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ドリトル先生と牛女

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第五幕その九

「私人としてはまともだったしね」
「確かにそうだね」
「菜食主義でお酒も煙草もしなくて」
「女性のお話もないし」
「身内贔屓もしなかったっていうし」
「趣味は読書と音楽鑑賞で」
「しかも仕事人間だったんだ」
 お仕事もちゃんとしていたというのです。
「そんな人だったからね」
「やったことはとんでもないけれど」
「個人としては真面目で」
「別に悪い人じゃない」
「そうだったのね」
「贅沢もしなかったしね」
 独裁者でやりたいことをやれてもです。
「個人としては人種的偏見はかなり強くても」
「真面目で質素で」
「しかも悪いこともしない」
「そんな人だったの」
「いじめとか意地悪もしなかったよ」
 そうだったというのです。
「これといってね」
「何かイメージ違うね」
「処刑見て生肉食べたりね」
「お酒もどんどん飲んで」
「しょっちゅう暴力振るったり」
「そんな感じだったけれど」
「個人としてはそうだったから」
 真面目で清潔で質素だったというのです。
「それで甘いものが好きで」
「チョコレートとか」
「それで虫歯になったりしていた」
「それで苦しんでもいたのね」
「ケーキも好きでね」
 このお菓子もというのです。
「料理人がよく夜もお仕事しているヒトラーに差し入れていたそうだよ」
「へえ、ケーキ好きだったんだ」
「そっちもだったの」
「チョコレートも好きで」
「ケーキもだったの」
「ヒトラーを批判することは当然にしても」 
 その行いを見ればです。
「それでもどういった人か知る」
「そのことは大事だね」
「無闇に否定しないで」
「そうするべきね」
「しっかりと」
「そうだよ、ヒトラーだって人間だった」
 甘いものが好きで虫歯で苦しむ様な。
「そうだったことはね」
「わかっておく」
「それで学ぶことね」
「それが大事ね」
「そうだよ、まあヒトラーは毎日明け方まで仕事をして」
 ヒトラーの生活のお話もしました。
「遅くても九時には起こされて」
「あまり寝てないね」
「明け方から九時って」
「というか殆ど徹夜じゃない」
「毎日そうって」
「働き過ぎよ」
「それでお風呂に入って疲れを癒して」 
 そしてというのです。
「そのうえでね」
「またお仕事ね」
「本当にお仕事ばかりじゃない」
「幾ら真面目でも」
「お仕事ばかりって」
「独裁者は自分に権限を集めるから独裁者だよ」
 自分で何でもするからというのです。
「それでお仕事もね」
「増えるんだね」
「必然的に」
「そうなるんだね」
「独裁者っていうのは」
「そうだよ、だからヒトラーも忙しくて」
 そうなってというのです。
「毎日そこまで働いていたんだ」
「独裁者も大変ね」
「働き詰めなんて」
「毎日そうだって」
「何というか」
「これはスターリンもそうだったから」
 ソ連のこの独裁者もというのです。 
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