戦国異伝供書
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第百五話 氏康の治その四
氏康は幻庵にこう言った。
「これで、ですな」
「よいですな」
「はい」
こう言うのだった。
「外は」
「そうですな、今川家も武田家もです」
「手を結んでくれました」
「両家はそれぞれ思惑がありますな」
「はい、今川家は三河に進出したく」
幻庵はまずこの家のことを話した。
「その為にです」
「当家とですな」
「元より手を結びたく」
「当家の話にですか」
「乗りました」
「左様ですか」
「今のご当主殿もですが」
義元だけでなくというのだ。
「軍師、そして政では宰相であられる」
「太源雪斎殿にとってもですな」
「願ってもない話なので」
「当家が駿河の領地を渡すと言えば」
「もうです」
それこそというのだ。
「これ以上はないまでにです」
「よい話ですな」
「だからこそです」
それ故にというのだ。
「今川殿も乗られました」
「左様でありますな」
「そして武田家もです」
幻庵はこの家のことも話した。
「今のご当主殿は関東よりもです」
「信濃じゃな」
「そちらに進まれたいので」
だからだというのだ。
「関東の扇谷上杉家との縁を疎かにされても」
「それよりもですな」
「信濃となり」
それでというのだ。
「当家との和もです」
「選ばれましたな」
「やがて三つの家で確かな結びつきを強め」
幻庵はさらに話した。
「そしてです」
「後顧の憂いを完全になくしてですか」
「当家は関東を掌握しましょう」
「さすれば、ただ」
「ただといいますと」
「殿は両家がまた関東に色気を見せるとお考えですな」
幻庵は氏康を鋭い目で見て彼に問うた。
「左様ですな」
「確かに」
「はい」
氏康もそうだと認める。
「それは」
「それはおそらく杞憂かと」
「では尾張の」
「とてつもなく青い将星がです」
その者がというのだ。
「頭角を現し」
「そして、ですか」
「天下に覇を唱えますので」
だからだというのだ。
「今川殿も武田殿もです」
「三河、信濃を手に入れられても」
「そこで、です」
「止まりますか」
「そしてです」
「尾張のその御仁とあたり」
「そのうえで当家に向かうなぞ」
それはというのだ。
「到底です」
「出来なくなりますか」
「はい」
まさにというのだ。
「そうなります」
「左様でありますか」
「ですから」
「当家にはですか」
「仮に攻めてきましても」
それでもというのだ。
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