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ドリトル先生と琵琶湖の鯰

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第十幕その五

「喜んで」
「受け取ってそうして」
「いただきます」
「そういうことで、いややっぱりですね」
「胡瓜はですね」
「河童の大好物でして」
 それでというのです。
「我々はこれがあるとです」
「幸せですか」
「何よりも。それに西瓜も」
 こちらのお野菜もというのです。
「大好きで」
「それで、ですか」
「いただけるなら」
 それならというのです。
「これ以上幸せなことはないです」
「お金よりもですね」
「我々の暮らしにお金は然程大事でないので」
「そうした生活だからですね」
「本当にお金よりも遥かにです」
「胡瓜が大事ですね」
「それを頂けたら」
 それでというのです。
「幸せなのです」
「そうなのですね」
「はい」
 まさにとです、河童は先生に答えました。
「ですからこの度は」
「食べてくれますね」
「全てそうさせてもらいます」
「それでは」
「はい、それとですが」
 河童は先生にさらに言いました。
「全部滋賀県の胡瓜と西瓜ですね」
「それが何か」
「有り難いですね、最近実は滋賀県の胡瓜や西瓜はあまり食べていなかったので」
「他の都道府県のものをですか」
「それはそれで美味しいですが」
 それでもというのです。
「やはり昔から食べている郷里の味で」
「馴染みがありますね」
「私は特に佐和山のものが」
「佐和山ですか」
「実はそこの生まれで」
 それでとです、河童は先生に上機嫌でお話しました。
「名前は平佐吉公の三代前のご先祖に付けてもらったものです」
「石田三成さんですね」
「今はそう呼びますね」
「はい、そのことは知っています」
「あの方のお家は近江、今の滋賀県の土豪でして」
「そちらの家の方にですか」
「付けてもらいまして」 
 そしてというのです。
「その石田三成様、私達は治部様とお呼びしていますが」
「官職ですね」
「そちらで今もお呼びしていますが治部様には曽祖父様に名付けてもらった言うなら大叔父だとよくしてもらいました」
「そうでしたか」
「真面目で律儀でいい方でした」
「色々悪評が言われていますが」
「それは全部出鱈目で」
 嘘でというのです。
「実はです」
「とてもいい方でしたね」
「これは平三郎様、右大臣様も同じで」
「織田信長さんですね」
「剽軽で思いやりがあって冷静で」
 そうした人でというのです。
「いい方でしたよ」
「そうでしたか」
「私等があの方の船に上がったら柿や餅をくれて一緒に宴も楽しみましたし」
「胡瓜もその時に」
「食べました、ですが私等の酒を差し出しても」
「あの人はお酒は飲まれなかったとか」
「はい、ですから」
 その為というのです。 
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