ドリトル先生と琵琶湖の鯰
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第三幕その三
「この神宮は」
「奇麗なだけじゃなくて神聖な趣にも満ちていてね」
「厳粛さもあってね」
チープサイドの家族はしきりに自分達の周りを見ています。
「まさに神様のいる場所」
「そんな風に思えるね」
「ええ、ここはこれこそって思えるわ」
ダブダブはこう言いました。
「特別な場所だって」
「大津宮の跡地は何でもない感じだったけれど」
チーチーはこのことははっきりと言いました。
「只の広場でね」
「ここは違うよ」
トートーは丸い目のある頭をしきりに動かして見て回っています。
「神様の場所だってはっきりわかるよ」
「まあ千数百年前だとね」
「何でもないのは仕方ないかな」
オシツオサレツは二つの頭で考えて言いました。
「考えてみればね」
「大昔のことだから」
「大昔も大昔で」
それでとです、今言ったのはジップでした。
「イングランドなんかまだバイキングも来ていない頃だったかな」
「アーサー王が出てから少し経った頃かな」
ガブガブは首を傾げさせて言いました。
「七世紀って」
「アーサー王は一応五世紀だったって言われてるけれどね」
先生はガブガブの言葉に応えました。
「おおよそ」
「じゃあそれから二世紀後だね」
「かなり経ってるね」
「七世紀だと」
「そこまで昔じゃないんだ」
「そうだけれど」
それでもというのです。
「当時のイギリスは西ローマ帝国が滅んで混乱が続いた少し後かな」
「ああ、暗黒時代」
「暗黒時代が終わってね」
「それで少し経った頃」
「それ位の頃なんだ」
「まだはっきりした形にはなっていないよ」
イギリスという国がというのです。
「まだね」
「そんな頃なんだ」
「まだまだなんだ」
「それこそ」
「そんな頃のことだからなのね」
「もうね」
それこそというのです。
「大昔だよ、ただそんな昔のことでも日本ははっきりわかってるからね」
「中国と一緒でね」
「古い時代のことがわかっているのね」
「それは凄いね」
「本当に」
「そうだよ、そしてね」
それでというのです。
「跡地がそこだってこともわかっているんだ」
「むしろ七世紀のことがわかっていることが凄いんだ」
「じゃあ明日香村も凄いところだったんだ」
「私達あの時は何でもない感じで見て回ってたけれど」
「それでもなのね」
「あそこも凄かったんだ」
「明日香村は最高の学問、歴史学や考古学を学べる場所だよ」
先生は明日香村についてこう断言しました。
「行けてよかったよ」
「そうだったの」
「そんな場所だったの」
「何でもない風に見て回っていたけれど」
「実はそうだったの」
「そうだったんだ、そして近江神宮はね」
今自分達がいるこの場所はというのです。
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