戦姫絶唱シンフォギア~響き交わる伴装者~
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今日、一つ進む時間(セレナ・カデンツァヴナ・イヴ誕生祭2020)
前書き
一日遅れのセレナ誕生祭ッ!
でも裏技使ったので、投稿の日付はギリギリセーフです(笑)
徹夜で仕上げたこの一作、さあさあどうかご覧あれ!
「それじゃ、改めて……」
『セレナ、ハッピーバースデー!』
パンッ、という破裂音と共に、紙テープが宙を舞う。
今夜のパーティーの主役、セレナは照れ笑いと共にローソクを吹き消した。
マリア、切歌、調の4人は拍手を送り、ツェルトはスマホのカメラでその様子を撮影している。
今日、10月15日はセレナの誕生日。マリア達の住む部屋では、誕生日パーティーが開催されていた。
ちなみに夜は元F.I.S.で水入らず、という事でS.O.N.G.の面々からは昼の間に祝ってもらった後である。
「皆さん、ありがとうございますッ!」
「セレナが、誕生日を……ああ、セレナぁッ!!」
「わっ!?ま、マリア姉さん、落ち着いてください!」
感極まったマリアは、涙ぐみながらセレナを抱き締める。
無理もない。6年も氷の中で眠り続けていた妹が、ようやく歳を重ねる事が出来たのだから。
姉として、その感慨はひとしおだろう。
抱き着かれているセレナも、それは理解している。
困った顔をしてはいるが、抵抗していないのがその証拠だ。
「姉さん、泣かないでください。せっかくのパーティーなんですから、ね?」
「そうデスよマリア!笑顔で祝ってあげた方が、セレナだって嬉しいデス」
「うん。わたしもそう思う」
セレナと、それから妹分の切歌と調に諭され、マリアは涙を拭きながらセレナから離れる。
「そうよね……。泣いてばっかりじゃダメよね。私はセレナの姉さんなんだからッ!」
「デースッ!それでこそマリアなのデースッ!」
「ドンドンパフパフ、わーわー」
セレナから離れたマリアは立ち上がり、キメ顔でそう宣言した。
その様子を3人は、拍手と共に見上げるのだった。
「それにしても、まさか来てくれるとは思いませんでしたよ。ドクター・アドルフ」
一方、そんなマリアを微笑みながら見ていたツェルトは、少女達が囲むテーブルとは別の離れた席に腰掛けた白衣の男性……アドルフ博士の方を振り向く。
「フン。ギフトを届けて帰ると言った俺を掴まえて、参加させたのはお前だろう?」
「でも、宅配便で送り付ける事だって出来たはず。そうしなかったのは、ちゃんと患者の顔を見て、直接渡してあげたかったから。違いますか?」
「慣れない国の宅配便など、信用出来なかっただけだ。直接届けた方が、無駄金を使う手間も省けるだろう?」
「やれやれ……頑固ですよね、あなたも」
祝いに来た、と素直に言えないアドルフに、ツェルトは少し苦笑いしながら呟く。
F.I.S.に居た頃から、アドルフの合理的な物言いは変わっていない。無論、その裏にある子供達への思いやりの心にも。
でももう少し素直になってくれてもいいんじゃないかな、と思いながら、ツェルトはアドルフのグラスにシャンパンを注いだ。
「ところでツェルト。お前のシチュー、中々美味かった。いったい、どんな食材を使っているんだ?」
「クズ野菜と細切れ豚、あと特売のミルク」
「冗談だろ?」
「嘘じゃないですよ。よかったら、レシピ教えましょうか?」
「……料理の世界も奥が深いな」
「さあ、ケーキを切り分けるわよッ!」
「待ってたデースッ!」
「おっと、切るならこっちも切ってくれないか?」
料理を食べ終え、いよいよデザートでありパーティーの花であるケーキを切ろうという時、ツェルトはキッチンからあるものを持ってくる。
それは白くて縦長の、ケーキ類を入れるものと同じ箱だった。
「ツェルト義兄さん、これは?」
「ドクター・アドルフからのプレゼントだ。ちゃんとお礼を言ってやるといい」
「アドルフ先生が!?ありがとうございますッ!」
セレナはアドルフの方を向き、しっかりと頭を下げて感謝する。
「お……俺は何も……」
アドルフは目を逸らしながら素っ気なく返す。
だが、目元はサングラスで隠せても、その頬が少し赤くなっていたのを、ツェルトはしっかりと見抜いていた。
当然ながら、それが照れ隠しなのはセレナにもお見通しである。
「中身は……焼きプリン?」
「それにしては、なんだか冷たい……」
マリアが中身を取り出すと、それはアルミの容器に包まれた焼きプリンだった。
しかし、保冷剤が入っている事と、室温で少し溶けかけている状態に、調は首を傾げた。
「アイス焼きプリン、って言うらしいぞ」
「アイス焼きプリン、ですか?」
「アイスなのに“焼き”プリンデスとぉ!?」
初めて聞く名前にこてん、首を傾げるセレナ。
矛盾しているようなその名前に反応する切歌。
ツェルトは、箱に貼り付けられていた商品説明に目を通す。
「どうやら、駅前に最近できたばかりのスイーツ店が出してる、オリジナル商品らしい」
「思い出した……!この前、雑誌で見た事ある。リピーター続出の理由なんだって」
「なんデスとぉッ!?」
調の言葉に、切歌は思わず立ち上がって驚く。
「ドクター・アドルフ、あなたまさか……」
「勘違いするな。たまたま通りかかった店に、患者の好物が売っていたから買っただけだ。まったく、無駄な記憶が残ってしまうのは、厄介な職業病かもしれんな」
セレナの為に?というマリアの疑問を遮り、断固として認めないアドルフ。
ツェルトとマリアが苦笑いする中、切歌が首を傾げた。
「ショクギョー病?アドルフ先生、病気なんデスか!?」
「ぶふっ!?」
「ぷっ……あっはははははははははッ!」
思わず吹き出すアドルフ。
これにはツェルトもつい、腹を抱えて笑ってしまう。
「違うよ切ちゃん。職業病っていうのはね、特定の職業に着いてる人だけの癖の事なんだよ」
「って事は、アドルフ先生は患者さんの好きなものをすぐに思い出せるのが癖、ってことデスか?」
「そうなるね」
「それって、そんなに悪い事デスか?」
調からの解説を受けた切歌は、とても純粋な疑問を口にする。
それはアドルフの言葉──俗に言うツンデレ──を完全粉砕する程のものだった。
「……確かに、悪いものというわけでもないな……」
「じゃあ、何で病気だなんて言うんデスか?アタシは素敵だと思うデス!」
「それは……」
予想外の切り返しに、思わずたじろぐアドルフ。
それを見た調は、切歌に続いてアドルフを褒める。
「厄介がる事じゃないと思います。患者さんの事をちゃんと見てくれている、いいお医者さんの証拠ですよ」
「う、うーむ……」
そこへ更に、マリアが追い打ちをかけた。
「それとも、貴方が厄介がってるのは患者……私の妹の方なのかしら?」
「い、いや、そんな事は……」
腕組みして迫るマリアに、焦るアドルフ。
そして、セレナはアドルフを真っ直ぐに見つめてこう言った。
「アドルフ先生……わたしの事、嫌いですか?」
「別にそういう訳では……」
ツェルトに助けを求める視線を送るアドルフ。
しかし、ツェルトから返って来たのは、アドルフの期待とは真逆の言葉だった。
「ドクター・アドルフ、女の子を泣かせちゃダメですよ?」
「~~~ッ!!分かった、分かった、認めればいいんだろう!?」
潤んだ瞳で見つめられ、こんな事を言われてしまっては、流石のアドルフ博士と言えどもツンデレに逃れる事は出来ない。
ツンデレドクターことアドルフ博士も、子供の純真さの前では型なしなのであった。
「セレナ、お前の誕生日を祝うために、わざわざ並んで買ってきたんだ……」
「本当ですか?」
「嘘を言う理由はない。私はお前の主治医だからな」
サングラスを外し、アドルフ博士はセレナに目線を合わせる。
「ハッピーバースデー、セレナ。ようやく1つ、歳を重ねたな」
「はい……ッ!アドルフ先生のおかげです。ありがとうございますッ!」
「私は何も、大した事はしていないさ」
アドルフの自嘲じみた言葉に、セレナは首を横に振る。
「いいえ。アドルフ先生がわたしを守ってくれていた事、マリア姉さんとツェルト義兄さんから聞いています。わたしがここで生きていられるのは、間違いなくあなたのおかげなんです」
「……そうか」
「はいッ!なので、先生には感謝してもしきれません。本当に、ありがとうございますッ!」
アドルフは立ち上がると、指で頬を掻きながら席へと戻って行く。
その表情が晴れ晴れとしていたのを、ツェルトはその目でしっかりと見ていた。
「マリア、早く切らないとプリンが溶けちゃう」
「そっ、そうねッ!溶け切る前に分けちゃいましょうッ!」
「アタシ、ジュース持ってくるデスッ!」
「じゃあ、お皿は片付けておくね」
「わたしも手伝いますッ!」
調の一言をきっかけに、慌ただしくデザートの準備に戻っていくマリア達。
「俺はこっちを片付けるかな」
「俺も手伝おう」
そしてツェルトは、クラッカーで飛んだ紙テープを纏め、ゴミ袋へと放り込む。
アドルフ博士もサングラスをかけ直すと、ツェルトを手伝い始めた。
姉と義兄、親友たち、そして先生……大切な人達に囲まれての誕生日。
セレナの笑顔には、幸せがいっぱい溢れていた。
マリアと同じくらい大切なその笑顔を、二度と失わない。ツェルトは改めて固く誓う。
セレナもまた、ツェルトにとって大切な家族なのだから。
「いつか、セレナも大きくなるんだろうな……」
ふと、そんな言葉が口をついて出る。
「ところでツェルト……セレナの年齢は、どちらで数えるべきだと思う?」
「ん?あー……どっちだろ……?肉体的には14歳。でもあれから6年経ってるから、本来なら今日で20歳だし……」
「判断が悩ましいな……」
「先生が分からないものが、俺に分かるわけないじゃないですか」
果たしてセレナを何歳とカウントすればいいのか。
アドルフと共に、ツェルトは首を捻るのであった。
後書き
アドルフ博士、マジでXDUとは別人すぎる(笑)
セレナの年齢について判断迷う人はきっと多い……。ある意味合法ロリですもんね。そろそろ来るであろう大人セレナの登場が楽しみです。
次回もお楽しみに!
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