理解者達
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第二章
「正直校長にも親にもな」
「嫌な思いしてか」
「顔とか見たくないか」
「そうか」
「そんな気分だよ、元々親父とお袋の仕事嫌だったしな」
ヤクザ者とその関係者であることがだ。
「お世辞にもいい親じゃないしな」
「家でもいつもお前殴ったり罵ったりだよな」
「そうなんだよな」
「ああ、普段は何もなくても怒る時はな」
その時はというのだ。
「そうだよ、やっぱりヤクザ屋さんはヤクザ屋さんだな」
「それ息子のお前が言うからな」
「やっぱり事実なんだな」
「ヤクザ屋さんはヤクザ屋さんか」
「そうなんだな」
「ああ、そのことを実感したぜ」
桜井の顔は晴れないままだった、そしてだった。
彼は高校には通っているが憮然としたままだった、一ヶ月程そうして過ごしていたがある日のことだった。
親戚の叔父さん、父の兄から連絡があった。叔父は彼に言ってきた。
「義夫君時間あるか?」
「時間ですか?」
「そうだ、あるか?」
真っ当な会社を経営していて県庁所在地にビルも持っている叔父は彼に聞いてきた。
「それから」
「ありますけれど」
「じゃあ今夜にでもだ」
「今夜ですか」
「うちに来てくれないか」
「叔父さんのところに」
「君に会いたい人がいるんだ」
こう彼に言うのだった。
「それでだ」
「俺にですか」
「いいか?」
「誰ですか?その人」
「会えばわかる、少なくともあいつには話せない」
「親父にはですか」
「あいつは駄目だ」
叔父は桜井の父、自分から見て弟にあたる彼のことはこう言い捨てた。
「昔から馬鹿だったからな」
「札付きの不良で、ですね」
「そして今はヤクザだな」
「幹部だってイキってますよ」
「あいつのことはよく聞いている、だからだ」
「話すことはですか」
「あいつにはない」
一切、そうした言葉だった。
「だから君に話したい、君自身のことだからな」
「俺のことですか」
「だから今夜いいか」
「うちにですね」
「来てくれるか」
「わかりました」
桜井は叔父の言葉に頷いた、そうしてその日の夜は彼は叔父の家に行った。叔父の家は品のいい一軒家でそこに妻と二人で暮らしている。
温厚で丸々とした外見の眼鏡が似合う四十代の男だ、黒い髪は奇麗に整っている。如何にもその筋の者である桜井の両親とは正反対の外見だ。
その彼が優しく温和な外見、性格がそのまま出ている自分の妻と共に桜井を出迎えて家のリビングに案内した、すると。
そこに楚々とした、黒髪を腰の辺りまで伸ばして大きめのやや垂れた奇麗な目とほっそりした頬、白い肌を持つ一五八程の背の桜井と同じ位の年齢と思われる少女がいた。服は白の丈の長いワンピースだ。
その彼女がぺこりと挨拶をして彼に言ってきた。
「うちの犬を助けてくれて有り難うございます」
「犬?」
「はい、うちの小次郎を助けてくれて」
見れば傍に桜井が助けたと思われる犬がいた、濃い茶色の垂れた耳を持っている薄茶色の毛のゴールデンレッドリバーに似た感じの犬だ。まだ子犬である。
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