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戦国異伝供書

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第百十一話 政宗の初陣その十一

「あの御仁はです」
「うつけどころか」
「その逆で」
「天下人で、じゃな」
「そして」
 それと共にというのだ。
「あのうつけは実は違い」
「傾きか」
「はい」 
 これだというのだ。
「それで、です」
「一つの道か」
「それもまた」
 傾きもというのだ。
「それを歩まれているだけです、そしてそれがしも」
「傾くか」
「そうします」
「そうか、しかしお主の恰好は」
「織田殿とはですな」
「違うな」
「傾くといいましても」
 それでもというのだ。
「それも人それぞれとです」
「思うか」
「はい、ですから」
 それでというのだ。
「それがしは織田殿とが違う」
「そうした傾きをしていくか」
「そのつもりです」
 まさにというのだ。
「そう考えています」
「そうか」
「はい、そして傾きでもです」
「織田殿をであるな」
「超えます」
 その様にするというのだ。
「必ず」
「ではな」
「その覚悟で」
 それでというのだ。
「進んでいきまする」
「ではな」
 輝宗も頷いた、そうしてだった。
 政宗は父から次第に政の実権を預けられる様になりそちらでも楽市楽座に関所の廃止そして開墾を積極的に行い国を治めていった、そして。
 遂に家督を譲られたが政宗はそのことに喜ぶことなく愛姫に対して目を鋭くさせそのうえで話した。
「これからじゃ」
「はじまりですか」
「むしろな」
 そうだというのだ。
「家督を譲られて喜ぶのではなくな」
「これからですか」
「気を引き締めてな」
 そうしてというのだ。
「政を行い」
「そして戦も」
「行っていく」
 その様にしていくというのだ。
「これからもな」
「そして私は」
「家のことを頼む」
 そちらのことをというのだ。
「よいな」
「わかりました」
 愛姫は夫の言葉に笑みを浮かべて応えた。
「それではその様に」
「宜しく頼むぞ」
「はい、家を守るのは妻に努め」
「だからな」
 それゆえにというのだ。
「家はな」
「私がですね」
「頼む」
 こう言うのだった。 
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