ドリトル先生と牛女
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第五幕その三
「幸せなことです」
「では手術が終わりましたら」
「紅茶を飲まれますか」
「手術した後は暫く飲んだり食べたり出来ないですね」
「はい、ですが」
それでもというのです。
「数時間後、僕がお話した時間が過ぎれば」
「その時はですね」
「飲めますので」
先生は今も笑顔でお話しました。
「ご安心下さい」
「わかりました、では」
「今から手術をしましょう」
「宜しくお願いします」
こうして牛女さんの虫歯の手術が行われました、手術が終わると先生は牛女さんに飲んだり食べたり出来る時間をお話して。
そしてです、こうも言いました。
「あと二回位手術します」
「そうですか」
「それで完全に治しますので」
「あと二回の手術で、ですね」
「虫歯は治ります」
完治するというのです。
「ご安心下さい」
「それでは」
「あと二回この時間を置きましょう」
「わかりました」
牛女さんは笑顔で応えてでした。
そうして六甲のお家に戻りました、送ったのは口裂け女さんでした。
その手術の後で、です。先生は動物の皆に大学の研究室で言いました。
「恐縮だよ」
「恐縮って?」
「一体どうしたの?」
「何かあったの?」
「いや、手術をしてね」
それでというのです。
「報酬だけれど二百万なんだ」
「歯の手術一回で?」
「それはまた多いね」
「歯の手術の値段じゃないね」
「ちょっとね」
「妖怪さんには保険はないけれど」
これは人のものだからです、妖怪の世界にはそうしたものはないみたいです。
「幾ら何でもね」
「二百万はだね」
「多過ぎるっていうんだね」
「幾ら何でも」
「多いって言ったけれど」
それでもというのです。
「折角だからってね、けれどあと二回の手術分のお金はね」
「受け取らないんだね」
「もう」
「そうするんだね」
「二百万貰ったら」
それでというのです。
「充分だよ」
「そうなんだね」
「じゃあね」
「お金のことはね」
「いいんだね」
「充分過ぎるって言っても足りないからね」
こう皆に言うのでした。
「だからこれでいいよ」
「先生ってお金には無欲だしね」
「今の生活が出来るだけあればいい」
「そうした人だからね」
「もう充分だね」
「うん、大学教授としてのお給料があるんだよ」
先生にはというのです。
「だったらね」
「もういいよね」
「充分だし」
「それで手術一回で二百万も貰ったら」
「それじゃあね」
「多過ぎるよ、けれどね」
それでもというのです。
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