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戦国異伝供書

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第百八話 関東管領上杉家その十三

「しましょうぞ」
「織田家と戦うなら」
「是非共」
「それでは」
 氏康も頷いた、北条家は関東の覇者と言うべき家になった。だが天下は大きく動いており彼等もその天下を見ていた。
 それでこうした話をした、そしてだった。
 氏康は茶道も楽しむ様になった、それでだった。
 小田原城にもうけた茶室で茶を飲みそれを煎れた幻庵に話した。
「いや、茶はです」
「よいものですな」
「美味く」
 そのうえというのだ。
「飲むと目が覚めてです」
「後の政にもよいものが出ますな」
「学問にも鍛錬にもです」
 そういったものに赴く時もというのだ。
「目が覚めるので」
「よりよく励めますな」
「実に」
「茶は昔から寺で飲まれていまして」
「飲んで、ですな」
「目を覚まして」
 そしてというのだ。
「修行に励んでいました」
「そうしたものですな」
「はい」
 氏康に自身も茶を飲みながら話した。
「そして今はです」
「こうしてですな」
「寺の外でもです」
「飲まれる様になっていますな」
「そして」
 幻庵はさらに話した。
「茶器もです」
「宝になっていますな」
「そうなのです」
「茶器が一国に匹敵する宝となっている」
「現に織田家ではです」
 天下人と言っていい立場になったこの家ではというと。
「褒美として茶器がです」
「出されていますか」
「織田殿ご自身の手により」
「領地や金や宝の様に」
「そうなっています」
「そうでありますか」
「領地を褒美にしていますと」
 幻庵は褒美の主であるこれの話をした。
「やがてはです」
「土地には限りがありますからな」
「はい、ですから」
「土地よりもですな」
「織田殿は褒美にです」
「茶器をですか」
「出されています」
 そうなっているというのだ。
「昨今は」
「茶器を褒美して」
「領地を温存しているとか」
「そうなのですな」
「ですから当家も」
「茶器をですな」
「褒美にすることも」
 このこともというのだ。
「考えていきましょうぞ」
「ですな」
 確かにとだ、氏康も頷いて応えた。
「それでは」
「茶器を買っていきましょう」
「家臣達に茶を勧めつつ」
「そうしましょうぞ」
 是非にというのだ。
「これからは」
「それでは」
「実際茶はです」
「美味いですしな」
「目も覚めますし」
「いいことばかりなので」
「またこれからは文も備えてこそ」
 その様にしてというのだ。
「武士であるので」
「だからですな」
「これよりです」
 是非にというのだ。
「茶を広めましょう」
「家中に」
「そうしていきましょう」
「では」
 こうしたことも話してだった。
 氏康は茶も楽しんだ、関東の覇者となった彼はそうしたことも備えていった。そのうえで天下に生きていっていた。


第百八話   完


                2020・8・1 
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