レーヴァティン
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第百七十二話 甲斐平定その十二
「まさにな」
「左様ですね」
「己は手を汚さずに相手を陥れる」
「それは餓鬼の所業です」
「これ以上はないまでに浅ましい行いです」
「だから噂を流す奴こそだ」
何かをすると言われている者達よりもというのだ。
「俺は憎む、そしてだ」
「罰する」
「そしてですね」
「それを天下に知らしめる」
「そうされますね」
「そうする」
こう言ってだった。
英雄はこの日も遊んだ、そうして数日過ごしていると。
甲斐のほぼ全ての城や砦が降った、そのうえで。
その話を聞いた甲府城もだった。
「そうか、遂にか」
「降るとです」
「言ってきたか」
「はい」
「わかった、なら大名にはな」
その彼にはというと。
「この本陣まで来てだ」
「そのうえで、ですね」
「俺の前でな」
「降るとですね」
「言う様に伝えろ」
「わかりました」
「誰も命は取らない」
英雄はこのことは強く言った。
「ここで降ったからな」
「そうされますか」
「そしてだ」
英雄はさらに言った。
「もう一つある」
「といいますと」
「地位もだ」
これもというのだ。
「そのままでいい」
「そちらもですか」
「見たところ甲斐はよく治められている」
これまで見てきたのだ、国の状況も。
「田畑も町もよく堤や道も整っているな」
「はい、確かに」
「よい状況ですな」
「見てみますと」
「どれもが」
「しかも民の家は大きいしだ」
そしてというのだ。
「葬式も見事だ」
「それだけ豊かということですな」
「民が大きな家を持ち立派な葬式をやれる」
「それだけの余裕がある」
「甲斐は山国で豊かにしにくい筈だが」
それがというのだ。
「田畑を整え多くの副産物も作らせてな」
「豊かにしている」
「そうした政治を行っているので」
「それで、ですか」
「政の腕にな」
それにというのだ。
「戦で釣り野伏せも仕掛けたな」
「はい、こちらは見破りましたが」
「そして備えて難を逃れましたが」
「それもしようとしましたな」
「そこも見るとな」
戦のこともというのだ。
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