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おっちょこちょいのかよちゃん

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78 隣人の高校生

 
前書き
《前回》
 三河口達は赤軍によって荒らされた学校の後始末を行う。かよ子達は帰宅中、逮捕したはずの西川と山田が赤軍の長によって逃がされたと石松から聞いて落胆する。一方、藤木は笹山が自分の気持ちに気付かれたが、彼女から文化祭を楽しめたと言われ、嬉しく感じる。そして三河口は濃藤に北勢田、奏子と帰る途中、エレーヌと遭遇し、エレーヌは飛行能力や防御をより強める事の出来る異世界の羽衣を奏子に渡して平和の異世界へと帰って行くのであった!!

 今回からは何かと1話から登場しているあの高校生の過去に迫ります。なお、三河口健のモデルは作者・飛騨川自身です。 

 
 秋が深まり涼しくなった。かよ子は高校の文化祭での事を思い出していた。隣人のおばさんの甥・三河口健の兄が現れ、彼を人に迷惑かけているという理由で暴行していた事、さらには日本赤軍がテロを引き起こしたという事・・・。
(赤軍の攻撃もそうだけど、そういえばあのお兄ちゃんはなんでおばさんの家にいるんだっけ・・・?お兄ちゃんのお父さんとお母さんは・・・?)
 かよ子は母に聞いてみる。
「お母さん・・・」
「え、なあに?」
「隣のおばさんちのお兄ちゃんの事なんだけど・・・」
「ああ、健君の事ね」
「あのお兄ちゃん、どうして隣のおばさんの家に住んでるんだっけ?お兄ちゃんのお父さんとお母さんってどうしてるの?」
「ああ、そうね、健君が来たのまだかよ子が幼稚園に行ってた頃だからね。そろそろ話してあげてもいいわね。お隣のおばさんにも言っておくわ」
「うん、ありがとう」
 かよ子は礼をした。

 まき子は隣の家で奈美子に相談する。
「奈美子さん、うちの子が健君がなんで清水に来たか知りたがってたんだけど、健君に話してあげてもいいかしら?」
「健ちゃんの事?うん、健ちゃんにも言っとくよ」
 奈美子は承諾した。

 その頃、三河口は部屋で横になっていた。
「健ちゃん」
 叔母が入ってきた。
「はい」
「隣の山田さんとこのかよちゃんが健ちゃんがウチに来た理由や経緯を知りたがってたって聞いたけど、かよちゃんに話してあげてもいいかな?」
「あ、はい、自分の口で言いますよ。そうだ、この情報は他の皆にも知ってもらう必要があるかもしれませんね。かよちゃんの友達にも教えとこうかなと思うんですが」
「うん、いいよ。そこは健ちゃんに任せるよ」
「はい」

 朝、かよ子は丁度家を出たところ。三河口も家を出た所だった。
「やあ、かよちゃん。おはよう」
「あ、三河口のお兄ちゃん・・・」
「おばさんから聞いたよ。俺の昔話聞きたいんだってね」
「あ、うん・・・」
「かよちゃん達にももっと詳しく教えてあげなきゃいけない時が来ると思っていたんだよ」
「そうなんだ・・・」
「杉山君や大野君、いや、組織『次郎長』の皆や冬田さんや長山君とかも連れて来た方がいいよ。俺が住んでるおばさんちに呼んでくれるかな?」
「うん!」

 学校でかよ子は大野と杉山に話しかける。
「あ、あの、杉山君、大野君・・・」
「おう、山田あ。どうかしたのか?」
「実は私の家の隣に住んでる三河口ってお兄ちゃんが清水に来た理由を杉山君達に話したいって言ってたんだ・・・」
「ああ、あの兄ちゃんか・・・。行ってみるか、大野!」
「ああ、そういえば次郎長もあの三河口って兄ちゃんには三つの不思議な能力(ちから)を全部持っているって石松が言ってたよな。俺も気になってきたぜ」
「うん!ありがとう!あと『次郎長』の皆も知った方がいいって言ってたからブー太郎とまるちゃんも誘ってくれるかな?」
「ああ、いいぜ」
 かよ子は次に長山を誘った。
「あの、長山君」
「なんだい?」
「私の隣の家に住んでるお兄ちゃんが清水(ここ)に来た話を聞かせたいって言ってたんだ。私も聞いてみたくなったんだけど、長山君もどうかな?」
「ああ、いいよ。そういえば文化祭の時、三河口さんのお兄さんが来て言いがかりつけて乱暴してたよね。それももしかしたら関係があるかもしれないね」
「え、ああ、そうだね」
 次にかよ子は冬田を誘う。
「冬田さん、私の隣の家に住んでるお兄ちゃんが清水に来た理由を聞かせたいって言ってたけど冬田さんも行く?」
「え、私があ?私は別にい・・・」
 冬田は渋った。
「大野君も来るよ」
「ええっ、大野君もお!?行くわあ!!」
 大野の名を出されるとつい人が変わる冬田だった。

 かよ子は自分の家に帰ると、すぐ隣の家の門へと行く。
「ああ、かよちゃん」
 三河口が丁度帰ってきたところだった。菓子や飲み物を持ってきていた。
「今日の事、皆に話したら来てくれるって」
「そうか、ありがとう。俺も友人達も呼んだよ」
「そうなの?」
「うん、すみ子ちゃん達も来ると思うよ」
「うん、わかった、楽しみだね」

 やがて、長山や冬田、組織「次郎長」が来て、やがて濃藤、北勢田、奏子、組織「義元」、そしてたまえも来た。たまえが来た理由としてはまる子が親友だから誘ったのだろう。皆は羽柴家に入って三河口が間借りしている部屋では狭いと思い、居間に集まった。
「皆、集まったね。それじゃ」
 三河口は用意した飲み物と菓子を皆に振舞った。
「それじゃ、今日は皆来てくれてありがとう。俺の昔話を聞きにね」
「なあ、三河口さん」
 杉山が呼ぶ。
「俺達、石松から聞いているんだが、不思議な能力は三種類あって、あんたはその全てを持っているんだってな」
「うん、もちろんだよ。だが、文化祭の時には兄貴に対しては発動する事ができなかった。それは俺は異世界の敵とか、日本赤軍とかいった『本当の敵』にしか使えなくなったんだ。でも、小学生の頃、俺が清水に来る前の事だな、普通の人にも平然と使って人を傷つけてきたんだ」
「今のお前はそう見えないがな」
 濃藤が言った。
「うん、ここに来て凶暴な性格を変えようと決めたんだ」
「でも、私は三河口君がそんな風には見えないわ。文化祭の準備も片付けもあんなに頑張ってたんだもん・・・」
「でも、頭の中身も性格も変えなきゃいけないって思ったんだ。だから今の自分がいるんだよ。それじゃ、俺が小学生の頃の話をすべて聞かせよう」
 三河口はジュースを飲んで話を始めた。 
 

 
後書き
次回は・・・
「凶暴な小学生」
 横浜に一人の小学生がいた。その児童は非常に暴力的で、前代未聞の問題児とされていた。しかし、そんな少年を受け入れてくれる人間がいた。それは清水にいる親戚の家だった・・・。 
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