戦国異伝供書
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第百七話 国府台の戦いその四
「そのうえで」
「そしてですな」
「ことを進めるべきです」
「左様ですな」
「驕ればです」
そうなればというのだ。
「どうしてもです」
「そこに隙が出来て」
「しくじります」
「先の両上杉の様に」
「そうです、彼等は大軍に驕っていてです」
「そこを我等が衝いて勝ちました」
「まさにあれこそがです」
あの時の両上杉こそがというのだ。
「手本です」
「驕ってはならぬということの」
「そうです、ですから」
その為にというのだ。
「我等はです」
「関東管領になってもですな」
「驕らず」
そのうえでというのだ。
「ことを進めていきましょう」
「それでは」
「その様に、それでなのですが」
幻庵は氏康にあらためて言った。
「里見家の軍勢は七千あり」
「七千ですか」
「そしてです」
そのうえでというのだ。
「国府台に向かっているとのこと」
「あの地にですか」
「ですから戦はです」
「国府台で、ですな」
「行うかと」
こう氏康に話した。
「どうやら」
「では」
「はい、そこに兵を向けましょう」
「わかり申した」
氏康も頷いた、そうしてだった。
彼は幻庵の言う通り二万の軍勢を国府台に向けた、その地で里見家との決戦に入ることになった。それでだった。
既に台地の上に布陣している里見家の軍勢を見て彼は言った。
「もう既にな」
「はい、敵の軍勢は台にいます」
「そこで守りを固めています」
「国府台城にも入っています」
「ふむ、台全体を守っておるな」
氏康は敵のその布陣を見て言った。
「前の轍は踏まぬか」
「前のこの場所での戦ですな」
幻庵も言ってきた。
「兄上が戦われた」
「はい、あの戦ではです」
まさにというのだ。
「父上は勝たれましたが」
「あれは里見殿が公方様を見捨てて逃げたので」
「だからですな」
「当家は勝ちました、この度はです」
「里見家だけであり」
「台地全体をしっかりと守って」
そうしてというのだ。
「数に勝る我等に勝とうとしております」
「そうですな」
「しかしです」
幻庵も台地の敵軍を見ている、そのうえで氏康に話した。
「里見家の軍勢は台地は守っていますが」
「江戸川はですな」
「守っておられませぬ」
「ですな」
台地の前、台地の南の平地のところには兵を置いていない。無論江戸川の方も同じである。氏康はそれを見て言うのだった。
「ならば」
「はい、台地よりも川の方がです」
「守りやすいですな」
「それをあえて台地にのみ兵を置く」
「それがですな」
「里見殿の過ちです」
幻庵は氏康に話した。
「ですから」
「それで、ですな」
「はい、軍を二手に分けてです」
そうしてというのだ。
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