戦国異伝供書

　早速政の話をしていった、ここで幻庵が言ってきた。
「殿、今川家とのことですが」
「あの家ですか」
「はい、関東に力を入れますので」
　だからだというのだ。
「ですから」
「それで、ですな」
「もう駿河の領地はです」
「それは」
「今川殿に差し上げ」
　そうしてというのだ。
「それを和解の材料とし」
「そうしてですか」
「手を結ぶ様にしましょう」
「それがよいですか」
「あと武田家もです」　
　この家もというのだ。
「和していきましょう」
「あの家とも」
「はい、今のご当主殿は扇谷上杉家と親密であり」
「関東に目を向けてもおられますな」
　武田信虎、彼はというのだ。
「何かと」
「ですが甲斐一国の政位まで考えておられて」
「関東に入られるおつもりはないですか」
「そして跡継ぎの太郎殿ですが」　　
　武田晴信、彼はというと。
「星を見ますとお父上はおろか天下に及ばん限りの大きな星ですが」
「今川殿と同じく」
「いえ、むしろ今川殿より遥かにです」
「大きな星ですか」
「左様です、しかし」
　それでもというのだ。
「どうも西、信濃の方に目を向けられていて」
「それで、ですか」
「東国、関東にはです」
「進まれるおつもりはない」
「ですから」
　武田家もこの考えだからだというのだ。
「ここはです」
「あの家ともですな」
「和しましょう」
「何らかの手段を用いて」
「婚姻等もいいかと」
「婚姻ですか」
「はい、そうして結びつきを深め」
　そうしてというのだ。
「両家から何かされる気掛かりを消し」
「そうしてですな」
「あの家を和しましょう」　
「それでは」
　氏康も頷きそうしてだった。
　氏康は北条家の主になると早速動きはじめた、それはまずは政からであり内も外も進めていくのだった。


第百四話　　　完


　　　　　　　　　　　　　　　　　２０２０・７・１