| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

山爺の声

しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
次ページ > 目次
 

第六章

「乳母兄弟として」
「まさにご幼少の頃から」
「左様、そしてわしが鉄砲を使うのもな」
「それで鉄砲のことをよくご存知なので」
「大声を出すよりも鉄砲の方がよいとわかっておる」
「だからですか」
「あ奴を行かせた、そしてあ奴は実際にそれをわかってな」
 そのうえでというのだ。
「やってくれるとわかっておった」
「それで送られましたか」
「うむ、そしてな」
 信長はさらに話した。
「あ奴なら仕置きもな」
「あの様にですか」
「よくすると思っておった、権六はしかとした仕置きをするが」
「あの方は」
「すぐに拳が出る」
 柴田はそうだというのだ。
「やはり道中を進む中でもわしの考えはわかってな」
「あの様にですか」
「すると思うが」
 それでもというのだ。
「一発拳骨を浴びせる位はする」
「民に迷惑をかけたと言われて」
「そこまでは及ばぬ話と思ったからな」
「権六殿は送られませんでしたか」
「左様、実際昨日も拳骨を振るった」
 柴田はとだ、信長は困った笑顔で話した。
「又左にな」
「そうされましたね」
「あ奴は厳しくすぐ怒り」
 そしてというのだ。
「人の頭に拳骨を浴びせる」
「あの方の常ですね」
「間違いなくあやかしにもする」
「だからですか」
「あ奴にはせんかった、あ奴は然るべき場所に送る」
 柴田はというのだ。
「どの者もな」
「そしてこの度は」
「勝三郎が最もよいと思ってな」
「そうされましたか」
「そういうことじゃ、では喉が渇いたからな」
 信長は話が一段落ついたところで述べた。
「茶を淹れるか」
「殿がですか」
「そうしようか、お主も飲むか」
「それでは」
 帰蝶は信長のその言葉に微笑んで頷いた、そうしてだった。
 二人は共に茶を飲んだ、織田信長が岐阜城に入って暫くしてからの話である。これもまた彼の見事な政の一つとして知られている。適材適所として。


山爺の声   完


                 2020・2・15 
次ページ > 目次
ページ上へ戻る
ツイートする
 

全て感想を見る:感想一覧