Fate/magic girl-錬鉄の弓兵と魔法少女-
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。
ページ下へ移動
A's編
第六十一話 転校生と新たな家族
週明けの聖祥小学校の3年1組の朝のホームルーム。
「今日から新しい友達がこのクラスにやってきます」
突然の先生からの連絡に一部のクラスメイトを除き、驚いていた。
ちなみに驚いていない一部は俺やなのは達であり、転校生の事を知っているから驚いていないだけである。
「海外からの留学生さんです。
フェイトさん、どうぞ」
「失礼します」
先生からの言葉に返事をしながら教室に入ってくるフェイト。
その姿に教室がざわめく。
だがそのざわめきもフェイトが海外からの留学生というのと、かわいいといった感じで周りからの反応は悪くない。
しかし先生の横に並ぶが動きがぎこちないな。
結構緊張しているようだ。
「フェイト・テスタロッサ・ハラオウンです。
よろしくお願いします」
名前を言って、一礼し、クラスメイト達から拍手を受けるフェイト。
そんな中、俺やなのはは拍手をしながらも目を丸くしていた。
リンディさんの養子になるのだから当然といえば当然だが、姓はハラオウンになる。
仕事が速いとは思っていたが、フェイトの名前に、こちらの住居先、フェイトの転校先まで決めるとはどれだけ仕事が早いんだ?
まあ、フェイトのためにと言ってリンディさんとプレシアという二人の母親とお姉さん的な存在であるエイミィさんが頑張っているのが容易にイメージできるのだけど。
しかし、テスタロッサ・ハラオウンか。
ハラオウンの子供になっても、テスタロッサをミドルネームで残す辺りフェイトらしい。
さて、朝のホームルームは終わり、授業の合間の休憩時間。
フェイトはクラスによる洗礼を受けていた。
まあ、要するに俺も受けた質問攻めだ。
もっとも
「えと、そ、その」
囲まれて一気に質問をされるのだ。
対応できないのは無理もない。
「フェイトちゃん、人気者」
「だけどこれはちょっとね」
そんな様子を見ていた俺やなのは達だが、この状況はどうかと思う。
まあ、フェイトのような子が転入してきて興味があるのもわからないでもないのだが。
そろそろフォローした方がいいかと思った時
「はいはい。
転入初日の留学生をそんなに揉みくちゃにしないの。
それに質問は順番に」
手を叩き、その場を取り仕切るアリサ。
この分ならフォローは不要かな。
騒ぎながらもアリサのおかげでフェイトも落ち着いて質問に答えを返し始めていた。
しかし
「留学生って言ってたけどどこの国から?」
「前に住んでたところってどんな所?」
「え、えっと……」
この質問にフェイトもどう答えるべきか頭を悩ませている。
そりゃそうだ。
間違ってもミッドとか、時の庭園とか言えるはずもない。
そういうわけで
「俺と同じイギリスだよ」
ここは俺がフォローしておく。
俺の言葉に一瞬目を丸くするフェイトだが
「え? うん。そうイギリスから」
頷いて見せると俺の意図を理解して話をあわせる。
「じゃあ、衛宮君とはイギリスにいるときから知り合い」
「う、うん。色々お世話になったというか」
フェイト、お世話ってなんだ?
確かにマンションにいる時にちょくちょく夕飯を作りにいったりはしていたが
「また衛宮か」
「忌々しい」
「留学生にも既に手を出しているなんて」
「なんて手が早い」
そんな事よりこちらを睨むのはやめてくれ男子諸君。
俺としても久々の学校だ。
平穏に過ごしたいのだが。
そして俺が男子諸君に睨まれている横で
「ねえ、なのはちゃん。
フェイトちゃんってイタリア人じゃ?」
「え!? そ、それは……」
「生まれはイタリアだから間違ってはないよ。
俺と会った時もイギリスに引っ越してきた時だから」
「う、うん。そうそう」
すずかの質問にフェイト以上にあたふたしているなのは。
なのはは俺やフェイトがいない間にアリサやすずか達に一体に何を話したんだか。
そもそもフェイトがイタリア人ってなんでさ。
今日中、遅くても数日中にフェイトの故郷の話とか適当にでっちあげれるように話し合っておこう。
そうしないと話に矛盾がでるな。
それとなのはがフェイトの事をどう話しているのかも
そんなこんなで、いささか騒がしかったが無事に今日も学校が終わり
「じゃあね」
「また明日」
「うん。また明日」
「またね」
「ああ、またな」
アリサとすずかと別れ、俺となのは、フェイトはそのまま俺の家についてくる。
ちなみにすずかの家にバイトを再開するのは今週末から。
忍さん達への挨拶も昨日、済ませている。
「ただいま。そしていらっしゃい」
「「お邪魔します」」
「リビングでくつろいでいてくれ」
「あ、士郎。お願いがあるんだけど」
「ん? どうした?」
「お花もなにも用意してないけど、アリシアのお墓にお参りしたいんだけど」
「ああ、そうだな」
フェイトとなのはと共にアリシアの墓の前で手を合わせる。
「士郎、ありがとう。
アリシアのお墓きれいにしてくれて」
「お礼なんていいさ」
「それでも言いたかったから」
「そうか」
アリシアの墓の前を後にして、フェイトとなのははリビングに、俺は一旦部屋に戻り、私服に着替える。
ここら辺はやはり肉体が子供になり、精神が肉体に引き摺られるといっても元は成人した男。
この半ズボンというのはどうにも落ち着かない。
色が白というのもあるのかもしれないが。
制服から私服に着替え、紅茶の準備をしてリビングに向かう。
「お待たせ。紅茶でよかったか?」
「うん。ありがとう」
三人でのんびりとフェイトの初めての学校の感想を聞きながら、お茶を楽しむ。
そんなのんびりとした時間をしばし過ごしていると
「来たみたいだな」
屋敷の結界に引っかかる二人の反応。
「フェイトちゃん、お出迎えしよう」
「うん」
俺の言葉に玄関に向かうなのはとフェイト。
そんな二人をのんびりと追う俺。
特にフェイトはうれしそうである。
それもそのはず。
結界に引っかかった二人というのが
「こんにちは」
「お邪魔するわね」
リンディさんとプレシアである。
こんな平日にわざわざ二人できたのは意味がある。
「では本日より正式にプレシア・テスタロッサを引き渡します」
「はい。ご苦労様です」
本日よりプレシアが正式に俺の家で生活をするのだ。
そしてそれに伴いプレシアの荷物が来るというわけである。
もっとも荷物が来るといってもプレシアの身の回り品と管理局と連絡が取れるようにこの洋館に似合わない機械が少々である。
とはいえ、ミッドの機械なんて専門外なうえ、女性の荷物を俺が整理するのもアレなので、なのはとフェイトにお願いしたというわけである。
プレシア用の部屋でなのはとフェイトが荷物を、リンディさんとプレシアが機械の設置をしている間に俺は
「夕飯食べていきますよね?」
「あ、うん。ちょっと待ってね。
家に電話するから」
「なら私も」
「私がしておくからフェイトさんは大丈夫よ」
三人に確認をとって、プレシアの歓迎会も兼ねて少しばかり豪華な夕飯を作り上げていく。
「ではプレシアが新たにここに住むという事で、改めてよろしく頼む」
「ええ、こちらこそ、よろしくね」
プレシアの荷物も片付き、ミッドのプレシアが使う機械の一式も設置が終わったので、全員で夕食を楽しむ。
そして、当然だがハラオウン家と高町家にそれぞれデザートのお土産も用意している。
ちなみにこのデザートだが、高町家にお土産として持っていくと桃子さんにアドバイスが貰えたり、翠屋の新メニューになる事もあるので密かに楽しみにしていたりするのだ。
その後、食後のお茶を楽しみ、腹ごなしの散歩を兼ねてなのはとフェイト、リンディさんをプレシアと共に送る。
そして、フェイトとリンディさんと別れ際に
「闇の書に関するデータをプレシアさんの端末の中に入れているから」
小声で闇の書のデータの事を教えてくれる。
「ありがとうございます。
確認して、打てる手がないか考えてみます」
「ええ、お願いね」
「はい。フェイト、また明日」
「うん。学校で」
フェイト達と別れ、プレシアと二人歩く。
二人で歩く中でプレシアの出勤時間などを確認しておく。
「俺の魔術の工房については週末にでも説明するから」
「ええ、お願いね」
魔導と魔術の混合が出来るのかなど、武器に関しては色々と気になる事もある。
そして、お互いに生活する上で必要な確認が済んだ時
「なぜ闇の書に入れ込むの?」
プレシアが俺に静かに問いかける。
入れ込んでいる。
確かにそうだ。
「なぜそう思う?」
なぜプレシアがそんな問いに至ったのか問いかけで返す。
「確かになのはさんが襲われて、フェイトも怪我をしたわ。
闇の書の活動の中心がこの世界が中心なのも真実。
フェイトやなのはさんがこれからも闇の書に関わるのが心配というのもわかるわ。
だけど今の貴方の行動を見ているとフェイト達を守るためだけじゃなくて、闇の書を止めようと、いえ闇の書も助けようとしているみたい」
「……それはリンディさん達と話し合った上での意見か?」
「いいえ、私が感じた個人的な意見よ」
プレシアの言葉に正直驚いている。
気がつかれるとは思ってもいなかったのだが、いやプレシアの立場だからこそわかったのか。
フェイトという大切な者を傷つけられた怒りをプレシアも露わにはしてないが持っている。
そして、俺も怒りを持っているのをプレシアは知っている。
「まるで今回の根本が海鳴にあり、その原因をある程度理解して、その解決策を探しているみたいに感じたのよ」
極論だが、97管理外世界が関わっていたとしても俺が管理者を自称しているのは海鳴のみ。
海鳴以外で戦闘が起きてもリンディさん達を止める事は出来ないし、出来る事といえばフェイト達を守るためにリンディさん達、管理局に協力するぐらいだ。
つまり早急に今わかっている情報をリンディさん達から貰う必要はない。
リンディさん達に協力してなのは達と共に闇の書の説明を聞けばいい。
「それにさっき言ったわよね。
『打てる手がないか考えてみます』って
闇の書に関する情報を知ってるんじゃないの?」
ああ、駄目だ。
論破出来ない。
「もしそうだとしたらどうする?」
「協力するわ。
フェイト達に害を及ぼさないのならね」
プレシアのさも当然といわんばかりの即答に唖然としてしまう。
そんな俺の様子に笑いながら
「前に言ったわよ。
例え管理局の敵になっても貴方の味方になると」
そうだったな。
確かにそう約束した。
「余計な事に巻き込まれるぞ」
「望むところよ」
正面から揺らぐ事のない強い瞳で俺を見つめる。
ああ、これは何を言っても無駄だ。
「なら、全てを話すよ」
この瞳をした女性に勝てたことなど俺にはないのだから。
俺は闇の書についてプレシアに語った。
闇の書の主とその守護騎士が海鳴にいるという事。
主が呪いに蝕まれている事
守護騎士がリンカーコアを集める理由について
全てをプレシアに明かした。
さすがに闇の書の主と守護騎士と交流がある事は予想外だったのか驚いていたが。
そして、全てを話し終わった時プレシアは難しい顔をしている。
「プレシア?」
「妙な点が多いわね。
とりあえず家に帰りましょう。
資料を見ながらの方がわかりやすいわ」
「ああ」
プレシアの表情が気になったが、これで少しでもはやて達を救う手立てがあればいいのだが。
そう願いつつ、足早に家に戻り、リンディさんからの資料を確認する。
そこには信じられない事が書かれていた。
・転生と再生を繰り返し、魔力と魔力資質を奪うためにリンカーコアを蒐集する
・魔力、魔力資質によって頁が増え、最終666頁まで埋める事で完成する。
・人間、使い魔とも異なる疑似生命、守護騎士を有する。
・純粋な破壊でしか使用された記録しかなく、破壊しか使用できないと思われる。
簡単にまとめると以上の四つだがおかしい事が多すぎる。
その最たるものが闇の書の主についてだ。
過去にも闇の書が完成しているが主は死亡。
その他の主も皆、死亡している。
まるで持ち主に破滅をもたらす呪いの書だ。
さらに守護騎士達は意思疎通が出来るが感情の確認は出来ずとあるが
「これは過去の主のせいだろうな」
恐らくははやてのように家族としてではなく、闇の書の蒐集のための道具として扱ったためだろう。
これは別にしてもあまりにもおかしい。
完成すれば破滅をもたらす闇の書。
闇の書の完成が破滅をもたらす事を忘れている、いや忘れさせられた守護騎士。
そして、主を蝕む呪い。
「プレシア、闇の書だが根本がおかしくないか?」
「どういう事?」
「完成しようが、未完成だろうが主に破滅を与える。
闇の書を作った者は主に何をさせたい?
何の目的で作られた?」
物や道具にはそれぞれに意思や想い、さらには製作者の願いや意図が含まれる。
魔力を蒐集させておきながら、完成すれば破滅を呼ぶ。
そして、完成させなくてもはやてにかかっている闇の書の呪いで破滅をする。
完成させるまで呪いがかかるならまだ理解できる。
だが闇の書は違う。
完成させようが、完成しようが破滅を迎える。
完成させて魔力が許容量を超えて暴走するならわかるが、「純粋な破壊でしか使用された記録がない」とあるから暴走とは少し違うようだ。
「闇の書の目的ね。
確かにそれを考えると目的が見えないわね」
プレシアが同意してくれるが、結果として手詰まりである。
破滅の防止のために手を打ちたいが、過去に外部から操作をしようとして持ち主を呑み込んで転生したこともあったらしい。
だめだ。
これじゃ破滅をもたらす闇の書の主、八神はやては最終的に死ぬという結果しか見えてこない。
勿論、そんな事をさせはしない。
「とりあえずこの事は守護騎士達に話しておく」
「ええ、お願い」
今できる事としたら、この事をシグナム達に伝えて相談するしかないか。
破滅がどういう形で現れるのか、それを止める事が可能なのか、わからない事は多い。
それでも
「諦めるものか」
最後の最後まで足掻いてみせる。
はやて達も、海鳴に住むなのは達も、フェイト達も守って見せる。
その誓いを胸に、資料に再び目を向けた。
後書き
今週も無事に更新。
ちょっと風邪気味です。
暑かったり涼しかったりと気温差があるので皆さまもお気を付けを
ちなみにフェイトのイタリア人などはコミックのネタです。
それではまた来週にお会いしましょう。
ではでは
ページ上へ戻る