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英雄伝説~灰の騎士の成り上がり~

作者:sorano
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第105話

2月10日――――――



同日、AM:11:00―――――



トリスタ占領の翌日、灰獅子隊は次の作戦に向けてユミルに駐屯しているメンフィル・クロスベル連合軍の駐屯地へと向かい、駐屯地に到着するとリィンはレンとプリネ、ルシエルと共に作戦立案用の天幕に訪れていた。



~ユミル近郊・ユミル方面メンフィル・クロスベル連合軍駐屯地・作戦立案天幕~



「―――失礼します。」

リィン達が天幕の中に入ると天幕の中には既にユミルに駐屯している連合を率いている”将”達――――――メンフィル側はリィン達が戦争前に行った賊の討伐時にメンフィル軍を率いていた双子の皇子と皇女であるエフラムとエイリーク、クロスベル側はエルミナとパティルナが既にそれぞれ着席していた。

「うふふ、久しぶりね、エフラムお兄様、エイリークお姉様♪」

「……お久しぶりです。お二人ともご無事で何よりです。」

エフラムとエイリークに気づいたレンとプリネはそれぞれ二人に声をかけ

「無事も何も、俺達がユミルに駐屯してからエレボニアは未だユミルに襲撃してこなかったから、正直暇だったんだがな……」

「フウ……むしろ襲撃は無い方がいいではありませんか、兄上……――――――レンとプリネ、二人ともこうして顔を合わせるのは新年を祝うパーティー以来ね。リィンさんともこうして顔を合わせるのは初めてになりますね。確か私達がユミルに派遣される前に行った賊の討伐戦にも参加していたと聞いています。私達の領土に巣食う賊達の討伐に力を貸して頂いた事……そして留学時にお世話になったエレボニアとの戦争にメンフィル軍側として参加し、活躍している事には心より感謝しています。」

声をかけられたエフラムは不満げな様子で答え、エフラムの答えに呆れた表情で溜息を吐いたエイリークはリィン達を順番に見回して微笑んだ。



「恐縮です。自分も勇猛果敢な事で有名なエフラム皇子殿下やそのエフラム皇子殿下を支えるエイリーク皇女殿下自らがユミルの守りについて頂いている事……今でも心より感謝しています。」

エイリークの言葉に対してリィンは敬礼をして謙遜した様子で答え

「メンフィルはエレボニアの内戦勃発後ユミルに内戦に巻き込まれた際の臨時の防衛部隊を送らなかった件がある上、シュバルツァー家はリィンもそうだがエリゼもマーシルン皇家やメンフィルに対して称賛を受けて当然の貢献をしてくれた。内戦の件の罪滅ぼしもそうだが、今までの貢献の”礼”代わりにもこの戦争では郷を全力で守る事は俺達メンフィル皇家にとって”当然の義務”のようなものだからそんなに気にする必要はないぞ。」

「……身に余るお言葉光栄です。――――――お二方もご壮健の様子で何よりです、エルミナ皇妃陛下、パティルナ将軍閣下。」

「貴方の方は壮健どころか、今回の戦争では活躍続きでメンフィルと連合を組んでいる国の将の一人として心強く思っています、リィン少将。」

「なんでもこの前の戦では魔族の中でも相当な使い手だらけの種族の”飛天魔”相手に一人で勝利した上、軍門に加えたんだって?機会があれば、あたしの相手も務めて欲しいくらいだよ。」

エフラムの言葉に対して謙遜した様子で答えたリィンはエルミナとパティルナに挨拶をし、挨拶をされたエルミナは静かな表情で、パティルナは不敵な笑みを浮かべてそれぞれ答え、パティルナの答えを聞いたリィンは冷や汗をかいて表情を引き攣らせた。



「アハハ…………ちなみにそちらの天使族の方は報告にあった黒の工房のノルド支部で保護し、保護後はリィンさん達の部隊に配属されたという……?」

「はい。――――――ルシエル。」

「―――天使階級第六位”能天使”ルシエルと申します。リィン少将から受けた大恩を返す為……そして一人の天使としても世界は違えど、世界を”終焉”へと導こうとする愚か者達に”裁き”を与え、そしてこの世界の人々を”救う”為にリィン少将の指揮下に入らせて頂いております。」

リィンの様子を見て苦笑した後気を取り直したエイリークにルシエルの事を訊ねられたリィンはルシエルに視線を向けて自己紹介を促し、ルシエルはその場で軽く会釈をして自己紹介をした。

「フム……それでそのルシエル殿が何故この場に?ルシエル殿が義勇兵の一人としてリィンの部隊に組み込まれた話は聞いているが……」

「フフッ、ルシエルさん自らがリィンさんに申し出てくれたのです。――――――ルシエルさん自身に備わっている”智謀”を灰獅子隊に不足している参謀役として役立てて欲しいと。」

「最初は単なる義勇兵として戦うつもりだったルシエルお姉さんがそんな申し出までしてくれたのは、トールズを襲撃した際に傷ついたルシエルお姉さんの部下の天使達の治療を優先した事やその天使達を保護してくれた事に恩義を感じて、灰獅子隊にはレン以外はいない”参謀役”を申し出てくれたって訳よ♪レンとしても、実戦で指揮する”参謀”は多いに越した事はないから、ルシエルお姉さんの申し出は助かっているわ♪」

エフラムの疑問に対してプリネとレンはそれぞれ答えた。



「まあ……フフ、リィンさんはつくづく光と闇問わず、異種族の方々との”縁”に恵まれていますね。」

「……リィン少将。彼女の”参謀としての能力”は義勇兵としての立場から参謀としての立場へと抜擢する程優れているのですか?」

二人の話を聞いたエイリークは微笑み、エルミナは試すような視線でルシエルを見つめた後リィンに訊ねた。

「ええ。彼女の事をよく知る自分が契約している”守護天使”の一人であるレジーニアの話によりますと、ルシエルは知と力を併せ持つ戦闘型の天使で、階級に見合う戦闘能力を持っている事に加えてそれ以上に優れた智謀で状況に合った戦術を導き出して戦場を駆ける”頭脳派”との事です。実際、彼女達がゼムリア大陸に現れるまでは長年の魔族との戦いで彼女が率いる部隊は高い戦果を挙げ続けていたとの事です。」

「へ~……エル姉と結構似ている天使みたいだね。得物もエル姉と同じ”双剣”のようだし。」

「………なるほど。そういう事であるのならば、むしろ歓迎します。―――――それでは軍議を始めましょうか。」

リィンの説明を聞いたパティルナは興味ありげな表情でルシエルを見つめ、エルミナは納得した様子で頷いた後軍議の開始を促した。その後リィン達がそれぞれの席に着席すると軍議が開始された。



「予め伝えた通り、今回侵攻する地はエレボニア帝国の工業都市にして侯都――――――”黒銀の鋼都”ルーレだ。」

「ルーレを早期に抑える事ができれば、ノルティア州の掌握も容易になりますし……何よりも、統括領主である”ログナー侯爵家”が敗れたのであれば、ノルティアの貴族達の戦意を”折る”事ができて最小限の戦いでノルティア州を掌握できます。」

「―――加えて、ルーレ地方にある鉱山――――――”ザクセン鉄鉱山”はエレボニアにとって最も重要な資源である”鉄”が最も取れる鉱山である事から”帝国の屋台骨”とも呼ばれている鉱山で、またルーレはエレボニア帝国軍の兵器・武器の開発・量産を請け負っている”ラインフォルトグループ”の軍需工場がありますから、今回の作戦が成功すればエレボニアの戦力に致命的なダメージを与える事ができると言っても過言ではないでしょう。」

「……なるほど。早期の敵国の領土掌握だけでなく、敵国の資源と戦力にまで大きな影響を与える事ができますから、今後の戦況に直接影響を与えると言っても過言ではない連合にとって最も重要な作戦の一つでもあるという事ですね。」

エフラムとエイリーク、エルミナの説明を聞いたルシエルは真剣な表情で考え込みながら呟いた。

「ああ……ただ、ノルティア領邦軍は統括領主のログナー侯爵家が元々武闘派である事から、領邦軍の中でも精強である事で有名だから、前の作戦――――――”トリスタ占領作戦”で戦った正規軍よりも練度は上と思った方がいい。しかもそのノルティア領邦軍の”本拠地”である”黒竜関”もルーレに隣接しているから、ルーレの攻略に時間をかけていたら”黒竜関”からの援軍も到着すると思った方がいいだろう。」

「つまりは、先の戦で戦った兵達よりも練度が高い兵達が相手で、しかもその兵達の”本拠地”からの援軍が来る時間もそれ程かからないという訳ですか。」

「加えてルーレを含めたノルティア州は戦後、”クロスベル帝国領”になる事が予定されているから、クロスベル側としてもなるべく無傷でルーレを手に入れたいでしょうから、できれば軍需工場やジェネレーターもある市街戦は避けたいというのが”本音”でしょう?」

「レン、貴女ね……もっと他にも言い方があるでしょうに。」

ルシエルの言葉に頷いたリィンはルシエルに追加の情報を伝え、リィンから教えられた情報を聞いたルシエルは次に戦う事になる敵について分析し、小悪魔な笑みを浮かべて呟いたレンの言葉を聞いたプリネは呆れた表情で指摘した。



「いえ、レン皇女の仰っている事は”事実”ですから、お気になさらず。」

「ま、向こうは面倒な籠城戦はできない地形だから、ユン・ガソルとして戦っていた頃の戦争よりは楽だとは思うけどね~。」

一方エルミナは静かな表情でレンに注意するプリネに指摘し、パティルナは肩をすくめて答えた。

「ちなみに現在予定している大まかな流れはどうなっているのですか?」

「まず俺達メンフィルが”黒竜関”に進軍し、”黒竜関”からのルーレへの援軍を食い止める。で、俺達が援軍を食い止めている間にクロスベルがルーレを占領するという流れを考えているのだが……」

「……問題は二つ。幾らメンフィル帝国から”兵器”を融通してもらえたとはいえ、我が国は建国したばかりの為”兵”の数はメンフィル軍は当然として、ヴァイスラント新生軍にも劣っている状況です。」

「そこに加えて、ラマールの掌握の為にギュランドロス様とルイーネお姉様が率いる部隊に分けたから、ただでさえ少ない戦力が半減されているから、ルーレを市街に被害を出さず落とすにはちょっと兵力が心もとないんだ。」

「もう一つの問題は”ザクセン鉄鉱山”です。ルーレの占領を知った”ザクセン鉄鉱山”の守りについている領邦軍が自棄になったり、以前のクロイツェン州での”焦土作戦”の時のように”敵国である連合に奪われるくらいならば”という感情で”ザクセン鉄鉱山”を崩壊させる可能性も考えられなくもありませんから、ルーレと”ザクセン鉄鉱山”は同時に攻めて制圧することが望ましいのです。」

プリネの質問にエフラム達はそれぞれ答えた。



「―――状況は理解しました。つまり、自分達に求められている役割はルーレを攻略するクロスベル軍の支援、並びに”ザクセン鉄鉱山”の占領という事でよろしいでしょうか?」

エフラム達の話を聞いて頷いたリィンは自分達の役割をエフラム達に確認した。

「ええ。それともう一つ。――――――恐らく今回の作戦に介入してくるであろう”紅き翼”の対処です。」

「内戦で”身内の保護”を名目に動いていた当時の”紅き翼”の件を考えると、今回の作戦では間違いなく介入してくるでしょうね。――――何せ今回の作戦では向こうが介入する名目の一つである”身内の保護”が発生するもの。しかも、その”保護対象”には連合が討つ予定人物も含まれているでしょうし。」

「……そうですね。イリーナ会長はともかく、ユーゲント陛下への忠誠が篤いログナー侯爵は間違いなく今回の侵攻作戦に全力で抵抗して、自分達はルーレ占領並びにノルティアの掌握の為にもログナー侯爵を討つ必要がありますから、そのログナー侯爵を俺達に討たせない為に今回の作戦では間違いなく介入してくるでしょうね。」

「リィンさん……」

真剣な表情を浮かべたエルミナと肩をすくめて意味ありげな笑みを浮かべたレンの推測に静かな表情で肯定したリィンの様子をプリネは心配そうな表情で見守っていた。



「……リィン少将。リィン少将はかつてその”紅き翼”としての一員として、今回の戦争の勃発原因の一つである内戦終結の為に活動していたとの事や”Ⅶ組”の”特別実習”とやらでエレボニアの様々な地に訪れたという話を私にゼムリア大陸や今回の戦争の件についての説明をした際にも教えて頂きましたが………もしや、リィン少将は今回攻める都市である”ルーレ”や”ザクセン鉄鉱山”の地形についても把握しているのでは?」

「ああ。ルーレが地元のアリサやアンゼリカ先輩程でないが、ルーレやザクセン鉄鉱山もそうだがその近郊の街道も一通り回っているから、ある程度は把握しているが……それがどうかしたのか?」

その時考え込んでいたルシエルがリィンに質問し、質問されたリィンは戸惑いの表情で答えて訊ね返した。

「何か”抜け道”の類は存じていませんか?」

「”抜け道”…………――――――!そういえば、”特別実習”でクロウ達――――――”帝国解放戦線”に一時的に占領されたザクセン鉄鉱山を解放する為に、当時は帝国解放戦線と繋がっていた事で俺達や正規軍の介入を防ぐ為にザクセン鉄鉱山を封鎖していたノルティア領邦軍の裏をかく為に、ラインフォルトグループが建造していたルーレとザクセン鉄鉱山が直通している非常用の連絡通路を使った事がある……!」

「ほう……」

「そのようなものが……――――――使えますね。」

ルシエルの質問に考え込んだ後心当たりを思い出したリィンの話を聞いたエフラムは興味ありげな表情を浮かべ、僅かに驚きの表情を浮かべたエルミナは目を細めた。

「ええ。それにザクセン鉄鉱山で採掘した鉱石をルーレにある軍需工場に運ぶためにザクセン鉄鉱山とルーレが繋がっている鉄道の線路もあるでしょうから、万が一領邦軍がその非常用の連絡通路を封鎖していたとしても、ザクセン鉄鉱山を占領した部隊がそのままルーレを攻めている部隊の援軍に向かう事も可能ね。」

「リィン少将、その非常用の連絡通路はどのくらいの規模なのでしょうか?」

エルミナの意見に頷いたレンは更なる推測をし、ルシエルはリィンに質問を続けた。



「そうだな………広さとしては人二人分くらいで、特に迷うような道でもないが……梯子がある上、鉱山と通路が繋がっている出入口は人一人分しか入らない一般的な扉だから、騎馬もそうだが、重騎士や飛行騎獣もその通路を使う事は厳しいだろうな。」

「つまりは軽装の歩兵、もしくは私のようなその身に翼がある者達のみの移動が望ましいという訳ですね……リィン少将、他にも聞きたい事があるのですが――――――」

リィンの説明を聞いたルシエルはリィンに質問を続けた。

「――――――皆様方、新参者ではありますが、まずは私が考えた”策”を聞いては頂けないでしょうか?」

「ええ、是非お願いします。」

「あたし達も文句はないよ、そうだよね、エル姉?」

「……ええ。私も彼女のリィン少将へのザクセン鉄鉱山やルーレ関連の質問に対する答えを聞いている間に考えてはいますが、まずは貴女の”策”を聞かせてください。」

リィンへの質問を終えて少しの間だけ目を閉じて考え込んでいたルシエルは目を見開いてエフラム達を見回して自分が考えた策を口にする許可を確認し、ルシエルの確認に対してエフラムと視線を交わして頷いた後に答えたエイリークの後に頷いたパティルナはエルミナに視線を向け、視線を向けられたエルミナはルシエルに続きを促した。



「わかりました。――――――まず、クロスベル軍への支援ですが、”灰獅子隊”からは騎馬隊、重騎士隊、魔道部隊、飛行騎獣部隊、そしてリィン隊よりフォルデ大佐又はステラ大佐率いる機甲兵の部隊がザクセン山道より進軍するクロスベル軍とは別の場所――――――スピナ間道より進軍してクロスベル軍と共にルーレの防衛部隊の対処に当たります。」

「別の方角より攻める事で都市の防衛部隊を分散させる事で友軍の負担を軽くする……――――――”戦術の定石”だな。」

ルシエルの説明を聞いていたエフラムは納得した様子で頷いた。

「次にザクセン鉄鉱山ですが、正面からはプリネ皇女率いる親衛隊がザクセン鉄鉱山に侵攻し、更にトリスタの戦いで加入したベアトリース達魔族部隊を空から侵入できる場所である中央コントロール室より侵入し、プリネ皇女の部隊と挟み撃ちにする形でザクセン鉄鉱山の防衛部隊を制圧。更に、魔族部隊がザクセン鉄鉱山に侵入する際に私達天使部隊とリィン少将率いる残りのリィン隊のメンバーと鉄機隊が天馬騎士(ペガサスナイト)達による移送で魔族部隊と共に中央コントロール室に侵入した後、非常用の連絡通路を目指し、連絡通路に到着後連絡通路を使ってルーレ市街に直接侵入し、市街に侵入後はそのままログナー侯爵家の屋敷を目指し、屋敷を攻めてログナー侯爵を討ち取ります。なお、魔族部隊とリィン少将達を移送した天馬騎士達に関してですが、天馬騎士達は移送後、魔族部隊はザクセン鉄鉱山制圧後そのまま飛行による移動でルーレに向かい、スピナ間道から攻めている部隊に加わってもらいます。」

「…………なるほど。それぞれが持つ能力を最大限に生かした”策”ですね。」

「ええ。うふふ、戦後は是非部下の天使の人達共々メンフィルに所属して欲しいわね♪―――ちなみにレンとレンが保有する部隊に関しては状況に応じてレヴォリューションによる支援攻撃でルーレを攻めているクロスベル軍や灰獅子隊もそうだけど、黒竜関側からの援軍を食い止めているエフラムお兄様達メンフィル軍の支援をするって所かしら?」

ルシエルが口にする文句のない策にエルミナは納得した様子で呟き、エルミナの言葉に頷いた後小悪魔な笑みを浮かべたレンは気を取り直してルシエルに確認した。



「はい。そして最後に紅き翼への対処ですが…………リィン少将達と共にルーレに侵入した私達天使部隊がリィン少将達と共にルーレに侵入後、空から紅き翼のルーレへの侵入を待ち構え、紅き翼の侵入後私達が迎撃します。」

「え…………一ついいですか?何故、紅き翼の為にわざわざルシエルさん達天使部隊という貴重な飛行歩兵戦力が当たるのでしょうか?」

ルシエルがアリサ達を迎撃することに僅かに驚きの表情を浮かべて呆けた声を出したプリネはルシエルに質問した。

「理由は二つあります。一つは紅き翼のルーレ市街への侵入を発見し、対処に向かうには空からの監視が適切である事、そしてもう一つは今回の紅き翼の迎撃する戦力として、私達天使部隊が適切であるという事です。」

「?何でアリサ達を迎撃する戦力として、ルシエル達が適切なんだ?今回の作戦で手が空きやすい飛行戦力ならイングリット達もそうだが、ベアトリース達もいるが……」

プリネの質問に対するルシエルの説明を聞いて新たな疑問が出てきたリィンはルシエルに訊ねた。



「天馬騎士達だけですと、機甲兵に加えて騎神を二体も保有する紅き翼の対処はさすがに厳しいでしょうし、逆に魔族部隊の場合紅き翼が機甲兵や騎神まで戦力として利用してくると”本気”を出す事で”加減”するのを忘れて紅き翼側に犠牲者を出す可能性も考えられますから、紅き翼の対処に当たらせることはできません。」

「あ~……現状、メンフィルもそうだけどギュランドロス様もガイウス達を殺す事もそうだけど捕らえて幽閉する事を禁ずる事はあたし達にも周知させているから、ある程度の加減は必要だろうね~。」

「全く…………ギュランドロス様にも困ったものです……殺す事が無理なら、拘束して戦争終了までどこかに幽閉すればいいというのに……ヴァイスラント新生軍に対する義理にしても戦争終了まで生かした状態で安全な場所に幽閉する事で十分でしょうに。」

ルシエルの答えを聞いたパティルナは苦笑し、エルミナは呆れた表情で溜息を吐いた。

「……本当にルシエル達だけで大丈夫なのか?機甲兵はともかく、起動者(ライザー)としての経験は俺よりも優れているクロウが駆るオルディーネもそうだが、『千の武器を持つ魔人』の異名で呼ばれている事から恐らく千の武装を備えているであろう皇太子殿下が駆るテスタ=ロッサも相当手強いぞ?」

「――――――問題ありません。その為の”策”も既に考えています。ただ、念の為にユリーシャとレジーニアを私の部隊に加勢させて頂けないでしょうか?」

「それは構わないが……その二人だけでいいのか?必要ならメサイア達も加勢させるが。」

「メサイアは飛行できない為私達と歩調を合わせられませんし、魔神ベルフェゴールとアイドス様は戦力としてあまりにも強力過ぎる事から逆に連携し辛くなります。その点、私達と同じ天使の二人の場合は私達との連携が取りやすいのです。」

「……わかった。」

「――――――以上が私が考えた”策”です。いかがでしょうか?」

ルシエルの要求に対してリィンが静かな表情で頷くとルシエルはエフラム達を見回して判断を促した。



「俺はそれでいいと思うぞ。エイリークはどうだ?」

「私も問題ありません。」

「クロスベルも問題ありません。良き参謀から信頼を勝ち取れましたね、リィン少将。」

「へ~、エル姉が誉めるなんてよっぽどだよ。そんな天使を仲間にしたなんて、さすがヴァイスが自分の娘を任せた男だね!」

「うふふ、こんな優秀な人材を逃さない為にも、是非いつもの”無自覚タラシ”でルシエルお姉さんも落とすように頑張ってね、リィンお兄さん♪」

「レン、貴女ね……よく本人達を目の前でそんなことが言えるわね……」

「ハハ……」

エフラムとエイリークはそれぞれ頷き、静かな表情で答えたエルミナの言葉を聞いたパティルナは興味ありげな表情でルシエルとリィンを見つめ、からかいの表情を浮かべてリィンを見つめて指摘したレンの言葉を聞いたプリネは呆れた表情で溜息を吐き、リィンは苦笑していた。



「リィン少将。後で紅き翼のメンバーについての詳細を教えて頂けないでしょうか?」

「それは構わないが……アリサ達の何を教えればいいんだ?」

「知っている事”全て”です。得物、戦闘能力は当然として性格や人間関係等リィン少将がトールズ時代で知る事ができた”紅き翼”のメンバーの情報全てを知る事で、相対した時の戦闘をより有利に運びたいので。」

「――――――わかった。ただ、今回の戦争で共に活動することになっている殿下達やアッシュ、それに”協力者達”であるリベールから来た人達に関しては俺もほとんど知らない事は念頭においてくれ。」

「あら、だったらオリビエお兄さん達やリベールからの協力者達―――ティータ達に関してはレンでよかったら教えてあげるわよ?オリビエお兄さん達に関しては以前に共に戦った事もあるから、色々と把握しているわよ♪」

「でしたら、レン皇女にも後で伺わせて頂きます。」

自分の質問に対してリィンが答えた後に申し出たレンの申し出を聞いたルシエルは静かな表情で答えた。



「それじゃあ、会議はこれで終わりでいいよな?」

「そうですね……――――――いえ、一つだけリィン少将達に伝え忘れていたので、それをこの場で伝えさせて頂きます。」

「自分達に?一体どのような事でしょうか?」

エフラムの言葉に頷きかけたエルミナだったがある事を思い出してリィンに視線を向け、リィンは不思議そうな表情で訊ねた。

「今回の侵略戦で、クロスベルが雇った傭兵―――貴方も知っているジェダル・シュヴァルカにハイデル・ログナーの暗殺を依頼し、承諾してもらっていますから、彼がハイデル・ログナーを抹殺しようとする所に出くわした場合、気にせず作戦を続行するようにお願いします。」

「え…………」

「ジェダルさんにハイデル卿を……!?一体何故クロスベルはハイデル卿をわざわざ傭兵を雇ってまで抹殺しようとしているんですか……?ハイデル卿はクロスベルに対して特に何もしていないと記憶していますが……」

「しかもハイデル・ログナーって武闘派のログナー侯爵と違って典型的な”小物”だったわよね?何故そんな”小物”の為に、”猟兵王”ともやり合える傭兵を雇って”始末”しようとしているのかしら?」

エルミナの説明を聞いたプリネは呆け、リィンは驚いた後困惑の表情で訊ね、レンは興味ありげな笑みを浮かべて訊ねた。



「あの手の輩は強者に取り入る事に関しては”一流”です。そしてそれは言ってみれば広い人脈を持っているという事。しかもハイデル・ログナーは四大名門の一角の当主の弟である事から、支持者も多いでしょう。そのような輩は生かしておけば、戦後メンフィルもそうですが、クロスベルにも取り入る事で自身が持つ広い人脈と共に様々な”見返りという名の甘い蜜”を吸おうとしている事は目に見えています。そしてその出来事によって、クロスベルの政治・経済共に支障が出る事になります。それを阻止する為に、ジェダル・シュヴァルカに彼の暗殺を依頼したのです。」

「それは……………………」

「……あの、エルミナ皇妃陛下。ハイデル卿の件ですが、もしかしてわざわざジェダルさんを雇ったのは、紅き翼の介入も考えた上でなのでしょうか?」

エルミナの話を聞いたリィンは複雑そうな表情を浮かべ、プリネは複雑そうな表情でエルミナに訊ねた。

「ええ。勿論、彼らにも紅き翼と遭遇してハイデル・ログナーを救出しようとした際に対する迎撃では殺す事や体の一部を失わせるといった重傷を負わせる事は禁じています。」

「……………………―――ハイデル卿の件、了解しました。」

「リィンさん……」

エルミナの答えを聞いて少しの間黙り込んだ後リィンは気を取り直して返事をし、その様子をプリネは心配そうな表情で見守っていた。



「――――――それでは私達は先に失礼します。行きますよ、パティ。」

「…………了解~」

そしてエルミナは立ち上がってパティルナに退出を促し、促されたパティルナは少しの間その場で考え込んだ後返事をしてエルミナと共に退出した。

「さて……俺達もそろそろ失礼するが……その前に、いい加減”あいつら”をお前達の部隊に合流させないとな。」

「”あいつら”……?エフラム殿下のその口ぶりですと、まさか殿下達が率いている兵達の中から灰獅子隊に加入させる者達がいるんですか……!?」

二人が去った後口を開いたエフラムの言葉を聞いて眉を顰めたリィンはすぐに察しがつくと、驚きの表情で訊ね

「ええ。ちなみに”灰獅子隊に加入させる部隊を率いる部隊長達は3人ともそれもリィンさんがよく知っている方々ですよ。」

「自分が……?――――――!まさかその3人の部隊長は……!」

「フッ、今この場に呼ぶから少しだけ待っていろ。」

微笑みながら答えたエイリークの答えを聞いて察しがついて目を見開いたリィンの様子を見たエフラムは口元に笑みを浮かべた後エニグマを取り出して誰かに通信をした――――――



 
 

 
後書き
ようやく創の軌跡をクリアしました!!ラスボスは発売前から噂されていたキャラクターで、マジか……と思いました。ラスボス戦はぶっちゃけ騎神戦で苦戦しただけで、騎神戦前と後のバトルは正直楽勝でしたねwwもう騎神戦はないと安心していたのによりにもよってラスボス戦にぶち込むのかよ……とげんなりしました。なのでマジで騎神戦は今後の軌跡シリーズには止めて欲しいものです……そして他の方達も言っていましたが、確かに創の軌跡クリアした後だと軌跡シリーズでトップクラスの嫌われキャラだったルーファスに対する印象も色々と変わりますね……特にラスボス撃破後のイベントはお約束の展開だったとはいえ、感動しましたね。……という事は、まさかとは思いますがルーファスに次ぐ嫌われキャラのセドリックの印象を変える事もファルコムは予定しているのでしょうかねwwちなみにですが、灰の騎士の成り上がりの最後の最後にリィン達がセリカ達やエイドス達と共に創の軌跡(ただし、閃4ノーマルエンド後の状態)の世界に殴り込んで最後の決戦に手を貸して閃4ノーマルエンドの世界を大団円にする展開も思いつきましたので、もしかしたらラストはその展開になるかもしれません(オイッ!) 
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