麗しのヴァンパイア
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第二百八十八話
第二百八十八話 欲望
華奈子は夕食の後部屋に戻って美奈子に言った。
「欲ってあってもいいのね」
「いい欲と悪い欲があるのね」
「お母さんそう言ってたわね」
「ええ、お母さんが言うと」
それならというのだ。
「間違いはないわ」
「そうよね」
「お母さんが言うのなら」
二人共母に全幅の信頼を置いている、それで言うのだ。
「正しいわね」
「絶対にね」
「私もそう思うわ」
美奈子は華奈子に言った。
「どういうことかわからないけれど」
「いい欲と悪い欲がある」
「それはね」
「本当にそうなのかしらって思うけれど」
「お母さんが言うなら」
それならとだ、美奈子はまた言った。
「そうよ」
「いい欲ね」
「そして悪い欲もある」
「いい欲なら持っていい」
それならとだ、華奈子も言った。
「欲もね」
「持っていいってことね」
「ええ、けれど欲は駄目ってね」
「よく言われるわよ」
美奈子はわからないといった顔であった、そしてそれは華奈子も同じでそれで二人で話すのだった。
「それは悪いことって」
「そうも言ってるわね」
「本とかで」
「けれどお母さんが言うし」
「お母さんが言うなら間違いないし」
「実際どうなのか」
「わからないわね」
どうにもというのだ。
「私達にはね」
「まだ」
「本当にね」
「大人になったらわかるかしら」
「お母さんは言ってたけれど」
「どうなのかしら」
「正しいと思うけれど」
「実際はね」
二人で首を傾げながら話した、そうして。
結局この時二人はわからなかった、わかったのは二人が成長してからだった。そして母の言うことが正しいと確信したのだった。
第二百八十八話 完
2020・8・9
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