新オズのつぎはぎ娘
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第八幕その二
「神話のミノタウロスの歯はライオンのものだったんだ」
「ライオンだからなんですか」
「それで人を食べていたんですか」
「頭は牛、身体は人でも歯はライオンで」
「それでだったんですか」
「人を襲っていたんですか」
「ムシノスケ教授のお話を聞くとね」
オズの国きっての知識の持ち主であるこの人のお話によると、というのです。かかしは五人にお話しました。
「本にそう書いてあったらしいよ」
「そうなんですね」
「牛の頭でライオンの歯で」
「ライオンは肉食なので」
「歯がそうだったから」
「迷宮の中で人を食べていたんですね」
「それはよくねいね」
ここで言ったのは臆病ライオンでした。
「人を襲ったら駄目だよ」
「臆病ライオンさんそんなことしないからね」
「というか生きている生きものも襲わないし」
「食べるのはあくまで出されたものだけで」
「そうしたこととは無縁よね」
「人を襲って食べるとか」
「そんなことをしたら駄目だよ」
絶対にというのです。
「本当にね」
「幾らライオンの歯でも」
「お肉を食べても」
「それでもだね」
「人を襲って食べたら駄目」
「それが絶対よね」
「全くだよ、僕だってそんなことしないよ」
腹ペコタイガーも言います。
「幾らお腹が空いていてもね」
「腹ペコタイガーさんもそうだし」
「オズの国じゃ法律にもなっていたね」
「生きているものは襲ってはいけない」
「出されたものを食べる」
「そうなっているわね」
「うん、確かに僕はいつも食べたいと思っているよ」
心からというのです。
「けれど僕の良心と遵法精神が許さないんだよ」
「法律は守らないといけないからね」
「オズの国でも外の世界でも」
「ルールはちゃんと守らないと駄目だよ」
「若し法律を破ったら」
「ならず者になるから」
「法律を破る人だと」
それならとです、ブリキの樵がウィンキーの法律を守るその国の皇帝の立場から五人にこう言いました。
「オズの国だとかつてのノーム王だね」
「ラゲドーさんですね」
「あの人はそうでしたね」
「オズの国の人でしたけれど」
「オズの国の法律を守らなくて」
「好き放題に自分の国を治めていましたね」
「オズの国ではあの人がだよ」
まさにというのです。
「法律を守らない人だよ」
「今は違いますけれど」
「悪意のない人になりましたけれど」
「本当に昔はそうでしたね」
「あと妖魔一族やトンカチ一族もそうでしたね」
「あの人達も」
「本当に法律は守らないと駄目だよ」
木挽きの馬も言うことでした。
「さもないと大変なことになるよ」
「そうだよね」
「かつてのノーム王みたいな人が増えたら」
「オズの国が滅茶苦茶になるし」
「実際に大変なことにもなったし」
「あの人達のことを思うと」
「だから気をつけないと駄目だね」
木挽きの馬の口調はしみじみとしたものでした。
「本当に」
「全くだね」
「法律は守らないと」
「さもないと何もかもが成り立たないから」
「若し法律のない世の中だと」
「一体どうなるか」
「力がある人が正しいとかね」
トトも言います。
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