戦国異伝供書
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第百十話 兄と弟その一
第百十話 兄と弟
政宗は元服してすぐに国の政に加わる様になっていた、その政は迅速かつ的確で家臣達も驚いていた。
「いや、これはです」
「お見事です」
「その様なことをされるとは」
「よく政のことがおわかりですな」
「若君は」
「実はじゃ」
政宗は家臣達に答えた。
「織田殿を手本にしておる」
「尾張のですか」
「かつてうつけ殿と呼ばれた」
「あの御仁ですか」
「今や二百万石を超える大身です」
「そうなられましたな」
「その織田殿のですか」
家臣達も言った。
「政を手本にされていますか」
「そういえば織田殿のご領地はよく治まっていますな」
「悪人はなく」
そしてというのだ。
「田畑も街も整い」
「堤や道も築かれ」
「実によいとのことですな」
「左様ですな」
「織田殿がうつけだと」
政宗は信長のことを話した。
「それは違う」
「今はそう言われていますな」
「この奥羽でも」
「あれはうつけではなくです」
「傾きであると」
「あの御仁はそれじゃ」
うつけではなくというのだ。
「傾いておられるのじゃ」
「都で流行っているという」
「それですな」
「その実は」
「左様ですな」
「じきに上洛されてじゃ」
信長、彼はというのだ。
「そしてじゃ」
「そのうえで、ですか」
「織田殿はですか」
「天下もですか」
「掌握されますか」
「間もなくな」
まさにというのだ。
「何でも公方様が来られたらしいしな」
「都の公方様ですな」
「鎌倉の公方様ではなく」
「あちらの公方様ですな」
「あの方が来られたなら」
それならというのだ。
「もうな」
「はい、もうですな」
「神輿を得た」
「上洛の大義を」
「そうなりましたな」
「だからな」
それでというのだ。
「わしもじゃ」
「織田殿をですか」
「政の手本にされていますか」
「その様にされて」
「政をされていますか」
「田畑を整えな」
そしてというのだ。
「悪人は徹底的に追い罰してな」
「街も整える」
「楽市楽座とし」
「関所もですな」
「なくしな」
そしてというのだ。
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