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七人ミサキ

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第二章

「すぐに行き来出来る筈がない」
「いえ、都から摂津まで川を舟で降り讃岐までも船で行けばです」
「すぐか」
「歩いていけば休み休みにもなり夜歩くと危ないので遅れますが」
「舟だとか」
「朝も昼も夜も進みしかもその速さは足よりも速いです」
「だからか」
「はい、摂津まで一日で出て」
 そしてというのだ。
「それから摂津の港から船で讃岐まで向かえば」
「すぐであるか」
「後は私は祟りを鎮め」
「それで、であるか」
「すぐに戻ってきます。怨霊が何かも今将軍様のお話を聞いてわかりました」
「何、もうであるか」
「それは七人ミサキですね」
 それであるとだ、一休は義満に答えた。
「間違いなく」
「七人ミサキというか」
「これは非常に恐ろしい怨霊でして」
 一休は義満に今度はその七人ミサキの話をはじめた。
「そうおいそれとはです」
「鎮められぬか」
「一人に憑いて殺せば」 
 そうすればというのだ。
「七人のうち一人が成仏します」
「そうであるか、しかしじゃ」
 一級のその話を聞いてだった、義満は彼に怪訝な顔で問い返した。
「それではあらたに一人入るであろう」
「はい、七人ミサキは入れ代わります」
「そうであるな」
「一人が憑いて殺し一人の命を奪い成仏しますが」
「殺された者が成仏したところに入るな」
「そうなります」
「ではずっと続くではないか」
 義満はその話を聞いて言った。
「それではじゃ」
「延々と続くと」
「まさにそうなるではないか」
「ですから非常に厄介なのです」
「全く、余も怨霊の類の話は色々聞いておるが」 
 それでもとだ、義満は一休に顔を顰めさせて述べた。
「そこまで性質の悪いものは聞いたことがない」
「将軍様、釣り竿と網はどちらが多くの魚を獲れますか」
「決まっておる、網じゃ」
 義満は一休にすぐに答えた。
「それはな」
「私はこの度網を使います」
「それはどういうことじゃ」
「それは戻ってからお話致します」
「そこでまたそう言うか」
「駄目でしょうか」
「お主のその癖はわかっておるわ」
 義満は一休に何処かムキになった感じで答えた。
「いつもいつもそうして余をへこませるからのう」
「だからですか」
「わかっておるわ」
 こう一休に言った。
「それはな」
「そうですか」
「だからじゃ、お主が帰ってくるのを待ってじゃ」
「そうしてですね」
「お主の話を聞こう、しかし帰ったらな」
 その時のこともだ、義満は一休に言った。
「今度こそお主に勝ってやるからな」
「知恵比べで、ですね」
「余もやられっぱなしではないぞ」 
 義満は一休にムキになった顔で話した。
「今度こそじゃ」
「わかりました、では都に戻りましたら」
「知恵比べじゃ、題材は用意しておる」
「もうですか」
「左様、ではまずは讃岐の民達を救ってくれ」
 こう言って一休を向かわせてだ、そのうえで。
 義満は彼が讃岐の民達を怨霊から救い都に無事戻ることを願いつつ政の場に戻った。一休は彼自身が言った通りにすぐにだった。 
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