夫婦の妬み合い
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第二章
「ワンちゃんお家に引き取って」
「そうしてなの」
「それでね」
そのうえでというのだ。
「育てて可愛がったらいいのよ」
「そうなの」
「旦那さんが猫ちゃん可愛がるならね」
それならというのだ。
「あんたはあんたでね」
「可愛がる子を持てばいいのね」
「そう、どうかしら」
「そうね、それじゃあね」
さとこは弥生の言葉に頷いた、そうして彼女は保護犬を引き取ることにした。それは雑種の犬で左右の耳が大きく垂れた白い小さな雌犬だった。
その犬を引き取ってチョコと名付けて可愛がりはじめた、すると夫は妻に眉を顰めさせて言った。
「何かな」
「どうしたの?」
「犬飼うのはいいけれどな」
「可愛いでしょ」
「ああ、そっちの娘もな」
「けれど私が可愛がってるでしょ」
「いや、俺が可愛がってもいいよな」
夫は妻に言った。
「別に」
「けれどあんたミケがいるでしょ」
「ニャーー」
見れば夫は今もミケと一緒にいる、頭の上に乗っているがそのままにしている。妻はその猫も見ながら夫に話した。
「頭の上にいるし」
「ミケも可愛がってだよ」
「チョコもっていうの」
「別にいいだろ」
「あんたワンちゃんも好きなのね」
「両方好きなんだよ」
夫ははっきりと答えた。
「悪いかよ」
「成程ね」
「だからな」
それでというのだ。
「チョコもいいだろ」
「それ言ったら私もよ」
妻も妻で夫に言った。
「私も猫好きなのよ」
「じゃあミケ独占するなっていうのか」
「そうよ、いつもあんたばかりミケ可愛がって」
「ワン」
チョコを抱きつつ言う、チョコは彼女の手の中で大人しくしている。見れば二匹共つぶらで黒目がちの澄んだ目をしている。そのチョコも一声鳴いた。さとこはその声を聞きつつ弘之にさらに言った。
「私だってね」
「ミケ可愛がりたいんだな」
「可愛くていい娘だから」
「それを言ったらチョコもだよ」
「可愛くていい娘だから」
「俺も一緒にいたいんだよ」
こう言うのだった。
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