母の心配
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第五章
「単行本作業の時から」
「あんたも折れないのね」
「漫画家が漫画のことでこだわらないとね」
「どうにもならないっていうのね」
「お姉ちゃんも音楽にそうでしょ」
「それはね」
姉も否定しなかった。
「お仕事だから」
「そうでしょ、まあ今は単行本作業終わったから」
「普通に連絡出来るわね」
「お母さんにね、今日はもうお仕事ないし」
「お母さんに連絡しなさい、自分からね」
姉から妹に言った。
「いいわね」
「そうするわね、じゃあ挙はね」
「しこたま飲むのね」
「そうするわ、ビール好きだし」
「私もよ、ただお父さんビール好きでも」
「お母さん飲まないのね」
「お母さんはパンの耳を齧ってね」
そうしてというのだ。
「牛乳が好きだから」
「そうよね、昔から」
「安くて身体にいいって」
「ビールと串カツの方がよくない?」
「私達はそう思っても」
姉はそのビールをぐいぐい飲みつつ答えた。
「お母さんはそうなのよ、まあ実際その組み合わせもいいでしょ」
「まあね、いけるのよね」
パンの耳と牛乳の組み合わせはというのだ。
「あれはあれで」
「あんたもそれ食べながら漫画描いてるの」
「いや、描いてる時は漫画に集中していて」
「食べないの」
「おやつはね、三度の食事以外はね」
「そうなのね」
「漫画以外目に入らなくなるの」
そうなるというのだ。
「だからね」
「それでなのね、本当にあんた凄い漫画家ね」
「ベルサイユの方みたいに」
「宝塚はまだだからそこまでとは言わないけれど」
それでもとだ、姉は妹に言葉を返した。
「見事よ」
「そうなのね」
「ええ、けれど出来たら単行本作業の時はね」
「お母さんからのメールとかにはっていうのね」
「返事しなさい、いいわね」
「わかったわ、私の欠点ってことね」
「お母さんのかも知れないけれどね、私にも言ってきて五月蠅いから」
姉は貝の串カツを食べつつ本音も出した。
「いいわね」
「その本音がきついわね」
「別にいいでしょ、とにかくそれ位してね」
「忘れるかも知れないけれどわかったわ」
「それじゃあね」
姉は妹に言ってだった。
またビールを飲んだ、この時はこれで終わったが。
後日また妹が単行本作業に入った時に家に来た母のわざわざ持ってきたパンの耳と牛乳を食べながらの愚痴にビールを飲みつつ応えた。
「雅子がまたよ」
「返事しないのね」
「何処にいるのかしら」
「だからお仕事してるからいいでしょ」
「けれど連絡位はね」
「終わったらまた返事が来るからいいでしょ」
「そうだけれどあの娘ももうすぐ結婚するし」
母は心配そうに言った。
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