大阪のたんころりん

「お昼の後に食べてるわ」
「全く、どれだけ好きなのよ」
「大好きよ、それでね」
「それで？」
「あとどれ位あるかしら」
「物凄い勢いで減ってるから」
　家族で毎日食べているからだとだ、母は答えた。
「家族三人で。特にあんたがね」
「じゃあもう」
「あれだけあった柿がよ」
　うず高く積まれていて段ボールに入れて家族三人で運んでまでしたがというのだ、この時家の車も使って運んだ。
「もうあと段ボール一個よ、お客さんにも出してあんたの友達が来た時もいつもね」
「柿出してたわね」
「お母さんもお客さん呼ぶこと多いし」
　交友関係が深くてだ、ママ友が多いのだ。
「あんたもよくね」
「大学合格したし余計にね」
「お友達お家に呼ぶこと多いし」
「パジャマパーティーもするし」
「その時も柿出して皆で食べてるから」
　そうしているからというのだ。
「だからね」
「凄い減ったのね」
「そうよ、そのうちのかなりはあんたが食べたわよ」
「そうなのね」
「主食みたいに食べてるし」
　それでというのだ。
「減ったわ、その小さくて華奢な身体の何処に入るのかって思ったら」
「思ったら？」
「胸かしら。あんたまた胸大きくなってない？」
「なってないわよ」
「そうかしら、まあ幸い熟れて柔らかくなるまでに全部食べられそうだし」
「よかったわね」
「ええ、それは何よりよ」
　母は娘に笑顔で答えた。
「本当にね、ただね」
「それでもなのね」
「あんたの柿好きは本当に凄いわね」
　娘のこのことを言わずにはおれなかった、そして実際に言った。
「また別格ね」
「一日何個も食べるから」
「本当にね、じゃあ残りの柿もね」
「全部食べようね」
「そうしましょう、兄さんに話をしたら笑ってたわよ」
「私が柿をあんまり食べるから」
「そうよ、まあ柿は身体にいいからね」
　母もこのことはわかっていた、伊達に実家が柿農家ではない。
「食べていきましょう」
「それじゃあね」
　真由は言いつつまた柿を食べた、その柿は実に美味くてまた一個となった。そうして妖怪から貰った柿を全て食べてしまったのだった。


大阪のたんころりん　　　完


　　　　　　　　　　　　　　　　　２０２０・１０・２８