代々の猫
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第三章
二人共家庭を持つ様になった、兄はそのまま両親と共に家に住んでさりなは自分の家族と共に夫と自分が働いている東京に住む様になったが。
さりなが三十歳になった時に父からスノーもう歳老いていた彼女が家出をしたと連絡があった、ここでさりなは電話の向こうの父に言った。
「まさか」
「スノー探すがな」
「それでもよね」
「これまでもそうだったからな」
「それじゃあ」
「ああ、だからな」
それでというのだ。
「待ってもみるな」
「そうするのね」
「そうもするな」
父も答えた、そしてだった。
一ヶ月してだった、さりなは父からメールを受け取った、そのメールには一枚の猫の画像があった。
その白い子猫を見てだった、父に電話をかけて尋ねた。
「まさか」
「そのまさかだよ」
「来たのね」
「さっき玄関で鳴き声がしたから開けたらいたんだ」
「そうなの」
「女の子だった」
つまり雌だったというのだ。
「やっぱりな」
「じゃあ」
「名前はパイにした」
「中国語で白ね」
「そうした、だからな」
「飼うのね」
「そうする、しかしまたいなくなって一ヶ月だ」
父はこのことも話に出した。
「それでだ」
「それで来たわね」
「本当に代々な」
「うちに生まれ変わってきているのかもね」
「そうかもな、じゃあまたうちに戻って来い」
「顔を見せにね」
「パイにな」
こう娘に言う、そして娘は実際にだった。
暫くして夫と子供達を連れて実家に帰った、そうしてパイに挨拶をした。
「パイ、こんにちわ」
「ニャア」
パイは居間でさりなに応えた、お互い初対面の筈だが初対面ではない挨拶だったが自然だった。そして彼女の夫にも子供達にもだった。
パイはまるで久し振りの客人に対する様な態度だった、だがさりなの家族も彼女の両親の兄の家族も笑顔でいた。生まれ変わりならそれでいい、ずっといてくれるということだからだと思って。
代々の猫 完
2020・9・23
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