泣くことはない
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第二章
「こういう上下関係って女の子の方が凄いんだろ?」
「特にうちの学園はそうみたいだな」
「もう三年生の人達は神様ってな」
「そこまで言われてるよな」
「だからじゃないのか?」
要するに先輩に〆られたのではないかというのだ。
「それじゃないのか?」
「それってまずいだろ」
「幾ら竹達でもな」
「先輩が相手だったらまずいだろ」
「洒落になってないぞ」
まずはこのケースが考えられた。しかし考えられるケースは他にもある。
男組は今度はこの予想を立てた。
「それか失恋か?」
「竹達顔はいいしな」
「ああ、お嬢様みたいな外見でな」
「結構ゴスロリとか似合う感じだしな」
何気にこんなことを言う人間もいた。
「だからな」
「そうだよな。有り得るな」
「軟式野球部のマネージャーだし」
「それか?」
「その可能性が一番高いか?」
彼等はこうした話をしながらしきりに泣いて周りに言っているすみれを見ていた。すみれは彼女達にこんなことも言った。
「こんなの我慢できないから」
「やっぱり無理?」
「ちょっと耐えられない?」
「落ち着けない?」
「御免、本当に無理」
泣きながらこう言うのだった。
「だからちょっと」
「ちょっと?」
「ちょっとっていうと」
周りがすみれの言うことが変わったと気付いたその瞬間にだった。
すみれは自分の机の横にかけてあった鞄を取ってそこに机の中の教科書やノートを慌しく入れてこう周りに言った。
「今日もう帰るから」
「えっ、すみれちょっと」
「待ちなさいよ」
周りが止めようとするがそれより先にだった。
すみれはクラスを逃げ去る様に出て行った。その時も泣いていた。
クラスメイト達、特に男組はその彼女が開けたままにしていった教室の後ろの扉を見て呆然となっていた。
その中で男組は呆然となったまままた話した。
「ええと、これってな」
「早退だよな」
「こんな早退していいのかね」
「どうなんだろうな」
まずはこのことから話される。
「寮に帰ったみたいだけれど」
「寮の方も大変じゃないのか?」
「女子寮って校舎から結構離れてるしな」
この学園では男子寮もそうだ。女子寮で一キロは、男子寮に至っては二・五キロは離れているのである。
「そこまで走って帰って」
「寮の部屋でどうするんだ?」
「というか女子寮ってどんなのだろうな」
「やけにガード固いけれどな」
女子寮のガードは固いにこしたことはない。この学園の女子寮は壁の上には鉄条網があり窓には二十のカーテンがいつもかけられている位だ。
「忍び込むことできないよな」
「あんな刑務所みたいなところは無理だろ」
刑務所は中からの脱走を防ぐものだが女子寮は外からの侵入やのぞきといったものを防ぐ為のガードである。
「本当にどうだろうな」
「竹達どうなるんだろうな」
「明日学校来るのかね」
「というか復帰できるか?」
こんな話にもなる。とにかく今のすみれは誰がどう見ても大変な状況だった。
それは女組もよく認識していてこう話していた。
「これはまずいわよ」
「うん、そうね」
「先輩にお話する?」
「あの娘の部屋の先輩ね」
この学園の寮では一年二年三年の一人ずつが同じ部屋に暮らすことになっている。それでこう話されるのだった。
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