戦国異伝供書
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第百六話 八万の大軍その十一
「公方様です」
「神輿ですな」
「そうなって頂くにはこれ以上はないこと」
「それで、ですな」
「この度のことはよしとして」
氏康はこの度のことを不問にするとした、戦に勝ったせいもあるがやはり神輿には非常にいいからである。
「そうしてです」
「鎌倉に入って頂く」
「そうしましょうぞ」
「それでは」
幻庵も応えた、そうしてだった。
古河の公方を迎えることも決めた、氏康はまさに関東の覇者として動きだしていた。
それで古河公方に前の戦のことを言わず鎌倉に迎えると言うと晴氏は最初は疑っていたが氏康も誠意を尽くして何度も使者を送ってそれも幻庵まで送り話すとだった。
「それではな」
「はい、鎌倉にですな」
「入らせてもらう」
こう幻庵に話した。
「先の戦のことでじゃ」
「お命をですか」
「取られるかと思っておったが」
鎌倉に入ったところでだ。
「それはない様じゃな」
「鎌倉に入って頂ければ」
幻庵は晴氏に真摯な態度で答えた。
「当家がお護りします」
「そのうえでか」
「楽しく暮らして頂きます」
その鎌倉でというのだ。
「宜しいでしょうか」
「そこまで言ってくれるなら」
「はい、来て頂けますな」
「そうさせてもらう」
幻庵にはっきりとした声で答えた。
「是非な」
「それでは」
こうして晴氏は鎌倉に入り北条家の完全な庇護下で生きることになった、公方を鎌倉に戻しかつ完全に手中に収めた氏康を見てだった。
上野や下野の国人達は次第に北条家になびきだした、それでだった。
彼等は次第に北条家に降る様になった、氏康は彼等を受け入れてそうして周りにこうしたことを言った。
「国人達が降って当家に入るならな」
「よいですな」
「それでは」
「何も言うことないですな」
「うむ、ただな」
氏康はここでこうも言った。
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