み誘惑してくる。イッセーは顔を赤くして動きを止めてしまった。
「朱乃さんばかりズルイ!私だってイッセー君とイチャイチャしたい!」
「イリナ!?」
するとイリナも負けじとイッセーの左腕を自分の胸に挟み込んだ。昔は男の子みたいだったイリナが今ではこんな美少女に成長したことに未だ慣れないイッセーはイリナの積極的な行動に更に慌ててしまう。
「じゃあ背中は私が貰っちゃうね♪」
「おうっ!?」
今度は黒歌がイッセーの背中に抱き着いてきた。イッセーの背中に朱乃に匹敵する黒歌の胸がこれでもかと押し当てられ彼の理性をガリガリと削っていった。
「ここは譲れません!」
「こ、小猫ちゃん……!膝の上はちょっと……」
小猫も負けじとイッセーの膝の上に座るがイッセーは出来ればそれは止めてほしかった。なぜなら彼も男だからだ。
「駄目ですか……?」
「うぐっ……」
だが小猫の悲しそうな上目遣いに簡単に落ちてしまった。恐らくイッセーは大抵の事は小猫の上目遣いで許してしまうだろう。
結局膝に座ることを許してしまったイッセー、だが小猫のお尻は予想以上に柔らかく更にイッセーの理性を削っていった。
(普段から膝の上に座らせてるけど流石にこれは……!)
服を着ている状態と比べると更に小猫のお尻の感触が伝わってしまう。イッセーは心を鬼にして断るべきだったと反省した。
「小猫ちゃん、やっぱり降りて……」
「嫌です。絶対に動きません」
小猫は体の向きを変えるとイッセーにしがみついた。それによって最近成長しつつある小猫っぱいもイッセーに押し当てられることになった。
(ヤバイヤバイ!これ以上何かされたら俺のウェルシュ・ドラゴンがBoostしちまう!)
『俺の能力を隠語みたいな使い方するな!』
頭の中でドライグに突っ込まれるイッセーだったがそれに応える余裕はイッセーには無かった。
「師匠!私のご褒美のナデナデがまだですよ!」
「いや、今そんなこと言われてもだな……」
「むー!なら手だけ勝手に借りちゃいますね!」
ルフェイはイッセーの手を掴むと自分の頭に手を乗せてセルフナデナデをし始めた。弟子の可愛らしい行動にほっこりするイッセーだったがもう片方の手にも誰かの手の感触を感じて振り返る、するとそこにいたのはアーシアだった。
「アーシア、どうしたんだ?」
「あの、私もナデナデしてもらってもいいですか?」
「応、いいぜ」
「それでは……」
アーシアはイッセーの手をギュッと握って移動させていく。
(アーシアも撫でて欲しかったのか、なら存分に撫でてやらないとな)
このまま頭まで移動させるんだろうなぁとアーシアのセルフナデナデを思い浮かべほっこりするイッセー、だがイッセーの手が触れたのは頭ではなくなにか柔らかい物体だった。
「イッセーさん、いっぱいナデナデしてくださいね……んっ」
(いやなんでだよっ!?)
アーシアがイッセーの手に触れさせたのは頭ではなく胸だった。朱乃や黒歌と比べるとまだ小さいがそれでも揉めるほどには大きな彼女の胸に押し当てられていた。
「アーシア!?何をしているんだ!」
「だ、だって……私もイッセーさんとラブラブしたくて……えへへ、どうですか?」
「最高……じゃなくて!」
思わず本音が出てしまったイッセーだが何とか手を胸から離そうとする。だがアーシアはギュッと手を掴んで離さないようにしてきた。イッセーの力なら余裕で引き離せるが女の子たちに引っ付かれているため怪我をさせないようにセーブしているのでそれは無理だろう。
「あらあら、アーシアちゃんも大胆ですわね」
「私も負けていられないね!」
「もーっと強くくっ付いちゃうにゃん♪」
アーシアの大胆な行動を見た朱乃、イリナ、黒歌は更に強くイッセーに密着する。
「イッセー先輩の乳首……んっ……♡」
「小猫ちゃん!俺の乳首にキスするのやめて!」
小猫も大胆な行動に出てきた事にイッセーは本当に拙いと思っていた。先ほどから鋼の精神で抑え込んでいた己のウェルシュ・ドラゴンが今まさにBoostしかねているからだ。
「リ、リアスさん!祐斗!ティナ!助け……」
「イッセー、私ちょっとのぼせてきたから先に上がるわね」
「ごめんねイッセー君……僕はそんなギラギラした目をした皆に勝てるとは思えないんだ」
「お邪魔虫は去るから皆ごゆっくりー♪」
『はーい♡』
(……裏切られた)
イッセーはリアス達に救いの手を求めたがリアスは突っ込むのに疲れたのかスルーして上がった。祐斗も申し訳なさそうにしていたが結局助けてくれずに去っていった。最後に上がったティナの言葉に小猫達は元気に返してイッセーは絶望していた。
「おい、イリナ。少し落ち着いたらどうなんだ。イッセーが困っているじゃないか」
「ゼノヴィア!」
だが最後に残ったゼノヴィアがイッセーに救いの手を差し伸べてくれた。
(ゼノヴィア!お前は最高のダチ公だ!)
イッセーは心の中でゼノヴィアに感謝した。ゼノヴィアはイッセーの腕にくっ付いているイリナを離そうとグイグイッと引っ張るがイリナは抵抗する。
「やだやだー!イッセー君と離れたくないのー!」
「我儘を言うな、イリナ。お前もエクソシストとしてだな……」
イリナに小言を言おうとするゼノヴィア、だがイリナが予想以上に抵抗する為足を滑らせてしまった。
「えっ……」
「ゼノヴィア!」
そのまま倒れるかと思ったが素早く動いたイッセーがゼノヴィアを受け止めようとする。だが小猫達を怪我させないように無理な体制で動いたため踏ん張りが取れずゼノヴィアごと倒れてしまった。
「イッセーくん!ゼノヴィア!大丈夫!?」
バシャンと水柱を立てて倒れた二人をイリナが心配する、だが湯気が晴れて二人の姿が見えた時イリナは驚愕した。
「んなっ!?」
それは倒れたイッセーにゼノヴィアが覆いかぶさるように抱き着いていてしかも唇が触れ合っていた。更にイッセーの両手はゼノヴィアの胸を鷲掴みにしている始末だ。二人は数秒は状況が理解できていなかったが自分たちの状況を自覚すると凄い勢いで離れた。
「す、済まないイッセー!」
「い、いや……気にしていないさ。怪我はないか、ゼノヴィア?」
「ああ、私は平気だがその……」
「えっと……」
気まずそうに会話する二人、だがイッセーもゼノヴィアも顔を真っ赤にしてモジモジとしているので何とも言えない空気が二人の間に生まれていた。そう、それはまるで親友だと思っていた異性とひょんな事でうっかりキスをしたような初々しい空気が……
「……なにコレ?」
そしてイッセーとゼノヴィア以外のメンバーはこの甘ったるい空気に何も言えずいるながそう呟くのだった……
―――――――――
――――――
―――
「おう、風呂はどうだった……ってどうしたんだ?なんか様子が変だぞ?」
「い、いや何でもないです……」
その後風呂を上がったイッセー達だったがイッセーとゼノヴィアは未だに気まずそうにしており事情を知らない与作が首を傾げる。先に上がったリアス、祐斗、ティナは小猫達のテンションの低さに同じように首を傾げていた。
「どうやら上手くいったようじゃな」
「節乃お婆ちゃん!?」
そこに節乃が姿を見せてイッセーが驚く。帰ったはずの節乃が何故ここにいるのだろうか?
「あたしゃイッセー達を迎えに来たんじゃよ」
「迎え……ですか?」
「うんにゃ。回復祝いの料理も作っておいたじょ」
「マジで!?じゃあ皆で行こうぜ!」
節乃の答えにアーシアがそう返す、どうやら節乃はイッセー達を迎えに来てくれたようだ。飯があると聞いたイッセーはテンションを上げて早く行こうと提案する。
「俺と鉄平は悪いが行けねえな。この後もやることが山ほどある」
「えぇ!?与作さん来ないのか!?一緒に飯を食いたかったんだけど」
「悪いな、また今度付き合わせてもらうぜ」
(あれ?俺もいけないことにされてるんだけど聞いてないぞ?)
与作は行けないと知ったイッセーが残念そうな顔をする。だが鉄平は行く気だったのか聞いていないとショックを受けていた。
「与作さん、鉄平さん。お二人がいなければ私の眷属は死んでいました。本当にありがとうございます」
「礼なんていいさ。俺は再生屋としてするべきことをしたまでだ」
「与作さん……」
お礼を言うリアスに当然の事を下までだと返す与作。そんな彼の漢らしい姿にリアス達は感銘を受けた。
そして与作、鉄平に礼を何度も言うオカルト研究部は名残惜しそうにリムジンクラゲに乗り込んだ。ただサニーだけは与作に用事があるらしくライフに残るそうだ。
「与作さん、鉄平!本当にありがとうな!」
「どうかお元気で!」
「応っ!お前らも元気でな!もう体の一部を無くすんじゃねぇぞ!」
そしてイッセー達を乗せたリムジンクラゲは与作たちに見送られてライフを後にした。
余談だがイッセーはゾンゲを探したが姿が見えなかったので仕方なく彼らを置いていった。実際は無銭飲食をしたゾンゲが警察に連れて行かれたので会えなかったのだがイッセー達はそんな事を知る由は無かった。
―――――――――
――――――
―――
「それじゃ祐斗と朱乃さん、そして俺の復活を祝ってカンパーイ!」
『カンパーイ!』
ライフを発ったイッセー達はリムジンクラゲの中で節乃の作った料理を堪能していた。様々な苦労を乗り越えて食べる食事はとても美味しく感じリアスですら普段の3倍は食べていた。
「そうだ、皆に見せたいものがあるんだ」
「見せたいものですか?」
そんな中イッセーがみんなに見せたいものがあると話して小猫がなんだろうと首を傾げる。イッセーは懐から小瓶を取り出した。
「コレは与作さんから貰った余ったセンチュリースープだ。一口分だけ残ってるぜ」
「えっ!センチュリースープ!?」
イッセーが取り出した小瓶に入っているのは今回の目的だったセンチュリースープだった。祐斗と朱乃の治療に使ったが一口分は余ったようだ。
「イッセー君!私それ飲みたい!」
「わ、私も飲みたいですわ!」
「僕も正直飲んでみたいかな……」
「私も私もー!」
小瓶から漂うセンチュリースープの香りをかいたイッセーと節乃と黒歌以外の全員が飲みたいと言う欲求に支配されてイッセーに詰め寄った。アーシアやリアスすらそうなってしまうのでそれ程センチュリースープは美味いのだろう。
「まあ待てって」
そんなメンバー達をイッセーは頭を軽くパンッと叩いて正気に戻した。
「皆の気持ちはわかるぜ、俺も最初そうなったからな」
もし鉄平が止めなければイッセーもスープを奪ってしまう所だったらしい。
「それでセンチュリースープは後一口分しかない。このままじゃ一人しか味を楽しめない、それじゃ不公平だ」
「でももうセンチュリースープはコレしかありませんよ」
イッセーは一人しか味わえないのは駄目だと言うが小猫の言う通りセンチュリースープはもう生まれない。節乃のセンチュリースープは未だ完成しておらず本当のセンチュリースープはこの一口分しかないのだ。
「なら作ればいいんだ」
「作るって……イッセー先輩がですか?」
「まさか。俺はあくまで美食屋だ、センチュリースープを作れるほどの腕も才能もない」
「じゃあこの中だと姉さまでしょうか?確かにそれなら……」
「君に作ってほしいんだ。小猫ちゃん」
「……えっ?」
無いのなら作れば良いと話すイッセー、小猫は最初はイッセーが作るのかと思ったがイッセーは無理だと話す。ならこの中で節乃以外に料理の腕がある黒歌に頼むのだろうのが普通だ、彼女はそう思っていた。
だが続けて言ったイッセーの発言に小猫は固まってしまった。
「せ、先輩……今なんて言いましたか?」
「小猫ちゃんにセンチュリースープを作ってほしいと言ったんだ」
「なっ……なんでですかー!?」
まさか自分が作ってほしいと言われるなんて夢にも思っていなかった小猫は大いに驚いた。それはリアス達も同じで何故っ!?と言わんばかりに驚いた。
「イッセー!?小猫は料理人じゃないのよ?普通は黒歌に頼むものじゃないの!?」
「……ふふっ、やっぱりイッセーは白音を選んだね。まあ話を聞いていたらそれも頷けるけど」
「黒歌?」
リアスは料理人でない小猫にセンチュリースープを作るように頼んだイッセーにそう言った。彼女の言う通り小猫は料理は出来ても料理人ではない、実質節乃の弟子である黒歌の方がセンチュリースープを作れる可能性は高いと思うのは当然だ。
だが黒歌は小猫が選ばれると思っていたと答えた。リアス達は首を傾げたがイッセーが説明する。
「鉄平がグルメショーウインドーを破壊した際に出てきたスープの一滴、それは真っ直ぐに小猫ちゃんに落ちてきた。つまりスープが最後に選んだのは小猫ちゃんなんだ」
「スープが?」
「前にお婆ちゃんが言っていた食材が人を選ぶっていう言葉。俺もその意味が全てわかった訳じゃないんだけど、あの時の光景を見てセンチュリースープは小猫ちゃんを選んだと思ったんだ」
「私もその話をイッセーに聞いて間違いなくスープは白音を選んだと確信したにゃん。多分私が飲んでもスープは完成できないよ、選ばれてないからね」
イッセーはスープが選んだのは小猫だと話して黒歌もそれに同意する。
「黒歌さんでは駄目なの?」
「うん、勿論技術や経験も大事だけど一番重要なのは食材に選ばれるかどうかだからね。それが無いと本当に完成させることは出来ないんだ」
「うむむ、やはり私にはよくわからないな……」
イリナがそう聞くと黒歌は食材に選ばれるのが大事だと話す。ゼノヴィアはその言葉の意味が分からないようだがその意味を正しく理解しているのは節乃と黒歌だけだろう。
「でもどうして私なんですか?いくら選ばれたと言っても私には姉さまのような腕は無いのに……」
「そりゃ最初から腕のいい料理人がいるわけないさ。でも俺は小猫ちゃんには凄い才能があると思うんだ」
「私に才能が……?」
それでもやはり自分が選ばれたことに納得がいかない小猫、彼女は自分にはセンチュリースープを作る腕前も経験もないと話す。だがイッセーは最初は誰だってそんなものだと言いつつ小猫には料理人の才能があると話して小猫が首を傾げる。
「小猫ちゃん、アーシア、朱乃さん、リアスさん、祐斗にはこの世界の食材の調理の仕方を教えてきたけど小猫ちゃんは覚えるのがダントツで早いんだ。時には俺が何も言わなくても正しい調理をしていたこともあったしその頃から俺は小猫ちゃんに目を付けていたんだ」
「僕も君には才能があると思う、フグ鯨を捕獲する際小猫君に調理してもらったがその包丁さばきには思わず目を見張ったよ」
「ココさんも私に才能があると思ってくれているんですか?」
「うん、占うまでもなくそう思っている」
イッセーが言った5人は料理が出来るのでグルメ界の食材の調理の仕方を教える事があるのだが、小猫は最も早く覚えてしまう優等生でしまいには自分が教えなくても無意識に正しい調理をしていることもあるそうだ。
そんなイッセーの言葉にココも頷いた。彼のアドバイスが的確なのもあったがそれだけではフグ鯨の毒袋を正しく処理は出来ない、小猫の隠れた才能はその頃から発揮されていたのだろう。
「俺は君ならセンチュリースープを完成させてくれると信じてるよ。何年、何十年かかっても俺は待ち続ける。どうかな?」
「……イッセー先輩は黒歌姉さまよりも私を選んでくれるんですか?」
「ああ、俺は君を一番信じてるからな」
小猫はイッセーの目をジッと見つめる。そこには強い眼差しで自分を映すイッセーの瞳が見えた。それを見た小猫は心から自分を信じてくれていると分かった。
「……私、思っていました。節乃さんや姉さまみたいに美味しい料理を作って先輩に食べてほしいって。でもわたしなんかにできる訳ないとも思っていたんです。でもイッセー先輩や皆が信じてくれるのなら……私、やってみたいです!」
小猫は力強く自分がセンチュリースープを作りたいと答えた。それを聞いたイッセー達は全員が頷いてサムズアップをした。
「小猫ちゃんならできるさ!俺達にできることなら何でも協力するからな!」
「なら技術は私が教えてあげるよ。分からないことがあったら何でも聞いてね」
「はい、お願いしますね。姉さま」
こうして小猫がセンチュリースープを作る事になった。何年かかるか分からない、だがそれでもここにいるメンバーは小猫なら必ずやってくれるだろうと信じていた。
後書き
リアスよ。漸く皆が無事に復活することが出来たわね。長かった旅も終わったし残りの休日はのんびりと過ごしたいわね。
でもその前に一龍さんのところに行ってテリーとオブを迎えに行かないといけないわね。あの子達とは長い間離れ離れだったけど元気にしているかしら?
ということで次回は一龍さんの元に行ってそこからは久しぶりの日常回に入るわね。……あっ!宿題として出されていた課題も手つかずだったわ……のんびりする暇はないかもしれないわね。
次回第71話『忙しい日常!イッセーと小猫、初めての……』で会いましょうね。
ページ上へ戻る